●第104回全国高校野球山梨大会 決勝
~山学高榎谷好投・打線爆発 甲府工業を圧倒~
~3年ぶり10回目出場 誓った夏の甲子園~
7月25日、「第104回全国高校野球選手権山梨大会」決勝戦が甲府・山日YBS球場で行われた。3年ぶりの優勝を目指す山梨学院高と10年ぶりの決勝戦に臨む甲府工業高の一戦は、私立対公立の熱い戦いとなった。じりじりと夏の日差しが照りつける午前10時、甲府工業高の先攻で試合は始まった。山梨学院の先発はエース榎谷礼央。甲府工業は1回表、内野安打と送りバント、スクイズを決め小技で見事な先制点を奪うと1回裏、山梨学院はすかさず反撃。1番から3番が連続安打と死球で満塁にすると4番高橋海翔の適時打で同点。5番相澤秀光の2点適時二塁打で逆転。さらに犠飛で1点とそつのない攻撃で4-1とリードした。3回には、二死から3番岩田悠聖の走者一掃の3点適時三塁打などで6点。4回にも二死三塁・二塁で2番進藤が2点適時打。続く岩田は2点本塁打を放ち、4点を重ね14-1とした。山梨学院の攻撃は収まらず6回には、3度目の満塁の好機を逃さず3点を加え17-1と大量リード。勝利を確実にした。先発榎谷は、立ち上がりの1失点以降は、7回まで三塁を踏ませない好投を見せ、山梨学院は2番手山王晃成、川口龍己と継投で甲府工をかわし勝利。センバツに続き甲子園出場を決めた。夏の出場は3年ぶり10回目となる。
山梨学院高の決勝戦は25日、ノーシードから勝ち上がった公立の伝統校、甲府工業高校と対戦した。山梨学院は3年ぶり10回目、春夏2季連続の甲子園出場。甲府工業は10年ぶりの決勝戦出場で16年ぶりの甲子園、古豪復活を目指して激突した。午前10時の試合開始に山梨学院応援団は、生徒会はじめ生徒、教職員、保護者会、PTAなど約700人が集結した。他に、甲府工業高応援団やネット裏、内野席がほぼ埋まるほどの高校野球ファンが詰めかけた。
■1回表、先攻の甲府工業、小技で先制も山梨学院強力打線で撃破ー
試合は、甲府工業の先攻。対する山梨学院は、初戦以来の先発エース榎谷礼央がマウンドに上がった。1回表、甲府工業先頭打者が二塁内野安打で出塁。2番打者が初球の犠打で走者を得点圏に進めた。榎谷は次打者に二塁ゴロを打たれるが打球が緩く内野安打。一死三塁・一塁のピンチを迎えた。甲府工業はここで見事スクイズを決め、簡単に先制点を奪った。嫌な立ち上がりにも山梨学院はすかさず反撃。1番、リードオフマン鈴木斗偉(3年)が左前打で出塁。2番進藤天(2年)の右前打で続く。3番岩田悠聖(3年)の四球で無死満塁の好機を迎えると、4番高橋海翔(2年)は中前適時打で同点とした。続く5番相澤秀光(3年)は粘った7球目を右翼フェンス直撃の鋭い打球が2点適時二塁打となり逆転した。その後、犠飛で1点を追加し4-1とリードした。榎谷は2回表のWプレーで相手打線を封じるや3回には三者凡退と本来の調子を取り戻していった。山梨学院の3回の攻撃は、二死から8番星野泰輝(2年)の四球を足掛かりに9番榎谷の安打、1番鈴木が適時打1点を加え、四球を挟んだ満塁には、当たっている3番岩田が一塁線を破る走者一掃の3点適時三塁打、続く高橋も右中間に三塁打を放ち1点、なおも相澤が左前適時打で1点を重ね、この回6点を挙げ、10-1とリードした。さらに4回には、先頭7番佐仲大輝(2年)が左翼フェンス前に達する二塁打で出塁。再び得点の好機を作ると、山梨学院は手堅く8番星野バントで佐仲を三塁に進塁させた。四球、盗塁を絡めた二死三塁・二塁に2番進藤は右前適時打で2点を奪うと、3番岩田は3回戦に続く2本目の本塁打で2点を挙げ14-1と点差を広げた。
■前半大量リード、後半もしっかり貪欲に加点、突き放すー
先発の榎谷は5回を投げ終わり投球数68球、被安打5と走者は出すものの要所を締めて無得点と好投。打線は6回、先頭の9番榎谷が左中間を破る二塁打でお膳立てすると、2番進藤の四球、3番岩田の強烈なピッチャー返しで一死、3度目の満塁に4番高橋中前適時打と相手の守備の乱れで2点、さらにバッテリーミスで1点と。相手のミスに乗じて確実に得点をものにし、この回3点を足して17-1となった。榎谷は7回に先頭打者に安打を打たれるも後続を2三振奪う力投で締めると、8回から2番手山王晃成(3年)が1回を好救援。9回には3番手として、準々決勝の駿台甲府戦で3回2/3を完璧に抑えた川口龍己(3年)が登板。二人のリレーで無得点に抑え、山梨学院は17-1の大差で甲府工業を退けた。
■山梨学院高決勝戦の結果
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 合計 | |
甲府工業高 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 1 |
山梨学院高 |
4 | 0 | 6 | 4 | 0 | 3 | 0 | 0 | - | 17 |
山梨学院高
[投手]榎谷→山王→川口➡[捕手]佐仲大輝
榎谷7回 打者27 投球数102 被安打7 奪三振6 四球1 失点1
山王1回 打者4 投球数13 被安打1 奪三振1 四球0 失点0
川口1回 打者5 投球数20 被安打1 奪三振1 四球1 失点0
[打撃]安打15《長打6=本塁打:岩田 三塁打:岩田、高橋 二塁打:相澤、佐仲、榎谷》 四死球10 三振8 [失策]0
[交代]星野(右)→(H)山本和輝(3年)→(右)岳原陵河(2年) 榎谷(投)→(H)藤井優太(3年)→(投)山王→(投)川口
■表彰式での代表インタビュー
試合後、表彰式が行われ、優勝者監督のインタビューで吉田洸二監督は「去年の夏、チームとして大変悔しい思いをして、1年後にここでみんなでうれし涙を流そうということで、あそこに控え選手もいますけど、チーム全員で今日の日を、この瞬間を目指して頑張ってきました。選手の夢が叶ってうれしく思います」と述べた。相澤秀光主将は「去年の夏の準決勝に敗退してから、このチームはスタートしてうまくいかないこともありましたけど、監督はじめ部長、コーチの話をしっかり聞いて全員で練習に取り組んできて、その成果が今日の優勝につながったので良かったと思います」と答えた。3回戦、準決勝、今日の試合でも三塁打、本塁打など大きな活躍をした岩田悠聖選手は「自分は秋に大きな怪我をしてたくさんの人に支えられ回復して、今日のバッティングでも貢献でき、夏の甲子園に行くことで恩返しができたことが一番うれしい」と周囲に感謝した。
■試合後のインタビュー
優勝セレモニー後に球場の外に出てきた吉田洸二監督は「春夏連続出場の難しさを知っているので本当に頑張ってきて良かった」と安堵の表情を見せた。ここまでの強さを、「ここに来て山田が成長してきたというのと、(準決勝の)東海戦のように打線が相手投手に追い込まれて苦しかったんですけど。少ないチャンスをしっかりものにするとか、そういう集中力的なことが伸びてきたのかな」と選手の成長を評価した。甲子園に向けて、「思い切りやらせます。センバツは榎谷がものすごく調子が良くて、うまくいけば本当に優勝を狙えることが嘘ではなかったんですが、そういう発言をしたために選手を硬くしてしまったので、今度は思い切りやらせたい」と思いを寄せた。選手を直接指導する吉田健人部長・コーチは「みんな成長しているんですけど、山田とキャッチャーの佐仲のバッテリー二人の成長が一番良かったですね」と同じく山田投手の活躍を収穫に挙げた。今日の榎谷投手については、「内容的には初回も打ち取っていましたし、そんなにメチャメチャ悪い感じはなかったですね。これからは選手の身体の面をもう一回しっかりリフレッシュして、榎谷の立ち上がりが悪いということとか、いろいろな面を見直して、甲子園に向けて、準備をしていきたい」と2週間後に迫る甲子園開幕に備えるとした。相澤主将とともに副主将としてチームを牽引してきた鈴木斗偉選手は「去年、5連覇が掛かっていたのを自分たちの代で潰してしまったので新たな強い山梨学院を作ろうと部長からも試合前に話があったので、歴史の新たな一歩になるように今日の試合はみんなで頑張ろうと言いました」。今大会を振り返り、「1番バッターとして後ろに良いバッターがいるので自分は出塁することを心掛けてやっていたのでその面ではいいところで出塁できた」と自身の役割に及第点を付けた。甲子園に向けて、「1年生から3年間出させてもらった中で初めての夏の甲子園なので、指導者含めて3年生の控えの選手たちのいろいろなサポートがありここに立てているので、甲子園で存分に楽しんでいるプレーを見てもらいたい」と話した。エースの貫録を見せた榎谷礼央投手は「去年の準決勝の悔しさをばねに、絶対負けないという気持ちで夏に入ったので優勝できて良かった」と笑顔を見せた。今日の試合は、「初回は一番自分でも不安なところなので、そこは甲子園までに克服することが目標」と反省を忘れない。期待がかかる本番では、「夏は勝利投手を目標に山田と二人で頑張っていきたい」と意気込んだ。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2022.7.25