●山学短大「スイーツマイスター」実技試験全員合格
~技術力に加えデザイン・独創性のある作品が揃う~
~専門家による「専門的実践力外部試験」も高評価~
山梨学院短期大学食物栄養科パティシエコースで1月25日、2022年度「スイーツマイスター」実技試験が行われた。「スイーツマイスター」とは、2年間の学びで培った製菓・製パンに関する知識と技術の習熟度を測るため、山梨県産の農畜産物や加工品を活用して「オリジナルスイーツ」1点を製作して取得する山学短大独自の認定資格。12回目となる今回はパティシエコース2年生20人のほか栄養士コース2年生3人の計23人が実技試験に臨んだ。時間制限のある中で取り組んだ作品は、どれも地元食材を巧みに使用し、若者らしいアイディアとデザイン性に優れたものに作り上げられた。審査は本学の食物栄養科科長と同教授の2人、外部専門家の3人が行い、実技試験の結果は当日の審査後に発表され受験者23人全員が評価基準を上回り合格となった。また、この実技試験は2016年度から実施された「専門的実践力外部試験」を兼ねており、外部の製菓・製パンの専門家3人が同時に審査にあたり、審査員の一人はすべての作品を評して「2年間でこれだけのものができるとは本当にすごいもの」と出来栄えを称えた。審査結果は3月15日の卒業式に合わせ事前に発表される。
■山学短大独自の認定資格「スイーツマイスター」
山学短大独自の認定資格「スイーツマイスター」を取得するための実技試験は、2010年(平成22年)に食物栄養科フードクリエイトコース(現パティシエコース)が開設されてから実施され今回で12回目となる。2年間の学びの中で山梨学院短大が掲げる『スイーツを知り』『スイーツを食し』『スイーツを探求し』『スイーツをつくる』の4つの要素の知識と技術を深め、安全で美しくおいしい洋菓子・和菓子・製パン技術と専門教育科目を修得した学生の集大成として実施されてきた。実技試験の内容は、山梨県産の農畜産物、加工品を活用し「オリジナルスイーツ」1点を製作しその完成度を図るもの。また、『学修成果を学内・学外の両輪で評価し社会に目に見える形で提示していく仕組み』として2016年の度から実施された「専門的実践力外部試験」を兼ねており、外部の製菓・製パンの専門家3人が同時に審査にあたった。
■山梨県の恵まれた食材を製菓技術に活かし、オリジナルなスイーツを作るー
学生たちの2年間の集大成として挑む「オリジナルスイーツ」の製作は、山梨が誇る大地の恵みから生まれた農畜産物や加工品を活用することを条件にしており、今回の作品には時期的に柚子(富士川町)やキウイフルーツが多く使用され、他にも大塚ニンジン(市川三郷町)や八ヶ峰かぼちゃ(北杜市)、イチゴ・イチゴジャム、りんご、あんぽ柿(南アルプス市)、ざくろ、さつまいも(北杜市)、八幡芋(甲斐市)、梨北米、卵、ワイン(甲州市)などが使用されていた。考え抜いた作品のレシピを基に1週間前から試作を繰り返し迎えたこの日。仕込みを終えた作品を午前10時40分から12時40分までの3時間に仕上げに掛かった。作品提出までの限られた製作作業には、洋菓子・製パン・和菓子担当講師の最後のアドバイスを受けながらデコレーション・焼く・蒸すなどの作業に取り組んだ。結果、県産畜産物・加工品をふんだんに使った、アイディアあふれる色とりどりのオリジナルスイーツが学生たちの技術によって仕上がった。完成した全23作品は、2階カフェテリアの審査会場に並べられ写真撮影の後、「スイーツマイスター」認定資格実技試験は、羽畑祐吾山梨学院短大食物栄養科長、中川裕子同食物栄養科教授、ほかに食に関するクリエイティブワークを主宰し、後期授業の教壇に立って学生たちを指導したKANAEフードビジネス研究所の芦澤香苗氏の3人が審査に当たり、「専門的実践力外部試験」は外部審査員3人が担当した。審査は作品の撮影後に始まり、2時間の時間を使い厳正に行われた。
■実技試験の評価基準
①地域素材の活用、②独創性、③製菓技術(レシピ通りの製作 コストパフォーマンス)、④視覚性(美しさ・センス・好感度)、⑤味覚性(おいしさ)の5つの視点から評価され(100点満点)、それぞれA評価(優れている)20点、B評価(普通)15点、C評価(劣る)10点で採点。実技試験は、60%の得点率を持って合格となる。「専門的実践力外部試験」の評価は、3人の学外審査員の平均点とする。学生は、事前に「材料・分量・原材料費」「作り方」「作品の菓子の意図や食材に関する事項」をレポート用紙に記入提出し、審査時には製作時の工夫点や思いなどを1分間のプレゼンテーションを行った。審査では6人の審査員が見た目のデザインや味、食材のマッチング・バランス、大きさと量のバランス、原価率など細部にわたり質問やアドバイスを受験者23人ひとり一人とやり取りを繰り返した。その結果、「スイーツマイスター」の審査結果は、いずれも60%以上の評価基準を満たし23人全員が合格と認定された。
■「スイートマイスター」実技試験の審査委員講評
審査結果は、山梨学院短大食物栄養科・関戸元恵講師の進行で行われた。審査後の講評で、「スイーツマイスター」審査委員長・羽畑祐吾山梨学院短大食物栄養科科長の挨拶で初めに、今回の実技試験は従来とスケジュールが変わり、午前に1時間多く製作時間を設け、午後の審査時間もより長く取ったことで作品をより吟味して審査したと説明。続けて「皆さんが作ったものを切り分けていただいたものを頑張って全部(23作品)食べさせてもらいました。ちょっと血糖値が上がったかな」と審査員の前に立つ緊張気味の学生たちの気持ちを和ませた。「皆さんのプレゼンテーションも含めて、しっかり審査できたことは良かった」と述べた。次に「スーツマイスター」実技試験及び「専門的実践力外部試験」の審査員の紹介の後に、「スイーツマイスター」実技試験の審査発表が行われ、23人全員が合格したことを発表した。「スイーツマイスター」実技試験の講評では審査委員の中川裕子食物栄養科教授は「試作を繰り返した中での今日の本番でした。スイーツマイスターという資格は、パティシエコースと栄養士コースが唯一コラボレーションできるとても重要な授業の一つとして捉えています。本日この審査員ということで、会う人会う人に先生今日はいいですねと言われました。それはなぜかというと、皆さんが作った作品を一つひとつ味わえる幸せということでありました。皆さんの成長の過程と苦労した過程といろいろと味あわさせていただきました。スイーツマイスター資格全員合格本当におめでとうございます。本日は大変貴重な楽しい時間を過ごさせていただきました」と学生を労った。また、KANAEフードビジネス研究所の芦澤香苗氏は「素晴らしい成果を表現された皆さんにまた、お会いすることができてとてもうれしいです。内容も素晴らしくて本当に独創性と表現力、また、ネーミング、それから地域の素材を大事にした6次産業化などのことについて皆さんにお教えしたことが素晴らしく活かされていたこと、また、県内の道の駅などに立ち寄って県産品を選んでくださったこと、すべてにおいて素晴らしかったなと思います。私もコンテストなどで皆さんと同じ立場で何度も審査員からコメントをいただくということがありました。評価していただくことはこれからに皆さんにとっても素晴らしい経験の一つになりますので、これを糧に増々腕を磨いて素晴らしい学生生活だったというふうに思い出をたくさん作っていただきたいなと思っております。これから増々皆さんのご活躍を私も陰から応援しております」とエールを送った。
■学外の製菓・製パン専門家による「専門的実践力外部試験」
また、同時に行われた「専門的実践力外部試験」は、今回実技試験に臨んだ23人の学生に対して製菓衛生師に係わる専門的実践力が2年間の学びの中でどれだけ身に付いているか「卒業後の保証」という見地から、学外の製菓・製パンの専門家の評価を受けるものであり、審査は、審査委員長の山梨学院短期大学学外助言評価委員会委員を務め、山梨県洋菓子協会会長で(株)清月専務取締役野田清彦氏と山梨県製パン協同組合理事長で(有)六曜舎代表取締役の小野 曜氏、オーナーパティシエ・エールの手塚理江子氏の3人が行った。審査委員長を務める野田清彦氏は講評の中で「2年間でこれだけのものが作れるということは本当にすごいことです。毎年、毎年作品を見させていただいて段々と課題も上手くなっているし、味も美味しくなって、私も真似をしたいなと思うものが何作品かありました。これは周りの先生やスタップ人たちの支えがあったからこのレベルになるんだなと改めて思いました。本当に今日はお疲れ様でした」と学生たちの成長を喜んだ。小野 曜氏は作品を見て学生たちに向かってしみじみと、「同じものが一つもないんですね。これは当たり前のようで難しいんです。それぞれが知恵を出して和菓子と洋菓子とパンと同じ舞台で同時にいろいろ作ったんですね。好奇心があれば何でもできるんです。洋菓子の技術があれば和菓子にもパンにも活きます。逆も同じです。この2年間はすごく大事で基礎を作りました。今ここで洋菓子を作ったからといって一生洋菓子と思わなくていいんです。今自分がこれを作ったんだという思いがあれば和菓子でも洋菓子でもパンにでも行けます。なぜなら素晴らしいオリジナルなものを作っているから。是非頑張ってください」と学生たちに励ましの言葉を贈った。今回初めて審査委員を務めた手塚理江子氏はオーナーシェフとしての立場から、「感覚としては売れるお菓子、喜ばれるお菓子とどうしても先に考えてしまうんですが、私も(店を)始めたころには自分が好きな、食べたいと思うケーキを地域の皆さんに食べてもらいたいという思いで始め、これまでずっと続けてきましたけど実際作ったけど売れないことなど、いろいろ改良はしてきました。今日、皆さんの作品を食べさせていただいて、まだ未完成なものもありますけれども、いろんなことを考えて作った一品だなということが伝わってきましたし、他の方も仰っていましたけど、“すごいな”と思います。私は学校(専門の)には行っていませんが皆さんにとっていろいろな面で2年間はいい時間だったのではないかなと思っています」とそれぞれ講評した。外部専門家3人による「専門的実践力外部試験」の結果は、3月15日に行われる卒業式に合わせ事前に通知される。
■審査を終えた学生たちに聞いたー
栄養士コースから試験に臨んだ一人で23作品中唯一和菓子を製作した学生の作品は、3種の練りきりの餡の中身をすべて山梨県産のイチゴとレモン、サツマイモと異なる食材を使用した干支のうさぎと春の花を持ちモチーフにした練りきり和菓子「山梨の春2023 卯年」。この作品は食物アレルギーを持つ人にも配慮しており、特定原材料を一切使用していない。製作の動機を「子どもの頃から和菓子が好きで山梨の美しい春の情景を、練りきりで表現したかったから」と振り返った。将来は栄養士コースなので栄養か調理の仕事に就くという。リンゴが大好きという小山田美優さん(パティシエコース)は山梨県産の2種類のリンゴを使用した可愛いケーキ。「ムース・オン・ポンム」を製作した。「1ヶ月ほど考えて製作したんですけどたくさん試作して完成までが大変でした。あんまり自信がなくて本当においしいか不安でした」と胸の内を明かした。将来は県内の菓子メーカーで自分の作ったもので皆を笑顔にすることが夢と話した。「肉鬆(ロウソン)紫芋ねじりパン」を製作した中村幸恵さん(パティシエコース)は、半分のルーツを持つ台湾のメジャー食品の肉鬆(ふりかけの一種)を使ったパンに挑戦した。「入学する時に台湾のパンを作って広めたいという考えがあったんですけど、パンを作るのには時間と手間がかかるのでなかなか機会がなかったんです。卒業間近になり最後のチャンスだと思い、自分なりにパンに肉鬆に使うことにこだわって製作しました」と肉鬆を分かりやすく上に乗せ、ペースト状の紫芋も中からよく見えるように工夫した自信作。卒業後はパンの製造に関わりたいという。南アルプス市在住の三井 彩さん(パティシエコース)は富士川町のゆずをふんだんに使用したスイーツ「穂積のそよかぜ」を製作した。「冬の象徴と言えるゆずの香りや酸味などいいところを活かせるように意識しました。全体的に甘さを控えめにしてゆずが好きな人には存分に楽しんでもらえるように、苦手な人でも食べられるように工夫しました」と自分の好きなゆずを主役に爽やかな作品に仕上げた。卒業後は県内のタルト店で腕を磨くという。渡辺碧衣さん(パティシエコース)は小さい頃から祖父の作るあんぽ柿が好きで、現在も実家で作るあんぽ柿を使用して洋菓子を作りたいと「ほうじ茶とあんぽ柿のパウンドケーキ」を作品にした。「最初はあんぽ柿だけでパウンドケーキを作ろうと思ったんですけど、シンプル過ぎると思い、最近若者にもブームになっていて自分も好きなほうじ茶と相性がいいかなといろいろ考えて試してみたら、ほうじ茶の香ばしさとあんぽ柿の甘みが合いました」と製作経緯を語った。作品はシンプルでおしゃれな仕上がりになった。卒業後は、県内の菓子製造企業に就職する。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2023.1.26