●選抜野球 山学高勢い止まらず準決勝進出
~県勢32年ぶりの4強に応援団も歓喜~
~春夏優勝経験ある作新学院に快勝、次へ~
山梨学院高校野球部の勢いが止まらない。29日「第95回選抜高校野球大会」10日目準々決勝4試合が行われた。第1試合に登場した山梨学院は同じ関東地区代表の強豪栃木・作新学院高校と対戦し、県勢32年ぶりとなる4強進出に挑んだ。この日も三塁側アルプススタンドに約630人の応援団が甲子園に駆け付けた。午前8時半、雲一つない甲子園球場で試合は開始された。後攻の山梨学院は林謙吾投手を4連続先発のマウンドに送った。林は3回まで1安打と、この日も安定した投球で立ち上がった。山梨学院打線は、2回先頭の6番
進藤天が三塁強襲二塁打と8番林が左翼際に適時二塁打で1点を先制した。打線は3回、3安打と相手投手の5四死球の乱調で一気に大量7点を奪い優位に立った。4回にも6番進藤、7番大森燦の連続三塁打と林の適時打で2点を奪い10-1とリードした。林は4回に1点、6回に本塁打の1点、8回に1点を失って9回から中田有飛にマウンドを譲ったが、大量点に守られるも、この日も安定した投球で相手打線をきっちり抑えた。山梨学院は8回にも打線がつながり2点を加え、12-3の大差で勝利しベスト4に進出した。明日は休養日で山梨学院は31日の準決勝に広島・広陵高校と対戦。県勢初の決勝戦進出を懸けて戦う。
■今日も共に戦う力強い味方が集結ー
快進撃を続ける山梨学院高野球部の4強を懸ける応援にこの日も朝7時前には多くの山梨学院高生徒を中心した応援団が三塁アルプススタンドゲート前に整列し、開門を待った。野球部員、吹奏楽、チアリーダー部、生徒会、一般学生が300人、教職員50人、野球部保護者会・PTA、一般など学校関係者280人、総勢約630人が選手とともに戦う。
■選手に向けて応援メッセージ
試合前、野球部OBで野球部応援曲も手掛けるシンガーソングライターの伸太郎さんは快進撃を続ける理由を「先輩たちが今まで甲子園で勝てなかった事があったからこそ、勢いよく行けたんだろうなと思います。初戦をまずは勝てばというところが一番難しかったんですよね。まだまだ堅いところもあるんですけれども、誰かがミスしたところを誰かが補う、これができているからこそ、勝っているのかなと思います」と選手同士の信頼が山梨学院にはあるという。OBとして後輩の活躍に「今、ベスト8でベスト4に臨むなんて、後輩たちに本当にありがとうという言葉しかないですね」と素直に喜んだ。元気な応援団を見て「やっぱり出られない子、スタンドにいる子はここで勝たすんだとその応援の強い思いが伝わってきます。今日はベスト4狙いますけど僕は楽しく見ようかなと思っています。今まで“頼む、頼む”という思いだったんですけれども、もうベスト8に入って、あの子たちらしさが出るプレーをニコニコしながら見ようかな」と優しく我が子を見守るように話した。
スタンドに応援に来ていた、昨年夏の甲子園でエースナンバーを背負って投げ、惜敗に涙を飲んだ山田悠希さんは「自分たちも勝ちたいという思いが強かったですけど、自分たちの分まで頑張ってもらいたい気持ちです。自分たちの代の時よりも活躍しているというか生き生きしているのでいいと思います。一戦一戦勝つことが大事なので、思いっきりプレーすれば勝てると思います」と勝利を期待する。試合前のノックを終えてスタンドに戻ってきた北村開コーチは「今まで山梨学院自体が2回戦以上いったことがなかったので、OBとしてとしてもうれしいですし、2回戦ぐらいまでは緊張もあって自分たちらしい野球ができていなかったですけど、3回戦になってうちらしさが出た試合になってきたので、今日もそれが出れば勝てるチャンスはあります。作新学院さんも結構うちと似たスタイルのチームなのでうちも自分たちの機動力を使って、しっかり攻撃できれば」と話す。コーチとして選手たちを支えてきて、「選手が上手くいかないときもありましたけど、実際こうやって勝って、苦労が喜びに変わっているのでコーチとしても、うれしく思っています。よくここまで勝って来ていると思います」と選手の活躍に目を細めた。
■山梨学院ナインが躍動、応援団のボルテージも上がるー
午前8時半、雲一つない快晴下、作新学院高の先攻で試合が始まった。作新学院は今回で選抜出場は16回を数え。優勝も1度達成している。夏の甲子園でも15回の出場の内2度の優勝を飾る強豪校。今大会の3回戦では終盤2度の逆転で決着をつけた粘り強い試合を持ち味にする。山梨学院の先発はここまでの3試合で各試合1点に抑える抜群の安定感を見せる林謙吾が4試合連続、先発のマウンドに上った。初回、林は3者ない安打で仕留めると、2回の山梨学院の攻撃は先頭打者の6番進藤天が三塁強襲の二塁打で出塁。一死後、林は自らの適時二塁打で先取点を挙げた。山梨学院の応援団は初回の攻撃から、活発な応援を見せ盛り上がる。それに応え、3回にも打線はつながり、2番星野泰輝が先頭打者安打で出塁、4番高橋海翔の中前適時打で1点、続く6番進藤は意表を突く遊前へのヒットエンドランで1点を追加。その後、相手投手の制球が乱れ5人連続の四死球で3点を重ねた。さらに3番岳原陵河の中前適時打で2人が還って打者12人で7点を入れ8-1と序盤で大きく差を広げた。4回には一死後、6番進藤、7番大森燦の連続三塁打と8番林の2回目の適時打で2点を加え10-1とした。林はこの日も力投で相手打線を抑えるが、4回に1点、6回には作新の1番打者にスリーボールからストライクを取りに行ったボールを本塁打され1点、8回には先頭打者安打を二死後、適時打を打たれ1点、3失点で9回からマウンドを中田有飛を譲った。山梨学院はその裏、先頭打者2番星野の内野安打を足掛かりに岳原の犠打、高橋のヒットエンドラン左前適時打で1点、なおも5番佐仲大輝の右前打、進藤の犠飛で1点とそつなく2点を重ね12-3とした。9回最終回、継投した中田は安打と四球で走者を背負ったが、最後の打者を左飛に打ち取ると、山梨学院応援団から大声援が沸き起こった。山梨学院はここまで遠かった大会2勝目を果たすと一気に準決勝進出に駆け上がった。
■山梨学院高校VS作新学院高校 大会10日目第1試合・準々決勝戦 甲子園球場
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 合計 | |
作新 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 3 |
山学 | 0 | 1 | 7 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | × | 12 |
■山梨学院高:先発打順・守備位置
1. 徳弘太陽(右) 2.星野泰輝(中) 3.岳原陵河(左) 4,高橋海翔(一) 5.佐仲大輝(捕)
6. 進藤 天(遊) 7.大森 燦(二) 8.林 謙吾(投) 9.伊藤光輝(三)
[投手]林⇒中田[捕手]佐仲
林=投球回8回 打者数29 投球数96 被安打6 奪三振2 四球0 失点3
中田=投球回1回 打者数 5 投球数14 被安打1 奪三振0 四球1 失点0
[打撃] 安打14《三塁打2:進藤、大森 二塁打:進藤、林、》 四球6 死球2 三振7
■試合終了後、山梨学院快勝後に応援団はー
試合後、勝利の興奮冷めやらぬ応援団。山梨学院高PTA会長林昌明さんは「壮行会の時(壮行会の挨拶)を思い出すんですけど、私が会長を3年間やらしてもらっている中で、甲子園で1度も1勝できなかったんです。だからぜひ勝ってくれと。99パーセントだめでも1パーセントの可能性を信じて頑張れとの言葉が通じたかのように連勝してくれて本当にうれしくて。それで県勢で22年ぶりの準決勝へ行って、優勝してもらいたいです。子どもたちの笑顔が輝いていて山梨県民も喜んでいると思うので、続けて勝ってもらいたいと」と話した。毎試合熱心に声援を送るPTA女性部長の野村満子さんは「もう本当に子どもたちの頑張りが、1年生の時から見ていたので、子どもたちが大好きな甲子園で活躍するのを見たくて毎回応援に来ています。夢の舞台に連れてきてもらって本当にうれしくて、これから先も、子どもたちが活躍しているのを本当に間近に応援できること感謝しています」と喜んだ。守りの守護神・林投手の保護者・林永浩さんは「正直ここまで来るとは思ってはなかったですけれども、でも試合の内容を見ていると、十分ここまで来る実力はあるかなという気はちょっしますね」とチームの強さを実感する。林投手については「それで言うと、神宮大会の英明戦で5回まで完璧に抑えていて6回、7回でやられた、あれがいい影響というとなんですけど、あれのおかげで冬のいろんな取り組みができたので、確かに見ているとやっぱりなかなか崩れにくくなっているので、そういうところはすごく成長を感じます」。その上を目指すには、「ここまで来たらもう打撃陣も投手陣もしっかり悔いがないように、贅沢いうと本当に楽しんであと2つできれば一番いいと思うのでしっかり応援したい」と笑顔で話した。
山梨学院の準決勝は31日第1試合、午前11時より中国地区代表で選抜甲子園2年連続26度目の出場の広陵高校(広島)と対戦。駆け上がってきた甲子園初のベスト4の次は山梨県勢悲願の初の決勝戦優勝に挑む。山梨県勢の準決勝出場は「ミラクル市川」として当時の話題をさらった1991年以来の4強で、いまだ春夏甲子園の優勝がない山梨県民にとって待望のチャンスが巡ってきた。
文(K.F) カメラ(平川大雪・今村佳正、小池裕太) 2023.3.29
1