●山梨学院短大「第44回木犀の会」創立者を偲ぶ
~この日に改めて創立者の「建学の精神」を考える~
~“本物に出会う“真・善・美”を知る芸術鑑賞~
山梨学院短期大学は10月4日、山梨学院創立者・故古屋眞一初代学院長、故古屋喜代子初代学長の建学精神を学ぶ「第44回木犀の会」(もくせいのかい)を山梨学院メモリアルホールで開催した。会の名称は、古屋喜代子学長の忌日が、木犀の香りがただよう頃であったこと、その木犀が謙虚で温かい人柄を偲ばせるものであることから名づけられた。亡くなった翌年1980年から創立者を偲び、その『建学の精神』を訪ねるため毎年この日に行われている。会は第1部・2部からなり、1部は遠藤清香短期大学長が「木犀の会にあたって」と題し、「皆さんの母校の山梨学院短期大学がどのような大学なのか一年に一度皆さんとご一緒に考えさせていただきたい」と語り掛け、創立者が残した教育理念を説いた。講和の最後には「学生のみなさんが、この山梨学院短期大学を母校として智と情と勇気をそなえ、実践を貴んで社会に貢献していかれることを心から願っております」と締めた。引き続き2部として行われた芸術鑑賞は「学生が自らの道を切り開くためには、この世にある“真・善・美”に限りない憧れを持つことが大切。素晴らしい芸術こそが学生に相応しい」という創立者の教えに基づいたもので、この会を芸術鑑賞の日として演奏会など本物に触れる機会を設け、本学独自の文化として育んでいる。今回は尺八、箏の和楽器とチェロのアンサンブルコンサートが催された。和楽器の持つ抒情的な音色とチェロの取り合わせが醸し出す穏やかな調べがホールに響き渡り学生たちは至福の時間を堪能した。
10月4日午前10時。山梨学院メモリアルホールで山梨学院短期大学「第44回木犀の会」。司会進行の竹中麻美子保育科准教授の「秋の訪れを告げる金木犀や銀木犀の花。今年は猛暑の影響からかその素敵な香りにはまだ出会えていませんが、そんな素敵な花の名前がついた行事が今日の『木犀の会』です」の言葉で幕が開いた。会場に集まった食物栄養科137名、保育科245名、専攻科57名、計439名の学生、教職員、来賓を前に、初めに山梨学院短期大学遠藤清香学長が挨拶に立ち、「木犀の会」にあたってと題する講和を行った。
■第一部:「木犀の会」にあたって 山梨学院短期大学長の講和ー
まず、遠藤清香学長は「ここにいらっしゃるみなさんは全員、山梨学院短期大学の学生です。私は、みなさんが大事な青春時代を過ごす場所として、この山梨学院短期大学をお選びなってくださったことを、本当にうれしく感謝しています。・・・みなさんの母校の山梨学院短期大学がどのような大学なのか改めて一年に一度皆さんとご一緒に考えさせていただきたい。そのために設けられた会です」と学生たちに語り始めた。そして、「誰かにあなたの大学の教育理念は何ですかと問われたら、「『智と情と勇気をそなえ、実践を貴んで、社会に貢献する』と・・・。大学では学生のみなさんにこのような人になってほしいと願っているのです」。続けて、創立者の古屋眞一学院長、古屋喜代子初代学長が目指した教育を説いた。二人は終戦直後の甲府の惨状を眼にした時「教育によって祖国日本を再建しよう。この苦難を乗り越えるには若い人の教育しかない、学校をつくろう」と決意し、山梨学院の創設に取り組んだ。「『人間の社会にも、人間自身にも平和と幸せがもたらされていません。今こそ教育について真剣にみなさんと考える時であります。教育によって平和の社会を人々の幸せを実現したい。そのために教育はどうあらねばならないのか』ここで学ぶ皆さんひとり一人が本当の意味で生涯を通じて生活し美しく意義ある人生を全うするために大学はいったい何を目指していくべきなのか考えに考え抜かれて祈るような気持ちで生み出された言葉がこの『智と情と勇気をそなえ、実践を貴んで社会に貢献する』という言葉だったのです」と、創立者の山梨学院創立の強い決意や建学の精神を伝えた。さらに遠藤学長は「この智と情・勇気は賢く・優しく・強くという言葉で言い換えられてきました。現在の学生の皆さんにも日々の生活の中でこの言葉を大切にしていっていただきたいと思っています」と述べた。
また、「木犀の会」の発足の由来について話が進められた。建学の精神を訪ねることと、「学生が自らの道を切り開くには、この世にある、あらゆる“真・善・美”に対し、限りない憧れを持つことが大切。そして本物の素晴らしい芸術こそが学生に相応しい」という初代学長の教えから、この日を芸術鑑賞の日としていることを説明した。遠藤学長は講和の最後に、「この日に創立者を偲び、その建学の精神を訪ねるためにこの『木犀の会』を行っています。51号館の裏の金木犀の匂いを嗅いでください。親愛なる学生の皆さんが、この山梨学院短期大学を母校として智と情と勇気をそなえ、実践を貴んで社会に貢献していかれることを心から願っております。『かしこく・やさしく・つよく』」と講和を締めた。
■第2部コンサート:これまでのコンサートと一味違う世界を堪能ー
第2部の芸術鑑賞は、これまでの「木犀の会」では初めとなる尺八・箏の和楽器とチェロの和洋楽器編成による「アンサンブル紫音」のコンサートが開かれた。メンバーはブラジル人で尺八の渕上ラファエル広志氏、日本人の箏奏者の第一人者・松浪千紫氏、韓国出身でソリストとしてベルリン交響楽団と共演など幅広く活動するチェロの朴賢娥氏の3人。それぞれがソリストして活動する実力者が3種の楽器の特性を活かしたオリジナルアレンジでクラッシックから映画音楽、ポップスなどジャンルを越えた様々な音楽をレパートリーにしている。「アンサンブル紫音」が織りなすハーモニーは唯一無二と好評を博し、これまでの出演コンサートは多岐にわたっている。
◆この日の曲目は、前半はクラッシックと日本の曲で構成された。
初めの2曲を❖モーツアルト作曲の「フィガロの結婚」より。❖ビゼー作曲の「カルメン」より。よく知られた歌劇の挿入曲を合奏。❖尺八独奏による伝統曲「山越」。❖箏独奏の宮城道雄作曲「ロンドンの夜の雨」。❖尺八と箏で彩り豊かな風の表情を描いた合奏曲「風の歌」。チェロ独奏でカサド作曲「無伴奏チェロ組曲」。❖前半最後の曲は出演者の一人、松浪千紫氏がトリオのために作曲した「Precious Pieces」。箏から始まりチェロがピチカートで合流、さらに尺八が加わり、夏に訪れた地での思い出が描かれた爽やか曲。
◆後半は、世界各地の曲が演奏され、❖アルゼンチンタンゴ。❖韓国の「アリラン」。❖秋の日本童謡メドレー「もみじ・虫の声、夕焼け小焼け・里の秋・村祭り」。❖ブラジルのボサノバ「イパネマの娘」。最後はアルゼンチンの著名な作曲家ピアソラの代表曲「リベルタンゴ」と和洋楽器で自由にジャンルを越えた曲を演奏してみせた。箏の硬質な音色とチェロの豊かな表情、尺八の素朴な音が融合し、会場をやさしさで満たした。演奏終了後、学生を代表して3人の学生が出演者に花束を贈呈、会場からは大きな拍手が起こった。
■「木犀の会」終了後、食物栄養科、保育科の代表から話を聞いたー
会の終了後、卒業後はパティシエを目指すという食物栄養科パティシエコース2年・中島千陽さんは今年のコンサートを「珍しい組み合わせの演奏でやわらかい音色の中にも力強い迫力ある響きでした。いつも聞いている曲とはジャンルの違う曲を聴くことができてとても刺激的で有意義な時間でした」。ブラジル人尺八奏者について、「フルートを専攻した後、尺八に転向するなど新しいことに挑戦したり、その道を究めることはとても難しく勇気のいることだと思うんですけど、私も新しいことを恐れずにたくさんの経験を積み重ねて成長していきたい」と一流人の体験に力を得た。これまでの学校生活では、「国家試験の勉強を毎日のようにしてきて、知識も身につき周りとも高め合ってすごい賢くなったという気もしますし、短大に入ってからボランティアをすることが多くなり他の人と触れ合ったり、気持ちの優しさやアルバイトなど自分で積極的に行動する強さとか、自分の意志の強さを身につけることのできる1年半だった」と教育理念を体験してきた。保育科2年・藤巻和花さんは「昨年もこの会に参加して1年に1度お話を聞くと、自分たちが学んでいることや、目指しているところを改めて考える良い機会になります。私は専攻科に行く予定ですけど、専攻科に向けて新たに気の引き締まるというか、この保育科ではあと半年しかないということを今日、学長先生の話を聞き、また頑張っていこうと思う」と身を正した。実践を貴ぶという教えには、「授業で友達とかを相手に模擬授業をやったりするんですけど、実際に園に行き目で見て自分で前に立ってやることとは勝手が違っていて、友達がするのと子どもたちがリアクションしてくれるのではやはり全然違うので、毎回行くごとに何回も考えさせられ、自身の学びの深さが感じられる」と実践の大切さを実感している。藤巻さんは保育の学びをさらに深めようと専攻科であと2年頑張る。コンサートを聴いて「私は元々、長いこと吹奏楽で金管楽器をやっていたので生の音楽を聴くことは何度もあったんですけど、和楽器や弦楽器は管楽器とは違うので、西洋の楽器と和楽器が合わさった時の音がすごくきれいな音で貴重な体験でした」とまた、ひとつ新しい本物との出会いがあった。
「かしこく、やさしく、強く」。いつの時代にも変わらぬ創立者二人の願いが引き継がれるように。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2023.10.5