●選抜高校野球大会 山学高健闘するも初戦惜敗
~約800余人の応援団、甲子園で存在感~
~共に戦い、延長13回あと一歩及ばず~
3月21日、「第94回選抜高校野球大会」大会3日目第1試合に山梨学院高校が登場した。2年ぶり5回目の出場で優勝を目指す野球部に山梨学院高応援団が駆け付けた。コロナ禍の中で応援が自粛される中、山梨学院は2019年の夏の甲子園以来、約2年半ぶりに一塁側アルプススタンドに応援団が陣取った。応援には甲子園で3年ぶりにブラスバンドの演奏が解禁となった吹奏楽部やチアリーダー部、生徒会、一般生徒、出場選手以外の野球部員、教職員、PTAなど学校関係者、それに野球部保護者会を含めて総勢800人余りが選手たちに熱い声援を送った。試合は、千葉の木更津総合高との対戦で関東の強豪同士の戦いに第1試合にも関わらず一般の観客も多く詰めかけ注目の一戦となった。山梨学院は1回裏、相手に1点を奪われ追う展開に。5回表、岩田悠聖と榎谷礼央の2本の二塁打で同点とし、その後は好投手の投手戦となり、延長タイブレーク13回裏、満塁策を取った山梨学院榎谷は痛恨の押し出しの四球を与えサヨナラ負けを喫した。負けた瞬間アルプススタンドからため息。その後、大きな暖かい拍手が選手に送られた。
■2年半ぶりの甲子園アルプススタンドに800人を超える応援団が選手を後押しー
アルプススタンドで応援する応援団の入場は、出場校の生徒と学校関係者、上限1800人限定で可能になった。また、選抜では3年ぶりに応援の華ブラスバンドの演奏も解禁され選手たちを後押しすることができるようになった。大会は3月18日に開幕の予定が悪天候で1日順延。その影響で大会3日目第1試合の山梨学院は21日初戦となった。応援団は20日午後11時半に15台のバスに分乗して学校を出発。試合が始まる2時間前の21日午前7時過ぎに甲子園球場に到着した。午前8時には出場登録以外の野球部員46人、吹奏楽部48人(今春卒業の16人、OB10人)、チアリーダー部19人、応援団、生徒会、一般生徒を含めた約350人、教職員、学校関係者など約150人、野球部保護者会約300人、総勢約800人が1塁側アルプススタンドに居並んだ。
■選手に向けて応援メッセージ
相澤貴志野球部保護者会会長は「選手たちの思いが通じた甲子園ですからいつも通りの練習のプレーを見せてくれればいいと思います。一戦一戦丁寧に勝利を積み重ね、まずが初戦を頑張ってもらいたい。兄(3年前の主将・利俊さん)が踏んだ土にやっと立てるということで、本人は兄を超えたいと話していました」と話した。野球部の応援団長を務める木村光志選手(3年)は「自分たちはこの冬、選抜で優勝するためにずっと練習をやってきて、その中でこの甲子園に立っているメンバーがいるんですけれど、楽しみにしている分、不安とか緊張、プレッシャーもある中で、メンバーが伸び伸びした気持ちでこの舞台に立てるように応援したい」。斉藤明宏生徒会長(3年)は「甲子園ってやっぱり高校野球のみんなの目標ですし、それに出られることは光栄なことなので、それを励みとして感じて欲しい。出たからには優勝してほしいので皆で全力で一丸となって応援します」。安藤聖奈応援団長(2年)は「まだ自分は1年生なので初めての事ばかりなので緊張しています。思い出に残る試合になるように今日は全力で頑張ります」。チアリーダー部・中村美幸副部長(3年)は「期待されているプレレッシャーもあると思うのですけれど、一戦一戦勝ち進んでほしいなと思います。今日はブラスバンドと一緒にできるので選手たちに届くように気持ちを込めて踊りたいと思います」。吹奏楽部・小林海斗部長は「野球部を支えるということが目的でみんなと初めて甲子園に来たので支えになることをかなり意識して演奏をしつつ、ここの雰囲気を楽しみたいと思います。圧倒的に勝ちきって欲しいです」とそれぞれが選手たちにエールを送った。(学年は新学年)
■午前9時、優勝の可能性大の関東勢同士の対戦始まるー
試合は共に好投手を擁し、得点力が高い両チームがいかに先に投手を攻略するかが注目された。午前9時、冬に戻ったような肌寒い曇天の空の下、山梨学院の先攻で始まった。初回の攻撃、応援団は全員立ち上がりメガフォンを手にブラスバンドの曲に合わせ打ち鳴らした。秋の大会から打順を変えた初回、二死から3番に座った驚異の出塁率を誇る鈴木斗偉(3年)が安打で出塁するも、安定感に定評のある木更津総合の越井颯一郎投手(3年)に抑えられ無得点。山梨学院先発の榎谷礼央(3年)はこちらも安定感抜群の絶対的エース。初回先頭打者の木更津総合打撃陣のキーマン山田隼選手(3年)に左翼フェンス際の大飛球を打たれヒヤリとしたが澁谷剛生(3年)が好捕。事なきを得た。続く2番の中西祐樹(3年)には三塁線に飛んだ鋭い打球を相澤秀光がグラブに当てるも二塁打とし、3番の安打で一死1塁・3塁とし、続く内野ゴロの間に1点先制された。その後は、優勝に近いと目される関東の強豪同士の戦いは、両チームのエースの好投で投手戦となった。5回表、山梨学院はここまで1安打に抑えられていた越井投手からこの試合、7番に下がっていた岩田悠聖(3年)が一死後、左翼線を破る二塁打を放ち後続を待った。二死後、9番榎谷投手が右翼線二塁打し自ら振り出しに戻した。同点となった一塁側アルプス席は俄然応援のボルテージを上げ、野球部の大ドラムと吹奏楽部の“突撃”の曲がアルプススタンドを包み込み、一体となり選手たちを鼓舞した。しかし、緩急を交えてテンポよく投げる木更津の越井投手の前に好機を作れず、一方の木更津は得点圏に走者を進めるも榎谷の我慢強い投球に得点を奪えず拮抗した展開となり9回まで1-1の緊迫した展開で延長戦に突入した。
■延長13回、タイブレークで勝負が決着ー
主導権を握りたい先攻の山梨学院。応援団の安藤聖奈団長と野球部木村光志選手を中心に1点を争う追加点を願って選手を鼓舞するも、延長の10・11・12回と三者凡退に抑えられ得点の糸口さえ掴めない。対する木更津も得点圏内に走者を出すも榎谷が要所を締め12回を終了。規定のタイブレークにもつれ込んだ。(タイブレークは13回以降の攻撃は、前の回の継続打順で無死1・2塁から開始され、得点しやすくなる)先攻の山梨学院は、8番進藤天(2年)がバントを試みるも三塁フォースアウト。走者を進めず、続く榎谷は4-6-3の併殺。最悪のケースとなった。その裏、木更津は先頭打者の左翼への犠飛で2塁走者が3塁へ進んだ。山梨学院は次打者を申告敬遠で満塁とし守備を固めた。しかし、榎谷は次打者に厳しいコースを狙うもボールが先行し四球を与え、押し出しサヨナラ負けを喫した。粘り強く155球を投げる好投も叶わず初戦で涙を飲んだ。
■山梨学院高校VS木更津総合高校 大会3日目第1試合 甲子園球場
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 計 | |
山学 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
木更 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1× | 2 |
山梨学院高
[投手]榎谷12回1/3 ー[捕手]佐仲 投球数:155球、奪三振7、与四球3
[打撃] 安打6《二塁打2:岩田、榎谷》
木更津総合高
[投手]越川13回 ー[捕手]中西 投球数:166球、奪三振4、与四球2
[打撃]安打9《二塁打:中西、山田》
コロナ禍の中でも山梨学院高校野球部のため集まった約800人の応援団から心のこもった応援もむなしく惜敗。初戦突破はならなかった。2年前の先輩たちの無念を胸に秘めて臨んだ『選抜甲子園のグラウンド』。今までで一番優勝近いと言われたチームは、接戦になると予想された通りになった試合は、最小点で13回タイブレークまでもつれ込む激闘を繰り広げるもあと一歩及ばなかった。チームにとっては悔いが残るが全力を尽くした選手には応援する者にとって納得できるものだった。最後校歌が聞かれなかったのは残念だが、一塁アルプスタンドの応援団からは選手に温かい大きな拍手が送られた。試合後、澁谷剛生選手の保護者は「ちょっと打てなかったですね。1からやり直して、夏頑張ってもらいたいですね」。同じく鈴木斗偉選手の保護者は「頑張っていましたが打てないと点が入りませんから。負けてしまったことの現実は変えられないのでこの悔しさを次にどう生かすかは本人次第なので頑張ってほしい」と起死回生を期待した。
吉田洸二監督に「今までに初めて優勝に手が届く」と言わしめたチームは、この悔しさを糧に山梨初の『深紅の大優勝旗』を夢見て夏の甲子園での活躍を誓う。全校挙げての応援団も選手とともに進む。
文(K.F) カメラ(平川大雪・今村佳正) 2022.3.22