●山学高 秋季関東高校野球県大会3年連続優勝
~序盤のリードを粘る帝京三に会心の一打で引導~
~関東大会2連覇で、選抜優勝旗を全員で返還を目指す~
「第76回秋季関東高校野球山梨県大会」決勝戦が10月1日、山日YBS球場で行われ、山梨学院高が帝京第三高に5-2で勝利、3年連続10回目の優勝を飾った。関東大会には昨日準決勝勝利で13回目の出場を決めている。後攻の山梨学院は1回に1点、2回に2点、3回1点と序盤に4点を入れ優位に立った。これは帝京投手の乱調による四球押し出しやミスが重なったもので、大量得点を奪える好機にあと1本が出ない、もどかしい試合展開に苦しんだ。先発は準々決勝、昨日の準決勝に続き成長著しい櫻田隆誠が決勝のマウンドを託された。連投となった櫻田は、打撃のいい帝京に走者を出すも、3回まで無失点に抑えたが4回に1点を返され、5回にも帝京に強い当たりを打たれるなど、ベンチは流れを変えるため6回からエースナンバーの1年生大友陸を投入した。その大友は130キロ台前半の直球で押すも、2連打と四球で二死満塁にすると後続に左前に運ばれ1点を失った。さらに7回にもピンチを凌いだ山梨学院は、帝京のエースに継投した7回裏、四球とヒットエンドで得点圏に走者を進めると、7番萬場翔太が三塁線を抜く適時二塁打で貴重な追加点を挙げ、5-2とリードを広げた。試合はそのまま山梨学院が帝京を押し切り優勝を成し遂げたが、課題の残る試合となった。吉田監督は言う。「伸びしろしかないチーム。楽しみ」。10月21日開幕の関東大会までに修正を図る。
■決勝戦 序盤、相手の投手の乱調でリードするもー
山梨学院は今大会を、1回戦を富士河口湖高に20-0、2回戦は甲府城西高に7-3、準々決勝日川高戦は4-1、昨日行われた準決勝の駿台甲府戦を8-1で勝利し決勝戦に進んだ。そして、10月1日、秋季関東高校野球県大会決勝戦で対戦するのは準決勝で日本航空高を接戦の末、破った帝京第三高となった。帝京第三高とは、2021年第74回大会決勝戦で対戦しており山梨学院が9-3で勝利を収め、2度目の決勝対決となる。
どんよりした曇り空の下、一塁応援スタンドには山梨学院の野球部員、生徒会、応援団、吹奏楽部、チアリーダー部、保護会など多くが応援に集まった。特に野球部は今年3月の選抜を制覇した3年生部員が駆け付け応援に一役買い、盛り上げた。試合は正午、帝京第三高の先攻で開始された。先発は準々決勝、昨日の準決勝に好投した櫻田隆誠(2年)が決勝のマウンドに上がった。1回表、櫻田は先頭打者にいきなり中前にはじき返されたが後続をきっちり抑えると、その裏、山梨学院は先頭の横山悠(1年)が四球で出塁、2番黒澤后琉(2年)の投手前犠打を送球ミスで生きると、3番高橋英登(1年)が中前打で無死満塁の得点好機をつくった。続く4番梅村団(1年)は昨日の準決勝で勝利に貢献、この打席でも先制点を期待されたが初球を気負い二飛に倒れた。それでも一死満塁に5番山田将吉郎(2年)は四球を選び押し出しで先制した。なおも満塁に6番平野天斗(1年)は痛烈な三ゴロを放つがWプレーに打ち取られ1点で終わった。2回裏には一死から8番櫻田、9番針尾泰地(2年)が四球を選び、2番黒澤が代わった帝京投手から内野安打で二死満塁にすると、次打者3番高橋への3球目を相手投手のワイルドピッチで難なく1点を追加、なおも4番梅村が三塁強襲安打で1点を加え3-0とした。3回裏にも先頭の6番平野が右前打で出塁、続く7番萬場翔太(1年)の打席で相手バッテリーミスと犠打で平野は三塁まで進塁。すると相手投手は続く9番針尾の初球にまたもワイルドピッチで平野が生還、山梨学院は相手投手の乱調で4-0とリードした。しかし、大量得点を狙える好機にあと1本が出ない展開にもどかしさが残る。連投の櫻田は3回表、二死からの連打でピンチを凌ぐも、攻撃力のある帝京に4回に先頭打者への四球から打線をつながれ1点を奪われた。5回にも強い当たりを打たれるなど疲れが見えた投球から失点を阻止するため、6回からエースナンバー1を背負った1年生投手大友陸を投入した。
■終盤、相手の攻撃の流れを、山梨学院らしくつなぐ野球で決着つけるー
大友は1回戦、2回戦を先発、準々決勝では櫻田を救援し8回2/3を投げ3失点の成績を残している。大友は6回、先頭打者を直球で詰まらせ二飛に仕留めるが、続く打者に直球を狙われ右前打を許した。130キロ台前半の直球を中心に力の投球をする大友に、帝京は盗塁と中前打で一死三塁・二塁と攻め立て、さらに四球で二死満塁にすると後続が左前に運び1点を奪った。勢いづいた帝京は7回、先頭打者が二塁打で出塁、手堅く犠打で走者を三塁に進め得点を狙ったが次打者のスクイズがサインミスで走者が動かず山梨学院はまたも相手のミスに助けられた。ピンチを凌いだ山梨学院は、帝京がエースを継投した7回裏、先頭打者の5番山田が四球を選ぶと6番平野が右前にヒットエンドを決め、無死三塁・一塁と好機をつくった。山梨学院は野球部員と3年生を中心にした応援のボルテージは最高潮に達し、7番萬場翔太に大声援を送った。萬場はそれに応え、相手エースの投じた2球目の直球を三塁線を抜く強烈な適時二塁打で貴重な追加点を挙げ、5-2とリードを広げた。大友は8回を三者凡退、9回も内野イレギュラー安打を打たれるも、最後はWプレーで相手の攻撃を抑えた。山梨学院は秋季山梨県大会に3年連続10回目の優勝を飾り、13回目の関東大会を決めた。試合終了後、表彰式が行われ山梨学院に優勝旗などが贈られた。
■決勝戦=山梨学院高校VS帝京第三高校 10月1日・大会11日目 山日YBS球場
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 合計 | |
帝京第三高 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 |
山梨学院高 | 1 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | × | 5 |
■山梨学院高先発メンバー 〇は学年
1.(捕)横山 悠①、2,(中)黒澤后琉②、3,(右)高橋英登①、4.(一)梅村 団①、5.(左)山田将吉郎②、6.(遊)平野天斗①、7.(二)萬場翔太①、8.(投)櫻田隆誠②、9.(三)針尾泰地②
◆山梨学院高バッテリー=櫻田⇒大友 ー[捕手]横山
[投手]櫻田;5回 打者27 投球数76球 被安打5 奪三振2 与四球1 失点1
大友:4回 打者17 投球数48球 被安打5 奪三振1 与四球1 失点1
[打撃] 安打9《二塁打:萬場1》三振2 四球9
[交代]山田(左)⇒(右)、高橋(右)⇒(左)二村仁功②、横山(捕)一⇒梅村(一)捕
■監督、選手の声ー
表彰式後、吉田洸二監督は「消化不良」と開口一番。「でも、このチームがスタートした時、誰がエースで誰が4番かも知れないチームだったので良く頑張ったなと思いますし、1試合、1試合彼らなりに成長したと思っています」と選手の頑張りをたたえた。さらに「伸びしろしかないチームですので楽しみ」と先を見据える。次の関東大会に臨むにあたって「全員で優勝旗を返せたら最高ですね。それを目標にこれから3週間頑張ります」。課題を聞くと、「さっき言った消化不良の言葉。それが課題です」と話した。現場で直接選手を指導する吉田健人部長・コーチは「経験が浅い1年生も多く出ている新メンバーに入れ替わった中では、一からスタートし良く立て直して頑張ったかなと思います」とまずは選手を労った。救援した大友投手がピンチを迎えた場面を、「ピッチャーがああいう大事な場面で投げていくことによって成長していく、練習試合の時とかそこまで荒れないんですけど公式戦の違う雰囲気を体験できたことが大きいですね」。続けて攻撃について、「今日はちょっと消化不良でしたね。良いところまでは作るけど、あと一本がですね。負けられないので基本的に守備を堅く、守備中心でメンバーを組んでいるところなのでここから関東、春、夏に向けてメンバーが入れ替わったりしていくかなと思います」と熾烈な競争が待っている。関東大会に向けて、「去年の子たちが頑張ってくれた優勝旗を全員で返しに行けるチャンスがあるということは、この新チームのスタートからすれば立派ですね。ここから3週間あるのでチーム編成も含めて頑張っていきたい」と選抜出場を目指す。中原義虎主将は「今日は良いところもあったですけど失敗も多く得点に結びつかなかったです。失敗に対してどれほど練習してきたか。仲間を信じていたので焦りはなかったです。打てない中でどうやってランナーを進めるか点を獲るかが大事だと思うんですけど、なかなか1本が出なかったのは反省点として練習していきたいです」と試合を振り返った。関東大会には「まずは次の試合に勝つことが一番です。次の一戦は全力です」と言葉に力を込めた。決勝まで3連続先発を含め23回2/3を3失点に抑え優勝に貢献した櫻田隆誠投手は「今日もいつも通りキャッチャーの構えたところに投げるという意識でそれがしっかりできて5回まで上手くできたかなと思っています。優勝には、ほっとしてうれしいです。3連続先発に対しては、「指導者が使ってくれて期待に応えることができ、しっかり投げきることができ良かったです」とこの日も5回までしっかり試合をつくった。強豪校が多い関東大会に、「しっかり今回のようにいろいろな球種をコントロール良く投げていきたいです」と淡々とした自然体で話した。
山梨学院は10月21日から栃木県で開催される関東大会に山梨県第1代表として出場。前々回準優勝、前回優勝で強豪校と言われる山梨学院高野球部。しかし大会前、吉田監督が「自分が率いてきた中で、一番力がない」という不安なチームが今大会公式戦で一戦ごとに成長する姿に決勝戦後、「伸びしろしかないチーム。楽しみ」と言わしめた。その言葉に可能性を持った選手を育てていく吉田監督の手腕に胸躍らせられる。来春の選抜甲子園で全員が優勝旗を返還する姿を想像するのは早計か。
文(K.F) 写真(平川大雪) 2023.10.2