●全日本大学女子サッカー選手権 決勝
~初の決勝進出の山学大は優勝をかけ東洋大と対戦~
~山学3度目のインカレ挑戦は0対1で敗れ準優勝~
第31回全日本大学女子サッカー選手権(インカレ)決勝が1月6日に東京・味の素フィールド西が丘で行われ、初の決勝進出を果たした山梨学院大は東洋大と対戦した。試合は前半序盤から東洋のポゼッションサッカーに圧倒され、山学は耐える時間が続く。山学守備陣はGK武田あすみ(4年)を中心に献身的な守備でゴールを守り、東洋の猛攻を阻止。攻撃陣もFW上田莉帆(4年)らが、ピッチを縦横無尽に駆け回り、前線からの守備でボールを奪取。素早い攻守の切り替えで東洋ゴールを目指すが、ここまで無失点の東洋の堅守を崩すことができずスコアレスで前半を折り返す。後半に入っても東洋が試合の主導権を握り、前半の勢いそのまま、後半21分に東洋が先制。まずは同点に追いつきたい山学は選手交代でチームの活性化を図るが、相手の堅守を最後まで崩すことができず試合終了。山学は東洋に0対1で敗れたが、全てを出し切り、3度目のインカレ挑戦は準優勝で幕を閉じた。
大学日本一、インカレ女王まであと1勝。関東第3代表の山学は兵庫ラウンド初戦・2回戦で東京国際大(関東第7代表)に1対0、準々決勝では、大阪体育大(関西第1代表)に3対0とクリーンシートで圧倒。東京ラウンドに舞台を移し、準決勝は日本大(関東第8代表)を3対1で退け、創部以来初の決勝進出を決めた。対する東洋(関東第1代表)は初戦・2回戦を追手門学院大(関西第3代表)に3対0、準々決勝は日本体育大(関東第6代表)をPK戦の末に破り、準決勝に進出。準決勝では、吉備国際大(中国第1代表)に5対0と攻撃力の差を見せつけ、同じく初の決勝進出を決めた。山学は関東大学リーグ(関カレ)では、今季勝ちがなく2敗を喫している。この日もバックスタンドには共に戦う登録外の部員たちが陣取り、条件付きで認められている声出し応援でピッチの選手たちにエールを送った。試合前には、昨年末に逝去したサッカーの王様と称される元ブラジル代表のペレさんに対し哀悼の意が表され、黙とうが捧げられた。13時00分、どちらが勝っても初の日本一、試合は東洋のキックオフで始まった。
第31回全日本大学女子サッカー選手権大会 決勝 ≪山梨学院大学VS東洋大学≫ 2023.1.6 会場: 東京・味の素フィールド西が丘 |
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● 山梨学院大学 0 | 前半 0-0 後半 0-1 |
1 東洋大学 ○ |
試合は前半序盤から東洋の前に推進力があるポゼッションサッカーに圧倒され、山学は耐える時間が続く。山学守備陣は枚数をかけて献身的な守備で東洋の猛攻を阻止。10分には左サイドから前線にフィードが入るがGK武田あすみ(4年 南稜高)が果敢に飛び出し、クリア。GK武田は終始最後尾で選手たちに細かくコーチングを行い、粘り強い守備体制を維持。反撃に出たい山学はFW上田莉帆(4年 湘南学院高)らが前線でのハイプレスからボールを奪い、守備から攻撃につなげる。しかし、ここまで無失点の東洋の堅守を崩すことができず0対0のスコアレスで前半を折り返す。後半に入っても東洋の勢いを止められず、4分には左サイドからのカットインを許し、PA内でシュートを打たれるがGK武田が左手1本でファインセーブ。対する山学も両サイドからゴール前にクロスを入れ、好機を演出するが相手守備陣の統制の取れた守備を突破できず。また、エースのMF浜田芽来(4年 十文字高)もドリブルで前線に持ち込もうとするがマンマークを剥がせず攻撃に繋げられない。21分、ついにスコアが動く。東洋に左サイドからグラウンダーのクロスをゴール前に入れられ、一度はGK武田が防いだものの、右サイドに流れたこぼれ球を再度ゴール前に入れられ、山学守備陣が対応できず東洋が先制。まずは同点に追いつきたい山学は23分、36分、38分に選手交代でチームを活性化。これまで同様にビルドアップから攻撃を組み立てる自分たちのサッカーを貫き、相手の最終ラインを引き出し、前線に仕掛けていく。41分には両サイドでCKを獲得したが、運動量の落ちない相手の堅守を最後まで崩せず0対1で試合終了。優勝の栄冠は東洋に輝いた。
試合後ミックスゾーンで取材に応じた村上裕子監督は「選手たちは本当に良く戦ってくれたと思います。思い通りにいかないことは想定していたので、その中で気持ちを落とさずに諦めずに最後まで戦えたと思います。もう少しボールに寄せて欲しいタイミングは多かったのですが、(前半は失点をせず)プラン通りでした。警戒しても私たちの守備をかいくぐってくる攻撃力は東洋さんの良さであり、強みであり本当に流石だなと思います。相手がボックス内に入ってくるとなかなか足も出せない状況だったので、しっかり守れるように今後の課題としてトレーニングをしていきたいと思います。また、体力の差はなかったのですが、守備をする際の相手のリアクションに対応するだけのコーディネーションが必要になると思うので、その部分も課題として取り組んでいきたいと思います」と語り、ゲームキャプテンを務めたMF浜田芽来選手は「自分たちはチャレンジャーとしてぶつかっていこうと話をして試合に入りましたが、向こうの技術やレベルが高く、自分たちもハードワークでやれた部分はありましたが、一歩及びませんでした。自部自身も全く仕事ができず、チームとしても前にボールが収まっても全体で押し上げることができなかったので、その部分ができればもっとゴールに近づけたかなと思います」と試合を振り返り、大学4年間を回顧し「今までのサッカー人生で一番濃い4年間だったと思います。仲間やスタッフに恵まれ、4年間本当に楽しく生活できたので、山梨学院に入って良かったです。本当に最高のチームで日本一を目指せるチームだったので、悔しさはありますが、みんなでやり切って終われたので、(日本一は)来年の後輩たちに託したいです」と述べた。卒業後はWEリーグ・ノジマステラ神奈川相模原への加入が内定しており「インカレを通して足りないところが痛感できたので、これを自分の糧にして、チームを勝たせられるゴールを決められるよう、もっと上を目指してWEリーグでも努力していきたいです」と前を見据えた。インカレ2得点でハードワークでチームに貢献したFW上田莉帆選手は「関カレで2敗している相手にやり切れない部分もあり、勝ち切れなかった思いがあります。バックラインが体を張って守ってくれていたので、自分は沢山走ってバックラインの負担を減らせるように守備をしました。ただ、攻撃の面では、前線でもう少しためを作れれば、後ろの人も上がれて攻撃に厚みが出たので、その部分はもっとできたのかなと思います」と試合を振り返り、後輩に対し「来年、ここに戻ってきて自分たちが取れなかった優勝を勝ち取って欲しいと思います」と期待を込めた。最後尾から声でチームを鼓舞し続けたGK武田あすみ選手は「攻め込まれるゲームになることは予想していて、実際に攻められて攻められて厳しい時間帯が続いて、みんなでハードワークして前半終えました。後半もギアを上げようとしていて、集中は切らさず声だけは出し続けていましたが、相手に狭い所を突かれてしまいました。4年生はやり切りましたが、後輩たちは悔しい思いをしていると思うので、ここから歯を食いしばって頑張って欲しいと思います」と言葉を紡いだ。
山学サッカー部女子は2014年に創部し、強化を開始。2017年に初めて関東1部に昇格し、2019年には2度目の1部昇格。その年のインカレは、ベスト16。昨年度、2回目のインカレ挑戦は第3位。そして今回3回目の挑戦は、準優勝で幕を閉じ、着実にステップアップを果たしている。試合後の選手たちは悔しさを滲ませながらも充実したやり切った表情をみせ、少しでも長くこのメンバーで試合ができたことに喜びを感じていた。表彰式後には応援スタンドに駆け寄り、最後まで声援を送り続けてくれた仲間に感謝を伝え、部員全員で笑顔で記念撮影に納まった。4年生にとっては最後の公式戦、ある者はこの日の敗戦を糧に次のステージに挑戦し、ある者はここでスパイクを脱ぎ、新たな人生に歩みを進める。残された下級生は先輩が残したこの結果をチームの財産に、来年もこの場に戻り、違う景色が見られるよう走り続ける。
文(Y.Y)、カメラ(藤原 稔)2023.1.6