●2023年【関甲新学生野球春季1部リーグ開幕】
~山学大初戦、難敵作新大に劇的サヨナラ勝ち~
~中込投手139球の力投に最後、打線が援護~
2023年度「関甲新学生野球春季1部リーグ戦」が4月8日、開幕。山梨学院大は初戦を栃木県小山市・白鷗大学野球場で作新学院大と対戦した。関甲新学生野球1部リーグは10校、1試合総当たりの勝率制で戦い、昨年、春7位、・秋3位に終わった山梨学院大は、『凡事徹底』をテーマにリーグ優勝を狙う。試合は、昨年、春・秋と負けを喫し、相性の悪い作新学院大が先攻。山梨学院は先日、県内初の甲子園優勝の快挙を成し遂げた山梨学院高野球部出身の中込陽翔がマウンドに上がった。中込は4回表、先頭の4番打者の安打と盗塁で無死二塁。続く5番打者にもバント安打を許し無死三塁から次打者の犠飛で1点を先制された。山梨学院の攻撃は5回まで相手投手に2安打に抑えられた6回一死後、相手の内野失策で得た二塁進塁に1番野中寿真の右前打で三塁一塁にすると、一打同点の好機に相手投手の一塁牽制を一塁手が後逸、ようやく1-1の同点に追いついた。その後、山梨学院は中込の力投、作新学院は継投で互いに譲らぬ展開で迎えた9回裏、山梨学院は4番宮崎一樹が四球で出塁。続く5番山元丈輝の犠打と次打者野村康太への死球で一死二塁一塁。一打サヨナラの場面で代打塚越倭斗が低めの球を中前に運ぶと、二塁走者宮崎が俊足を飛ばし本塁に気迫のヘッドスライディングで1点をもぎ取り、貴重な初戦勝利を飾った。中込は139球の粘投でチームを勝利に導き、山梨学院はリーグ優勝に幸先の良いスタートを切った。
山梨学院大が所属する関甲新学生野球1部リーグは昨季春のリーグ戦からから編成を8大学から10大学に増やし、1試合総当たりの勝率制でのリーグ制を実施している。1部リーグは上武大、白鷗大、山梨学院大、平成国際大、松本大、新潟医療福祉大、関東学園大、新潟大、作新学院大、常磐大の10校。2部リーグは9校で編成、春秋のリーグ戦後に1部リーグの最下位になったチームと2部リーグの1位チームで入替戦を実施する。
山梨学院大野球部は1993年創部と同時に関甲新学生野球連盟に加盟、リーグ戦に参戦した。その後の成績は、これまでに2006年秋季、2011年秋季、2012年春・秋季、2013年春季の4季連続を含む5回の準優勝、2014年春季に念願の初優勝を飾った。最近では2019年春・秋季の3位を最後に上位進出を逃し、勝ち点制から勝率制に変わった昨季も春7位、秋は上位2校に敗れ3位と、あと1歩優勝争いに絡めなかった。このところ上武大、白鷗大が優勝を分け合う2強が続いているが、今年は山梨学院高出身の中込陽翔(4年)と佐藤裕士(4年)、西野知輝(鳴門高 4年)の3人の安定した投手陣。そして攻撃陣では昨季、最多安打、最多本塁打、最多打点をたたき出した同じく山梨学院高出身の宮崎一樹(4年)を中心にした打撃陣が一体となり、何としてもこの2校の牙城を崩し、春の全日本大学野球選手権大会、秋の明治神宮野球大会出場を決めたいところだ。
■試合前の須田監督インタビュー
須田喜照監督は昨年のリーグ戦を振り返り、「今年は、選手自体は秋とほとんど変わってないです。昨年4年生は3人しかいなくて、そのうち投手が2人、野手が1人だったんですけど、試合には出ていない野手の選手と投手の2人も秋は怪我でいなかったので戦力的には変わってないですね。春は7位と惨敗して、“これではいかん”と顔ぶれが変わってなくても3か月間で秋に向けてやり直し、3位になりました」とチーム本来の力を引き出した。今年は「打撃の宮崎を中心に経験のある投手の中込と西野がしっかり投げ、そしてリリーフの佐藤がフル回転で行く思いで調整してもらえればいいと思います。ただ相手も強いですし、どこのチームも粘り強く来るので簡単には勝てないですけど、その中でリーグ戦の経験が多い選手がいるということはプラスですね」と優勝を狙える自信を感じさせた。今日戦う作新学院の印象について「相性が悪いんですね。昨年も接戦でしたけど嫌な相手ですので今日の初戦に勝って勢いに乗りたい」と大事な初戦に気を引き締める。今後の戦いに、「一戦一戦相手が違うので、一戦必勝と選手も分かっているので気が抜けないですね」と満を持す。最後に、甲子園で初優勝した山梨学院高校について「私も山梨学院高の出身なのでOBとしては私がいる時から強化してあれから長い年月懸けて、長かったなと思いで率直にうれしいですね。山梨からサッカーも含めて全国制覇するというのは山梨県の野球にとってもいいことですね」と快挙を喜んだ。
■試合経過―
山梨学院大は今年、『凡事徹底』をスローガンに掲げた。当たり前のこと(野球以外も含め)を徹底的に行い極めることで大きな結果を生み出せると基礎から見直し練習に取り組む。
試合は、今にも泣きそうな空模様の白鷗大学野球場で予定より1時間遅れで始まった。後攻の山梨学院は、今年度初めて右肩から腕に爽やかなC2Cブルーが彩られた新ユニフォームを着てナインは守備位置に着いた。対戦相手は昨年、春秋と負けている地元作新学院大。山梨学院は安定感が増した中込陽翔(4年)がマウンドに上がった。中込は1回、2回と得点圏に走者を背負いピンチを凌いだものの、4回表、先頭の4番打者の中前打と盗塁で無死二塁。続く5番打者には二前に絶妙なバント安打を決められ無死三塁・一塁と再びピンチを迎えた。しかし、続く打者の犠飛で1点を先制された。山梨学院の攻撃は5回まで相手投手の丁寧にコーナーを突く投球に散発2安打に抑えられた。6回裏、山梨学院の攻撃が始まる頃に雨が激しくなった。22分間の中断を挟んで再開された一死後、9番山口晃(3年)の二飛を相手野手の捕球失策の間に山口は二塁まで進塁。1番野中寿真(2年)の右前打で一死三塁一塁にすると、一打同点の好機に相手投手の一塁牽制を一塁手が後逸、三塁走者の山口が生還、相手の2つの失策で1-1の同点に追いついた。その後、山梨学院は中込の力投、作新学院は継投で互いに譲らぬ同点で迎えた9回裏、山梨学院は4番宮崎一樹(4年)がフルカウントから粘って四球で出塁。続く5番指名打者の山元丈輝(2年)の投前の犠打で走者を二塁に進め、6番野村康太(4年)は死球で一死二塁一塁。一打サヨナラの場面で代打塚越倭斗(4年)が期待を背負って右打席に立った。塚越は2球目の低めの球を浅い守備の中前に運ぶと、二塁走者宮崎が俊足を飛ばし本塁に気迫のヘッドスライディングで飛び込み間一髪セーフ、劇的な1点をもぎ取った。山梨学院は貴重なサヨナラ初戦勝利を飾り上武大、白鷗大打倒を胸に悲願の2度目の優勝に弾みをつけた。
■《4月8日(土)第1節 山梨学院大VS作新学院大 栃木県小山市・白鷗大学野球場》
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 合計 | |
作新学院大 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
山梨学院大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1× | 2 |
◆山梨学院大=打順・守備位置
1.野中寿真(二 2年)2.安川快飛(遊 4年)3.小貝優光(左 3年)4.宮崎一樹(中 4年)
5.山元丈輝(指 2年)6.野村康太(三 4年)7.丹羽淳平(一 4年)8.岩崎 瞭(捕 3年)
9.山口 晃(右 3年)P.中込陽翔(投 4年)
◆バッテリー=(投手)中込陽翔⇒(捕手)岩崎瞭(3年)⇒高岡宗摩(3年)
〔投手〕中込(勝利投手):投球回数9回、打者33、投球数139、被安打9、三振12、四死球0、失点1、自責点1
〔打撃〕安打6、長打(二塁打=野村、山口)、三振5、四球3、死球1
〔交代〕岩崎(捕)⇒H小林寛大(4年)⇒高岡宗摩(捕 3年) 丹羽(一)⇒H塚越倭斗(4年)
■試合後のインタビュー
試合後、須田喜照監督は初戦勝利に「何より勝ったことが一番大事なことで、こういう試合に勝つのと負けるのでは天国と地獄の差があるので、当然チームとしても内容は反省するところはありますが、リーグ戦なので勝ったことでほっとしています」と表情を緩めた。試合の勝因を、「投手の中込は彼らしい気持ちの入った投球で最後まで変える気持ちはなかったですけど、いつも安定したピッチングをしてくれるので今日もよく投げてくれました」と称えた。これからの戦いを、「勝率制なので先を見ずに一戦一戦勝ちにこだわって優勝を目指す」と気を引き締めた。代打でサヨナラ打を打った塚越倭斗選手は「チームが勝てばよいと思っていたので、覚えていないですね」と打席に入った心境を語った。「カットボールだったと思います。刺されてバットが折れながら外野に落ちたという感じです。ぎりぎりだったですけど宮崎のおかげですね」と喜んだ。勝利のホームを踏んだ宮崎一樹選手は「外野が前だったのでボールがショートを越えた時にいいスタートが切れなかったんですけど、三塁コーチャーが手を回したのでホームは頭から帰ろうと思って走りました」と浅い打球に俊足を生かして勝利を引き寄せた。チーム状態について、「去年から出ている選手が多いので経験はあるんですけど、今年はみんなで絶対勝とうという気持ちで盛り上がっているので、初戦で点もなかなか入らない感じでしたが絶対に1本で帰ってやろうという感じでした」と執念のプレーを見せた。初戦の重責を果たした中込陽翔投手は「球は良かったですけど、何回もピンチをつくって力が入る場面が多かったですけど、最後まで投げて1点だけだったことは良かったと思うので、継続してこれ以上いい投球ができるように準備していきたい」と語り、打線がなかなか機能しなかったことに、「自分が打たれている時も逆転してくれたこともあって助けてもらっている分、今日は粘って行こうという気持ちで投げました。今日勝てたのでこれから上武を倒して全勝して優勝したい」と強い気持ちで優勝に向けて投げる。金城英佑主将は「ひやひやした展開ではあったですけど、中込が1点で凌いでくれたのでそれに応えようと野手もベンチも一体になって最後の1点が取り切れたのだと思います。神宮に行くことを目標としているので上武大学や白鷗大学などのライバルチームがある中で全勝しないと難しい優勝を目指して一戦一戦頑張っていきたいと」と語った。新しくなったC2Cブルーの新ユニフォームで勝利を信じ全員野球で戦いに臨む。
翌9日、上武大学野球場で行われた新潟医療福祉大学との第2節、山梨学院はこの日は接戦を落とし1勝1敗とした。次の試合は4月15日、第3節平成国際大学(平成国際大学野球場)、16日第4節は白鷗大学と(白鷗大学野球場)で対戦する。
文(K.F) カメラ・取材(平川大雪) 2023.4.9