●秋季関東高校野球大会 山学高の決勝・準決勝戦
~櫻田連投の疲れもあり作新打線に力尽くも準優勝に貢献~
~準決勝、健大高崎に終盤、3度目の粘り野球で逆転勝ち~
熱戦が繰り広げられてきた2023年度「第76回秋季関東地区高校野球大会」が10月29日、作新学院高(栃木1位)の優勝で閉幕した。2連覇を目指した山梨学院は、残念ながら作新に屈し準優勝となったが、ここまでの戦いぶりは目を見張るものがあった。1回戦を埼玉2位の昌平高に11回タイブレーク2-1で勝利、2回戦準々決勝は神奈川1位の桐光学園高に2試合連続の11回タイブレークの末、4-2と薄氷を踏む思いで接戦を制した。28日、前日の準決勝、健大高崎戦には6回まで1-2でリードされるも、7回に相手の守備ミスを見逃さず1点を返し同点にすると、9番針尾の勝ち越し打で3-2と逆転、しぶとい粘りで勝利を収めた。3試合いずれも最後まで勝利を諦めない執念で決勝戦に勝ち進んだ。決勝戦は、初回に1点を獲り合い、この試合も拮抗した戦いに、と思われたが作新の打撃力に苦しめられた。6回まで18安打3失点で何とか凌いできたが、4回救援した櫻田は、この大会これまで3試合に好投してきたが、7回、耐えきれずに集中打を浴び6失点、その後も救援投手が得点を重ねられまさかの4-13と大差をつけられ準優勝でこの大会を終えた。この結果、来春の選抜甲子園にはほぼ出場は確定し、「全員で選抜優勝旗を返還」という目標は叶えられそうだ。
■決勝戦結果 山梨学院、作新打線に完敗。準優勝にー
決勝戦の作新学院高校とは今年の春の選抜甲子園で準々決勝で戦い12-3で勝利し、初の全国制覇を引寄せた。この試合で2連覇し、堂々と「全員で優勝旗を返還」することを目標にして試合に臨んだ。
決勝戦は29日、栃木県総合運動公園野球場で地元作新高を応援する多くの観客が見守る中、午前10時試合は開始された。後攻の山梨学院・津島悠翔(1年)が前日の準決勝に続き先発のマウンドを託された。1回表、津島は先頭打者を二塁打で出塁させると、後続の敵時打で1点を先行された。山梨学院もその裏、先頭の黒澤后琉(2年)の安打と犠打、暴投、四球と相手投手の乱れを4番梅村団(1年)がきっちり犠飛でつなぎ同点にした。しかし先発の津島の立ち上がりが悪く、2回途中から救援した大友陸(1年)もピリッとせず4回からエース櫻田隆誠(2年)を投入した。1点差の5回裏、相手投手が代わった山梨学院の攻撃、一死から準決勝で同点と逆転打で打の殊勲者コンビ、8番櫻田の二塁打と9番針尾泰地(2年)の左前打で三塁・一塁とするが続く黒澤の投ゴロでWプレーで好機を逸した。ここでの無得点が潮目となったか、いつもより苦しんでいる櫻田は6回表に1点失い再び2点差に。しかし、山梨学院もその裏、一死二塁から4番櫻田の左越えの二塁打で1点を返し2-3。山梨学院投手陣は作新の強力打線に6回までに18安打3失点と何とか最少失点差で凌ぐも、櫻田は連投の疲れもあり7回、先頭打者から堰を切ったように打ち込まれ7連続安打と集中打を浴びで4失点を喫し、この試合初登板の山岸翔輝(1年)に救援を仰いだが、さらに2点を加えられこの回6失点。その後も作新打線の勢いは止まらず4得点を重ね、山梨学院は4-13とまさかの大差で完敗した。作新は地元開催の大会に7年ぶりの優勝を果たした。
◆決勝 山梨学院高VS作新学院高 10/29(日) 栃木県総合運動公園野球場
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 合計 | |
作新学院高 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 6 | 3 | 1 | 13 |
山梨学院高 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 1 | 4 |
■山梨学院高先発メンバー(登録メンバーは2年生8人、1年生12人) 〇は学年
1.(中)黒澤后琉②、2.(左)山田将吉郎②、3,(右)河内佑樹②、4.(一)梅村 団①、5(捕)横山 悠①、6.(遊)平野天斗①、7.(二)萬場翔太①、8.(投)津島悠翔①、9.(三)針尾泰地②
◆山梨学院高バッテリー=津島⇒大友⇒櫻田⇒山岸 ー[捕手]横山
[投手]津島:1回2/3 打者8 投球数32 被安打4 奪三振1 与四球0 自責点1
大友:1回1/3 打者6 投球数16 被安打3 奪三振1 与四球0 自責点1
櫻田:3回1/3 打者22 投球数70 被安打13 奪三振2 与四球1 自責点7
山岸:2回2/3 打者15 投球数40 被安打8 奪三振0 与四球0 自責点4
[打撃] 安打:9(長打:二塁打=櫻田、鳴海、田村)、三振4、四球2
[交代]萬場(二)⇒(H・右)鳴海柚莱①⇒(二)岩城敦仁①⇒(H)宮川真聖①⇒(二)手塚悠慎②、平野⇒(H)田村颯丈郎①、山岸⇒(H)中原義虎②
試合後、この大会、好投してきた制球力のいい櫻田隆誠投手は「ボール先行でストライクを取りに行ったボールも、いいボールも打たれた。力不足です」と下を向いた。この冬を乗り越え選抜ではどのような投球をするか、「関東で出た課題をしっかり潰して、甲子園では成長した言われるピッチャーになる」と前を見据えた。吉田洸二監督は「今日、負けはしましたけど、試合を見て改めて思ったのは、すごく3試合頑張ったなと感じました。これで満足してないと言ったら罰が当たります。もう300点です」と選手を労い、笑顔で応えた。大会を通じて、「失点が少なかったです。今日は別ですけど。前も言いましたけど、『楽しみと伸びしろしかありません』。やりがいが大です」と、冬のトレーニングに成長を懸ける。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2023.10.29
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■28日準決勝。健大高崎戦に終盤に勝ち越し逆転ー
午前10時に始まる予定の第1試合、作新学院高と常総学院高の一戦が早朝からの雷雨による荒天で3時間余り遅れ、開始したのが13時過ぎ、終了は15時30分を回った。16時、会場の栃木県総合運動公園野球場のナイター照明が点灯し、山梨学院の第2試合は16時20分過ぎから始まった。相手の健大高崎高は2019年秋季大会決勝で対戦。山梨学院は0-3で敗れ準優勝。2022年、前回大会では同じ準決勝で当たり5-2で勝利した。2年連続の対戦である。
先攻の山梨学院は3回表、二死から9番針尾泰地(2年)の三塁打を1番黒澤后琉(2年)の適時打で1点を先制した。山梨学院、今回大会初のマウンドに上がった津島悠翔(1年)が先発。2回裏、健大高崎の攻撃。一死三塁・一塁のピンチを切り抜けたが、3回裏二死から二塁打、暴投、2連続四球の満塁になると、ベンチはすかさず1回戦、2回戦を11回タイブレークで完投した守護神・櫻田隆誠(2年)にマウンドを託した。しかし、代わりばなストライクを取りに行った3球目を中前にはじき返され2点適時打で逆転された。その後、4回から6回まで初回から140キロ台の直球で押す健大高崎の投手と安定した投球の櫻田との投手戦で迎えた7回表、山梨学院は四球、犠打で二死二塁の場面、8番櫻田の打球は左中間の浅い飛球となったが相手外野手が譲り合う連携ミスから、二塁走者の河内佑樹(2年)が一気に本塁を走り抜け同点とすると、9番針尾が左前適時打で逆転に成功。針尾は準々決勝の11回タイブレークで勝ち越し打を放っており、この試合でもラッキーボーイになった。健大高崎は8回裏、先頭打者が二塁打、次打者の犠打を捕手の横山悠(1年)がファインプレーで阻止、このプレーが櫻田を救った。9回にも先頭打者を出すが、山梨学院の野手の堅い守備と櫻田の粘る強い投球で切り抜け、3-2で勝利。決勝進出を決め、選抜出場を確実なものとした。
◆準決勝 山梨学院高VS健大高崎高 10/28(土) 栃木県総合運動公園野球場
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 合計 | |
山梨学院高 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 3 |
健大高崎高 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
■山梨学院高先発メンバー 〇は学年
1.(中)黒澤后琉②、2.(捕)横山 悠①、3,(右)鳴海柚莱①、4.(一)梅村 団①、5(左)河内佑樹②、6.(遊)平野天斗①、7.(二)萬場翔太①、8.(投)津島悠翔①、9.(三)針尾泰地②
◆山梨学院高バッテリー=津島⇒櫻田隆誠 ー[捕手]横山
[投手]津島:2回2/3 打者13 投球数45 被安打4 奪三振0 与四球2 自責点2 櫻田:6回1/3 打者23 投球数100 被安打4 奪三振2 与四球2 自責点0
[打撃] 安打:5(長打:三塁打=針尾、二塁打=櫻田)、三振9、四球4
[交代]鳴海(右)⇒(右・左)河内⇒(左)山田将吉郎②、萬場(二)⇒(H)中原義虎②⇒(二)岩城敦仁①、(右)河内⇒(左)二村仁功②、
■コーチ、選手の声ー
試合後、吉田健人部長・コーチは笑顔で開口一番。「運がいいだけです」と謙遜した。続けて、「去年とは違う粘りが出ています。去年はワンサイド、今年は粘ってという形ができて試合ごとに成長をしているのでいいですね。ここまで来たら連覇。あと一つ頑張りたい」と明日の一戦に気を引き締めた。針尾泰地選手中原義虎主将は連日の接戦勝利に「日々の細かい練習が活きました。それと父兄の方々や学校のたくさんの人たちが応援してくれているので負けたくないという気持ちを奮い立たせてくれました」と周りの応援を力とした。準々決勝に続きこの試合も勝ち越し打を決めた針尾泰地選手は、先制のきっかけをつくった1打席目の三塁打を振り返り「ツーストライクに追い込められていたので何とか食らい付こうという気持ちでバット出したら飛んでくれました」と笑みを見せ、7回の逆転打には「運があるんだなと思いました。前の打席の櫻田が同点にしたので、このチャンスを無駄にしないようにバットを振りました」と話した。決勝に向けて、「自分たちは守備、走塁に力を入れているのでミスなく守備からリズムを作って攻撃につなげたい」と勝利を誓った。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2023.10.28