●2023レスリングインカレフリースタイル~
~世界選手権組の青柳が74㎏級で、61㎏級小野初優勝~
~準優勝2人、3位は7人と選手層の厚さを印象付ける~
明日のレスリング界を背負う若い力が全国から結集、各階級の頂点を目指す「文部科学大臣杯2023年度全日本学生レスリング選手権大会」(インカレ)が8月26日、神奈川県横須賀アリーナで開幕。29日まで4日間にわたる熱戦が繰り広げられる。男子は前半の2日間はフリースタイルと後半2日間はグレコローマンスタイル、28日は女子フリースタイルという日程で行われ、山梨学院からは、フリースタイルに24人、グレコローマンスタイルに3人、女子フリースタイルに4人がエントリーした。1日目の27日はベスト16までが行われ、山梨学院勢は13人が残り、2日目の27日に優勝を目指した。そのうち61㎏級の小野正之助(2年)、74㎏級の青柳善之輔(4年)が優勝、86㎏級の五十嵐文彌(2年)、125㎏級山田康瑛(3年)が準優勝に輝いた。他にも準決勝で敗れたものの(3位決定戦は行われない)3位に57㎏級勝目大翔(1年)、61㎏級深澤颯太(3年)、65㎏級は、森田魁人(4人)、須田快晴(3年)の二人、70㎏級富田悠真(2年)、74㎏級鈴木大樹(3年)、125㎏級ソヴィィト・アビレイの7人、表彰台には11人が上った。他にも79㎏級で優勝候補だった佐藤匡紀が準々決勝で敗れる波乱や怪我の調整中で棄権した65㎏級の荻野海志(2年)なども選手層の厚さが際立ったフリースタイルだった。
全日本学生レスリング選手権(インカレ)は、日本のレスリング界の明日を担う国内学生レスリング最高峰の大会。ここから数多の選手が世界選手権、オリンピックと世界に羽ばたいていった。今年も全国から多くの若い力が結集、日本一を目指した。大会は、フリースタイル、グレコローマンとも1日目にベスト16までを決め、2日目に準々決勝(ベスト8)から決勝までを争う。山梨学院は、1日目、2日目のフリースタイルに24人が8階級にエントリー、3日目、最終日のグレコローマンスタイルに3人がエントリー。そして、28日の女子フリースタイルに4人がエントリーし、本格的に女子レスリングに力を入れる。
■2日間にわたった男子フリースタイルに11人が3位以上―
26日に行われたフリースタイル1日目、山梨学院から24人がエントリー(内3人が棄権)13人がベスト16に進出。27日、大会2日目に各級の頂上を目指した。試合が進行していく中で、1日目、ベスト16進出者13人、2日目の準決勝進出選手が11人と山梨学院勢が多くを占めた。
◆57㎏級の勝目大翔(1年)は前半を0-3で折り返すも、後半1Pを返し、なおも攻め立てるが敗れた。ベスト4(3位)となった。◆同時に隣のマット行われた61㎏級深澤颯太(3年)は準決勝で同級優勝の小野正之助(2年)に決勝で敗れた選手と対戦したが、Tフォールで敗れ3位となった。決勝戦の小野は、決め手のないまま迎えた前半中盤、素早い動きから2Pを奪うとその流れ相手を押し出し1Pを加えた。後半は互いに一進一退の状態を小野が守り抜き、怪我続きで試合に出られない状態から初めての栄冠を手にした。小野正之助選手は「怪我の影響でずっと落ち込んでいたことが長かったんですけど、それでも努力して手に入れたので良かったです。試合の中での動きはボチボチなんですけど、優勝できたこと自体が何より良かったなと感じています」と久しぶりの実戦に安堵した。これからの目標を「とりあえず1ヶ月後に国体があるのでそれに優勝することが目標です」。将来的には「オリンピックで優勝できる選手になりたい」と大きな夢を膨らました。◆65㎏級の森田魁人(3年)は、優勝を期待できる選手に挙げられて準決勝まで来たが、優勝した選手に不覚を取り、3位に終わった。同じく3位になった須田快晴(3年)は準々決勝まですべてTフォールで勝ち上がる勢いを見せたがやはり準決勝で敗退、3位となった。◆70㎏級冨田悠真(2年)は順調に勝ち上がり、準決勝で善戦したが、優勝した選手に準決勝で敗れた。
■9月にセルビアの世界選手権70㎏級で出場する青柳が74㎏級で登場ー
◆74㎏級鈴木大樹(3年)の快進撃も凄かった。初戦から準々決勝まですべて前半でTフォールかフォール勝ちで勝利。決勝戦までと臨んだ準決勝で青柳と決勝を争った選手に敗れ、涙を飲んだ。決勝戦は、予想通り同士の戦い。前半、緊迫した探り合いで1-1で後半へ続いた。終盤、2-1の僅差でリードした青柳がバッティングでコンタクトが外れたことをアピールするも、審判が気付かずに続行。その隙に相手が一気に逆転。残り時間もわずか、青柳が奇襲に出るとこれが功を奏し同点に追いつき、残り10秒で勝ち越しを決める離れ業をやってのけ、優勝を決めた。試合後、来月、70㎏級で世界選手権を控える青柳善之輔選手は「74㎏級で全国を獲れたのは自分でもびっくりでうれしいです」と照れたように応えた。74㎏での出場はオリンピック採用階級を考えてのこと。奇襲策に話を向けると「コンタクトが外れて逆転されてしまって、時間がないので一か八かで頑張りました」と最後まで優勝にこだわった。来月に控えた世界選手権に向けて、「まだ自分の口から優勝するとは言えないんですけど、意地でも日本人の日の丸を背負って頑張りたい」と誓った。
■続々山梨学院から世界へ。パリオリンピックを現実の目標に捉えてー
10日前のU20世界選手権で銀メダルに輝いた◆86㎏級の五十嵐文彌選手の決勝戦の相手は、最近、名勝負を繰り広げ、昨年この大会を制している実力者。前半中盤、素早い身のこなしからのタックルからバックを取られローリングで6ポイントを奪われると、五十嵐も終盤2ポイント返し2-6で後半に入った。激しい攻防の中、五十嵐が2ポイント加え差を縮めたが、相手に凌がれ4-6、後2点で優勝を逃した。五十嵐文彌選手は「自分の実力は出したけど、相手の方が強かったですね」と潔く相手の強さを認めた。大会には「いつも通りの試合をしました。決勝では夢大さんが進んでくるとは思っていたので、うまかったですね。最初に6点取られてしまい試合を組み立てられてしまいました。何にもできなかった」とライバルをリスペクトした。◆125㎏級の山田康瑛(3年)は2回戦で3連覇を狙う優勝候補の選手を破ると勢いに乗り、決勝まで進んだが決勝で動きの良い留学生に敗れ準優勝に終わった。山田康瑛選手は「自分はメインがグレコローマンでその方が力が入るんですけど、今日の1回目の出頭選手(2戦目で戦った)なんかは2冠してチャンピオンなので勝てるかは心配でしたけど、前に出るとかはできたんですけど、決勝では相手に合わせてしまって、タックルに入られてしまいアンクルでテクニカルフォール負けだったので、一矢も報いることができずに残念でした。自分では情けない試合をしてしまったなと感じています。明日からは誇れる試合をしたいなと思います」と明日の得意なグレコでフリーの上を狙う。同級のソビィット・アビレイも優勝者に準決勝に敗れた。
山梨学院は、優勝者2人、準優勝2人、3位7人が表彰台に上る成績を残し山梨学院の層の厚さを印象づけたが、試合後大会を振り返って小幡邦彦監督は今回のフリースタイルの結果を振り返った。「試合前に最大で6階級ぐらいで優勝できる可能性があったので、ベスト4までに11人位残っていたので、最低でも4つ、5つ狙いたいと思っていたんですけど、思ってた以上の頑張りを見せた者と期待外れでやってきたことが出せなかった者がいて、いいところ悪いところが出た大会でした。2人優勝者が出ましたけど、全く反省点ばかりだった」と物足りなさをにじませた。その中で「普段頑張っている子が結果を出してくれたのでそれが収穫」と地道な努力をたたえた。これから休みに入るが明けてから部員全体で課題に向けると厳しい練習に入る。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2023.8.27