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●山学短大栄養士コース「専門的実践力外部試験」
~“食べて元気に”若い女性の健康献立に挑戦~
~外部試験は学生・教員相互の意識向上に有益~

山梨学院短期大学食物栄養科栄養士コースで2月16日、17日の両日、専門家による評価を問う「専門的実践力外部試験」が行われた。15日の卒業レポート発表会に続いて実施されたこの外部実技試験は2年間の学びの集大成として行われ、2016年7月に文科省の「大学教育再生加速プログラム」に認定(補助費交付期間は終了)された事業計画の一つ、「卒業時における『質保証』の取り組みの強化」として学修成果を学内外の両輪で評価し、社会に目に見える形で提示していくもの。栄養士コースでは2017年度から始められ今回で5回目となる。栄養士コース2年生56人が2日間午前・午後の部4グループに分かれ行われた内容は、成人女性(18歳~29歳)の学食、社員食堂で提供される昼食献立を想定し、あらかじめ与えられた課題で献立を作成し、実際に1人分を調理・完成させる。学生は、1時間半の持ち時間で何度も試行錯誤を繰り返し作った献立を調理。調理中には3人の外部審査員が調理台を回り、学生の作業を見守り、その後完成した料理を味見やアピールポイントなどの質問を行い、専門家の厳しい視点で10項目にわたる料理の評価を行った。結果発表は後日通知される。

■学外の専門家から評価される「専門的実践力外部試験」とはー
山梨学院短期大学が2016年度(平成28年)文部科学省「大学教育再生戦略推進費・大学教育再生加速プログラム」に申請し、認定された(補助費交付期間は終了)「タブレットを活用した先進的なe-learningシステムの開発」、「学外助言評価委員会の設置」の2つの事業内容のうち、外部の専門家が評価する「専門的実践力外部試験」を2年生のカリキュラムに設定。2年間の学びの中で専門的な知識・実践力・総合的人間力を養い、専門職として社会に貢献できる力を卒業時に学生が確実に身につけられたのか、学修成果を学内外の両輪で評価し、目に見える形で提示していく仕組みとして食物栄養科パティシエコースは認定年度に栄養士コースは翌2017年度から実施している。

「喫食者に見合った献立作成ができること」「献立に沿った調理することができること」を栄養士の最も基本の専門的実践力と捉える山学短大食物栄養科栄養士コースの「専門的実践力外部試験」は、あらかじめ与えられた課題で身体活動レベルの普通(Ⅱ)の成人女性(18歳~29歳)が利用する学食または社員食堂の冬(2月)の昼食献立1食分を想定し、それに対して学生たちは夏休み中に献立を作成し、後期授業開始時に提出。その後、教員の指導受け献立を作り上げ家庭での試作を繰り返しながら準備を進めてきた。2月15日には卒業レポート発表会が行われ、続けて16日・17日に2年間の集大成となる「専門的実践力外部試験」が実施された。栄養士コース2年生56人が2日間4グループに分かれ実技試験に臨んだ。

■10項目にわたる詳細な評価基準ー
今回の評価は昼食『給食』を献立・調理を目的にしており、家庭料理ではなく1食の給食としての形がしっかりとれているかが大切となっている。①基準となる食品構成を参考に食事摂取基準を満たしているか。②食品構成をもとに1食分として適切な量となっているか。③1食分の体裁(主食、主菜、副菜の組み合わせ、分量など)が整っているか。④各料理の味付けは適切であるか。⑤衛生的(食材の取り扱い、加熱状況等)が配慮がなされているか。⑥「給食」として経済的な配慮がなされているか。⑦材料に対して適切な調理がなされているか(調理技術は適切であるか)。⑧適切な容器に体裁よく盛り付けられているか。⑨おいしそうな色合いとなっているか。⑩献立(料理)は、作成者の「意図」や「思い」が反映されているか。の10項目から評価され、A評価(優れている)10点、B評価(普通)7点、C評価(劣る)5点で採点。評価は、3人の学外審査員の得点の平均点を算出し、その値を「総合得点」とする。また、視点別得点も同様に、それぞれの視点ごとに3人の審査員の平均点を算出し、「視点別得点」とする。外部試験の審査は、両日とも1回目から審査員を務める管理栄養士で山梨学院短期大学外助言評価委員会委員の秋山知子氏と(同)堀口一美氏、本学食物栄養科卒業生で管理栄養士の赤澤明美氏の3人が担当した。

■2年間の学びのすべてを懸けるー
試験前、食物栄養科・羽畑祐吾科長が「今日の『外部試験』に備えて一生懸命献立を考えたと思います。栄養士として就職しない人もいますがここで栄養学を学んで栄養士の資格を取るということで絶対将来に活かせることが出来ます。自分に新しい家族ができた時、あるいは今の家族の人たちに健康を考えた献立を作ることが皆さんはできるはずです。その一つが皆さんの家族とか思いを寄せる人への愛情です。そういう思いを馳せて今日の『試験』に臨んでもらいたい」と激励の挨拶をした。実技試験は、身支度、材料測定、調味料計測など事前準備を経て1時間半の制限時間内で学生が時間を掛け考え抜き、何度も試作を繰り返した献立を緊張感漂う中、集中して手際よく調理していった。審査委員は、各調理台の間を積極的に巡り、上記の評価基準のチェックや学生自身に献立のアピールポイントや工夫点などを聞いていた。調理の完成後は、写真撮影、評価と順に行った。審査員は、それぞれ学生が調理した献立を試食しながら学生との質疑応答し、長年現場で培った経験と客観的視点から厳しい指摘やアドバイスを織り交ぜながら採点をしていた。

審査後、秋山知子審査委員は「おいしくいただきました。全体の感想としましてはとても丁寧に作られている感じがしました。私たちが現場で一番大切にしているものは心を届けることも大事ですけれども現実的に“食べて元気になって欲しい”という気持ちです。そのために私たちが吟味して献立を作り、材料を選び仕上げる。そのことが皆さんにとって、この1年間掛けてすごく勉強になったことと思います。私たち3人も皆さんが作ったものにたくさんのヒントをいただくことができました。今日の皆さんの丁寧な作り方がうれしかった」と総評した。続いて評価項目の➀~⑤までの評価ポイントを堀口一美審査員、⑥から⑩までを赤澤明美審査員が評価説明。それぞれ現場での視点から改善点を指摘しつつも良好との評価を挙げていた。その講評の中で堀口一美審査委員は「栄養士になる方は状況によって情報は常に変わるので研修などをしっかり受けてそれに則した勉強をしっかりすることが献立をつくる上で大切」とアドバイスした。

■調理を終えた学生代表のインタビュー
「ごぼう香る和風ハンバーグ・おろし添え」の主菜を調理した甲州市在住の雨宮里佳さんは「外部の方に自分の作ったものが評価される経験がなかったので緊張感持って臨みました。20代前半の女性をターゲットに作ったのでヘルシー志向を踏まえて作りました。使う食材や分量からこだわり、試作を何度もした甲斐があり満足のある仕上がりになりました。自分の大事な人を食で支えられる技量を身につけた栄養士になりたいと思います」。卒業後は栄養士として給食の委託会社で勤務する。甲府市在住で卒業後は一般職で県内食品メーカーに就職する今井桃子さんは主菜に「チキンと野菜のトマト煮・ブロッコリーのバター炒め添え」を調理。「すごく不安で何回も家でやったんですけど、何とか自分の思い通りの感じに出来たかなと思うのでちょっと安心しました。いつも支えてくれている大切な友人のことを思って献立作成をしたので、その友人が社員食堂を利用しているんですけどそこでの好きなメニューやどんなもので元気が出るとか、何が食べたいなど事前に聞いてそれを参考にしました」と話した。

■5回目の外部試験を迎えてー
「専門的実践力外部試験」の評価がこの2年ほど厳しくなっていることについて深澤早苗食物栄養科教授は「2年生はこの4月から働きに出て実際の現場で調理をするわけで2年間勉強した集大成の献立なので、今作っているものがすぐ現場で出せるどうかという評価に変えたので評価的には厳しくなった感じがしますが、やはり今すぐに現場で使える献立、それが最終的に学生に力を付けて卒業してもらいたいところを目指した」と説明。そのため学生たちは単位の多い調理実習の振り返りを家庭での学習を通して技術の習得に積極的で1年次に比べ飛躍的に向上しているという。また、外部試験によって別の効果も挙げる。「(文科省)補助の期間は終わっているんですけれども、この試験というのはすごく教員にとっても自分たちが教えているスキルが間違っていないかどうかを確認する時間にもなっていますし、学生たちがどの位到達しているか見る機会にもなっています。外部評価の先生方が入ることで教員も緊張感を持って、自分の授業スキルの見直しにもなっていくのでこれからも継続してやっていきたいなと思っています」と相乗効果を話した。学生たちに対して「ここで学んだ技術それから知識、それを是非、社会の中で生かして、健康的な食生活あり方というのを色々な人に伝える役割を担っていってほしい」と期待を込めた。結果発表は後日行われる。

文(K.F) カメラ(平川大雪) 2022.2.17