●第101回全国高校サッカー選手権2回戦
~山梨学院は神村学園と対戦し2対3と競り負ける~
~MF五十嵐が先制、MF宮岡の同点弾も一歩及ばず~
第101回全国高校サッカー選手権2回戦が12月31日に行われ、3年連続9回目出場の山梨学院高は神奈川・等々力陸上競技場で鹿児島県代表・神村学園高と対戦した。試合は前半立ち上がりから山学がハイプレスから攻撃につなげ、4分にMF五十嵐真翔(2年)のヘッドで山学が先制。その後は息つく暇もない激しく攻守が入れ替わる展開となり、一進一退の攻防。ハイプレスの影響で疲れが見え始めた山学は、36分と38分に神村に得点を許し、1対2で前半を折り返す。後半に入っても神村の攻撃の勢いは止まらず、山学はGK廣瀨大翔(3年)を中心に守備陣が奮闘。山学はバックスタンドの応援を背に、ボールを追い、スタンドも一体となった執念の攻撃が実り27分にPKを獲得。これを主将のMF宮岡拓海(3年)が決め、同点に追いつく。しかし、39分に勝ち越しを許し2対3に。山学は最後まで諦めずにボールを追ったが、神村の堅守を崩せず試合終了。山学は2対3と競り負け、2回戦で涙をのんだ。
大会は12月31日に東京・国立競技場で開幕。前年度優勝の青森山田高を先頭に北から順に代表校が入場。山梨学院は宮岡拓海主将を先頭に郷土の戦国武将・武田信玄の風林火山の軍配団扇と全国制覇の星が3つ刻まれたマフラータオルを掲げて堂々と入場行進を行った。山学は1回戦がシードされ、2回戦からの登場。等々力陸上競技場のサイドスタンドには昨年デザインが一新されたC2C Blueを基調としたビッグユニフォームと横断幕が掲げられ選手を鼓舞。今大会も有観客で行われたが、学校応援は会場ごとに人数上限が決められ、等々力会場は500人に制限。バックスタンドには登録外のサッカー部員やチアリーダー部、吹奏楽部、保護者などが応援に駆け付け、選手にエールを送り勇気づけた。対する鹿児島県代表の神村学園は県大会5試合34得点1失点の圧倒的な攻撃力と堅守で6年連続10回目の選手権出場。J1セレッソ大阪に加入内定の大迫塁主将、ドイツ1部ボルシアMGに加入内定の福田師王選手のタレントを擁し、今季高円宮杯JFAU-18サッカープレミアリーグ初昇格を決めている。前々回王者の山学とプロ内定2名を擁する神村の対戦とあって、この日は1万人を超える10,168人の観客が詰めかけ、試合は山学のキックオフで始まった。
第101回全国高校サッカー選手権大会 2回戦 ≪山梨学院高 VS 神村学園高≫ 2022.12.31 会場:神奈川・等々力陸上競技場 |
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● 山梨学院高校 2 | 前半 1-2 後半 1-1 |
3 神村学園高校 〇 |
山学得点者:五十嵐真翔、宮岡拓海 |
■前半立ち上がりに山学が先制に成功、その後逆転許す
試合は前半立ち上がりから山学が前線からのハイプレスでボールを奪い、サイドを起点に攻撃を仕掛ける。3分には左SB庄司優作(3年 tfaジュニアユース)が前線にフィード。これをMF吉本堅翔(3年 柏田SC)がPA内にカットインしシュート。相手GKの好セーブに阻まれ、こぼれ球をMF宮岡拓海(3年 東京・久留米FCU-15)がシュートし、立ち上がりから波状攻撃で揺さぶりをかける。その1分後、セカンドボールを回収したMF宮岡がハーフェーラインから左サイドのFW野田駿人(3年 インテリオールFC)に大きく展開。FW野田はドリブルで相手をかわし、ゴール前にクロスを供給。これをファーサイドから走り込んだMF五十嵐真翔(2年 大谷場中学)が頭で合わせ山学が先制に成功。その後は息つく暇もない激しく攻守が入れ替わる展開で一進一退の攻防となり、両チームの個人技光る攻撃、組織的なパスサッカーに観客は魅了された。前半も20分を過ぎると神村が両サイドを大きく使い、ポゼッションサッカーを展開。サイドバックも攻撃参加し、選手交代なども絡め、厚みのある攻撃を仕掛け、山学ゴールに襲いかかる。36分、PA内の混戦で神村の細かいパスに対応できず同点弾を献上。その2分後にはボルシアMG加入内定の神村FW福田選手が鮮やかなドリブルでゴール前まで30m以上を独走。福田選手にそのままゴールを決められ逆転を許し、1対2で前半を折り返す。前半のスタッツは山学がシュート3本に対し、神村7本と攻撃力の差を見せつけられた。
■後半、主将の同点弾で息を吹き返すも終了5分前に勝ち越し弾許す
後半立ち上がりは神村が攻勢を強め、さらに追加点を奪いにかかる。防戦一方となった山学は後半6分に中盤と前線の2枚替えを行い、この局面の打開を図る。10分を過ぎると圧倒的な攻撃力が武器の神村が牙をむく。GK廣瀨大翔(3年 アンフィニMAKI.FC)が高さのある体を張った守備でゴールを守り、CB芳野伯(3年 グランパスみよしFC)と歳藤稜久(3年 グランパスみよしFC)が180cmを超える身長を活かし、空中戦を制し、前線にボールを送る。山学は14分にこの日先制点を決めたMF五十嵐に変え、FW伊藤優作(3年 名古屋グランパスU-15)を投入し、前線を活性化。今大会から選手権の声出し応援、吹奏楽演奏が解禁され、現在の出場メンバーは初めて声援・演奏を受けての公式戦。バックスタンドの応援団も力の限り声援を送り、ピッチの選手を後押しした。山学は応援を背に、ボールを追い、執念の攻撃が実り27分にPKを獲得。これを主将のMF宮岡が冷静にゴール中央に決め、同点に追いつく。しかし、39分、山学が治療のため1人少ない中でセットプレーに臨み、一度はGK廣瀬がパンチングで防いだもののセカンドプレーで勝ち越しヘッドを許し2対3と1点ビハインド。アディショナルタイムは5分、山学は最後まで諦めずにボールを追い、波状攻撃を仕掛けたが神村の粘り強い守備を崩せずタイムアップ。山学は神村に2対3と競り負け、2年連続での2回戦敗退となった。
試合後ミックスゾーンで取材に応じた羽中田昌監督は「サイドからの崩し、そこからの迫力ある攻撃からゴールを奪うことを県予選後からやってきて花開いた形になりました。先制して狙い通りの入りでしたが、前半終了5分前くらいに追いつかれ、さらに追加点を許してしまう状況になってしまいました。そういう状況にならないための采配の緻密さみたいなものが自分に足りなかったのかなと思います。あの先制ゴールは選手たちが地道な努力を重ねてきた結果で素晴らしいゴールだったと思います」と先制点を振り返り、失点の場面について「前半の立ち上がりからハイプレスを仕掛ける中で、前半の終盤で疲れが出て、そこで選手交代など違う戦い方があったのかもしれません。ここが、きょうの試合の勝負所だったと思います」と語り「選手たちには“楽しんだもの勝ち”ということを伝えていて、最初から最後まで選手たちは思いっきり楽しんでサッカーをしてくれたと思います」と大会を総括した。宮岡拓海主将は「きょうは気持ちでもプレーでも負けていなく、自信を持ってプレーができたので、悔いなく終われました。チームがベースとして取り組んでいたハイプレスからショートカウンターがはまる場面が何度かあり、1年間積み上げたものが、選手権の舞台でも通用したので来年もぶれずに継続して欲しいと思います。初めてブラスバンドや声出し応援があって、凄く後押しされましたし、自分たちが強くなった気分になりました。仲間の応援のある中でプレーする選手権は良いものだなぁと思いましたので、後輩達には来年この場に絶対に立って欲しいと思います」と述べた。先制点でチームに勢いを与えた五十嵐真翔選手は「(先制した形は)普段からチームとして練習をしていて、練習通り上手くいったので良かったです。きょうは朝から雰囲気が良く、試合前のロッカールームでもスタッフや宮岡キャプテンが盛り上げてくれたので、それが良い入りに繋がったと思います。点を決められたのは良いのですが、クロスの質や1対1の仕掛け、守備など終わってみて、自分にできることがまだあったのではないかと後悔することはあります。この悔しさを糧に、1日1日の練習を大切にして、必ず来年この舞台に戻ってきて優勝できるように頑張ります」と敗戦から前を見据え、来年に向け決意を誓った。
文(Y.Y)、カメラ(平川大雪)2022.12.31