●2022年度全日本学生柔道優勝大会
~山学女子9度の優勝を誇るも、無念のベスト8~
~男子2日目に進出できず。敗戦が躍進の原動力に~
「2022年度全日本学生柔道優勝大会(男子71回、女子31回)」が6月25日、東京・日本武道館で開幕した。26日までの2日間の日程で行われる。1日目は女子の1回戦から決勝戦までと男子の1回戦。2日目は男子2回戦から決勝戦までが行われる。大会1日目、全国地域から38大学がA・Bグループに分かれて行われる女子5人制の山梨学院大(関東)は、2014年から2018年まで史上初の5連覇、最多9回の優勝を達成しており、昨年、準決勝で敗れ3位と順位を落とした雪辱を今回、10度目の優勝で晴らすため今大会に臨んだ。Aグループの山梨学院大の初戦は日本体育大(東京)と対戦、先鋒から副将まで4人までが引き分け、大将の高橋瑠璃(4年)が1本勝ち。僅差で決着をつけた。2戦目は明治国際医療大(関西)に先制されたが大将の高橋がここでも最後に逆転。1勝1敗(勝利の内容差)の勝利。3戦目準々決勝はAグループ最初の関門、環太平洋大と対戦。先鋒の西尾果連は仕掛けた技をかわされ技ありを取られた。次鋒、中堅は引き分け、残り副将・森心晴、大将・高橋瑠璃で逆転をもくろむが、森が合わせ一本を奪われ万事休す。ここで敗退、ベスト8で終わった。7人制の男子は1回戦のみが行われ、山梨学院男子は専修大(東京)と対戦。5人目、6人目が敗れ予想に反し2日目に進めなかった。
試合方法は、女子は5人制と3人制の2部制で行われ、山梨学院大(関東)は5人制で出場した。5人の点取り式によるトーナメント戦で、各試合の配列は、先鋒・次鋒は57㎏以下、中堅・副将は70㎏以下、大将は無差別と決められている。女子5人制の部は出場38校がAグループ、Bグループ各19校に分かれ各グループ1位によって決勝が行われた。
山梨学院は今大会、昨年の全日本学生柔道体重別選手権大会で57㎏級渕田萌生(4年)、70㎏級多田純菜(4年)、78㎏超級高橋瑠璃(4年)の3人の学生チャンピオンを抱え優勝候補の一角と目されてきた。しかし、蓋を開けて見ると状況は変わった。年々、実力差が拮抗しており、小さなミスやその時の選手の状態で予想外の展開が発生する。下剋上も散見される。
■女子1日目、初戦日体大、2戦目明治国際医療大学に辛勝―
1日目、優勝2回の伝統校日本体育大(東京)との対戦。両チームとも初戦とあり、緊張感からの硬さか決め手がなく、先鋒から副将まですべて引き分けという展開に大将の高橋瑠璃主将(4年)が決着をつけた。落ち着いた試合ぶりから冷静に相手の動きを見極め、相手の疲れが見える終盤、『隅おろし』で一本勝ちを収め初戦を勝利に導いた。2戦目、明治国際医療大学(関西)は最近力をつけてきた侮れない相手。先鋒、渕田萌生(4年)は学生チャンピオンの意地をかけ、勝利でチームを勢いづけようと畳に上がった。再三、寝技に持ち込むも、相手の硬いガードを崩せず引き分けた。次鋒、渡邉彩香(2年) は激しく組み手争いをする中で、なかなか有効な技が出ず、終盤相手に技ありを決められ敗れた。中堅の佐々木南(3年)、多田純菜(4年)は一進一退の攻防を繰り広げるが互いに決め手なく引き分けた。ここまで0勝1敗。ここで大将の高橋瑠璃(4年)がはだかった。高橋は、相手をがっちり抑え圧力をかけて主導権を握り、消極的になった相手から指導3を奪い、一本勝ちを収め逆転(勝敗は1勝1敗だが、一本勝ちと技ありの内容の差)。薄氷を踏む勝利だった。
■2戦目6/25 山梨学院大VS明治国際医療大 1勝1敗ー
先鋒 | 次鋒 | 中堅 | 副将 | 大将 | |
山梨学院大 | 渕田 | 渡邉 | 佐々木 | 多田 | 高橋 |
引き分け | ● 技あり |
引き分け | 引き分け | 〇 一本勝ち |
|
明治国際医療大 | 足達 | 野崎 | 三谷 | 高木 | 新名 |
■ライバル西の王者・環太平洋大と準々決勝―
3戦目準々決勝は過去5度の決勝を戦った環太平洋大(中国四国)。今大会、初めの難関と対した。先鋒は前回大会で優秀賞に輝いた西尾果連(4年)。中盤まで互いに積極的に技を掛けあい進んだ中盤。西尾が足を攻めたところをすかされ、『内股すかし』をくらい技ありを取られ先制された。続く渕田、多田の学生チャンピオンに挽回を期待したが引き分けに終わり、副将・森心晴(2年)、大将・高橋に反撃を託した。山梨学院の森の168cmに対して相手154cmの古賀ひより主将(4年)は小柄ながらガッツとテクニックを持ち合わせるやりにくい相手。中盤、森は下から『つりこみ腰』で技ありを決められ、その流れで『後ろ袈裟固め』で合わせ一本。敗れた。この結果、大将戦を残し0勝2敗で敗退した。大将の高橋はチームは敗れるものの、諦めず重量者同士の力対力の迫力をある試合を見せ引き分けたが、山梨学院の意地を見せた。昨年3位と準決勝敗退の雪辱を果たせずベスト8でこの大会を終えた。女子5人制の部は、優勝・東海大(東京)3連覇、準優勝・龍谷大(関西)、3位・環太平洋大と福岡大(九州)となった。
■3戦目準々決勝 6/25 山梨学院大VS環太平洋大 0勝2敗ー
先鋒 | 次鋒 | 中堅 | 副将 | 大将 | |
山梨学院大 | 西尾 | 渕田 | 多田 | 森 | 高橋 |
● 技あり |
引き分け | 引き分け | ● 合わせ一本 |
引き分け | |
環太平洋大 | 白石 | 伊藤 | 石岡 | 古賀 | 梅木 |
西田孝宏部長は「全部強いチームと当たらなくてはいけないという、たぶん決勝戦を5回するような組み合わせだったので、一進一退の試合になるだろうと予測はしていたんですけど、ただ試合を振り返ると波に乗れなかったというか、やはり5人中3人4年生を使っているわけで、今まで接戦を乗り切ってきたのでもう少し力を出せると思っていたんですけど結局力を出せないまま負けてしまった感じですかね。本当にお互い力の差のないチームだったので、波の乗せることができなかったということは私にも責任があります。負けてしまったことは仕方がないので、反省すべきことは反省して次に向かって出直します」と振り返った。高橋瑠璃主将は敗因を「「自分らしさが一人ひとりの個性が出ていなかったところだと思います。団体戦がもう一つ残っているのでそこは悔いのないように勝つ負ける云々ではなく、それぞれの目標を持ってそれぞれの個性を見せられるような試合を今度こそは目標にしたいと思います」と次の団体戦で本来の山梨学院大の強さを見せる。
◆1日目、男子1回戦が始まるもまさかの敗退ー
女子の5人制、3人制の全試合が終わり、表彰式が終わった午後4時、男子7人制トーナメント1回戦が始まった。山梨学院は第一試合会場2試合目に登場した。白の柔道着に身に包んだ山梨学院柔道部部員は緊張した面持ちで畳に上がった。先鋒の立石泰勝(4年)は立ち上がりから互いに果敢に攻め合い後半、立石が圧力をかけ前に出るも引き分ける。次鋒・橋口佳尚(3年)、五将、身長200cmのモンゴル出身のルター・エンフボルド(1年)の3人が引き分け終わり緊迫した状態が続く。4人目、中堅・武田幹太(1年)は残り1分、体を引いたタイミングで足払いが入り尻もちをつく技ありを取られ、敗戦濃厚の残り僅か、『小外刈り』が決まり土壇場で引き分けた。どちらが先に点を取るか両陣営ボルテージが上がる。5人目三将の東家瑞貴(3年)は激しい攻防で頭を負傷。それでも残り1分30秒寝技に持ち込みあと少しのところで逃げられ、惜しいチャンスを逃すと残り15秒、反転攻勢『大内刈り』をかけられ敗れた。1点リードされもう負けられない山梨学院6人目、副将・松野夏輝(4年)は前に倒れたところで裏を返され、必死に抵抗するも『横四方固め』を11秒決められ技ありを取られ敗れた。これで敗戦が決まった。最後、大将・新垣翔二郎(4年)は中盤、『背負い投げ』が決まったかに見えるも無効に、その後も攻め続け残り25秒、『背負い投げ』が決まり、一本勝ち一矢を報いたがチームは予想だにしなかった初戦敗退。2日目に進めなかった。
■男子1戦目6/25 山梨学院大VS専修大 1勝2敗ー
先鋒 | 次鋒 | 五将 | 中堅 | 三将 | 副将 | 大将 | |
山学大 | 立石 | 橋口 | ルター | 武田 | 東家 | 松野 | 新垣 |
引き分け | 引き分け | 引き分け | 引き分け | ● 技あり |
● 技あり |
〇 一本勝ち |
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専修大 | 岩崎 | 野村 | 松田 | 田中 | 織茂 | 國武 | 穴澤 |
試合後、西田秦悟監督は「信じられないという気持ちというか」とショックを隠せない表情で声を絞り出した。そして言葉をつなげる。主力が故障で抜けている中でも「それでも大丈夫だろうというぐらいの気持ちで私も選手もいたので考えが甘かったです。明日の東海大のことしか考えていなかったので東京(専修大含めて)の大学は強いですからはっきり言って自分たちの力を過信していた部分があったので、選手どうこうより私自身が反省しないといけないと思っています。どん底に落ちたなと思うので、終わらすわけにはいかないので後半の試合で這い上がるしかないと思います」。もとも地力のあるチーム。この試合の反省を力に変える。大将戦、最後に一本勝ちで山梨学院の面目を保った新垣翔二郎主将は「取れるところはいっぱいあったと思いますが、そこで取り切れなかったのは、組み手、勝負への出方の判断が甘かったのかなと思います。日頃の練習ができていなかったことが試合で出てしまい、相手を甘く見た部分もあります」。これから「個人戦も、尼崎の団体戦もあるのでチーム全体で詰めれる部分は詰めて、自分もみんなに厳しく言っていこうと思っています」と今までベスト8,ベスト16とあと一歩殻を抜き出ないチームの甘さ。今日の敗戦は冬眠から目覚める起爆剤となったかもしれない。男女とも一から見直し出直す。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2022.6.25