●中国語教育国際シンポジウム
~『日本における中国語教育の現状と展望』を考える~
~中国語教育の第一線で活躍する専門家が意見を交わす~
中国語教育国際シンポジウムが11月11日、山梨学院大学孔子学院、西安交通大学の主催、山学大グローバルラーニングセンター(GLC)の共催により、山学大を会場に開催された。本シンポジウムでは第一線で活躍する中国語教育の専門家を招き、日本での中国語学習者のモチベーションをどのようにして向上させ、多様な教育対象に対して効果的に中国語を身に着けさせることができるかといった課題について、それぞれの教育研究成果の報告と併せて意見を交わすことで、この課題を解決し、日本の中国語教育の水準をさらに向上させ、相互連携を強めることを目的として開催された。基調講演では「日本におけるICTを活用した中国語教育の現在地と未来」をテーマに氷野善寛中国語教育学会会長による講演が行われ、第1セッションでは「中国語教育における現状及び教育理念」をテーマに西安交通大学国際教育学院の李馨郁准教授、東海大学語学教育センターの森山美紀子教授から発表があり、第2セッションでは「中国語教育における教授法及び実践報告」をテーマに西北大学国際教育学院の楊煜准教授と山学大孔子学院教員の根岸深雪先生、山学大GLCの劉頌浩教授から発表があった。対面とオンラインにより合計約50名が参加し、講演と発表後にはディスカッションが行われ、参加者、登壇者ともに中国語を「どう学ぶか」「なぜ学ぶか」について深く考える時間となった。
本シンポジウムは山学大グローバルラーニングセンターの張立波特任准教授の総合司会で進められ、開会の挨拶では山学大の青山貴子学長が「山学大キャンパスに中国からの留学生が年々増えており、日本人学生にとっても中国語は身近な言語となりつつあり、山学高の進学コースでは中国語が英語と並ぶ必修科目となっており、山学高から本学に進学してくる学生には中国語の入門学習を経験している方も増えてきています。日本語話者の外国語修得において、中国語学習は英語学習と比べると未だに効果的な学習方法の研究や知見が十分に広く知れ渡っていないように感じているので、今回のシンポジウムは非常に有益な場になるのではないかと期待しています」と山学大における中国語教育や本シンポジウムの重要性を述べた。西安交通大学国際教育学院の温広瑞院長は「本日、私たちは山梨に集まり、日本における中国語教育をどのように推進し、新たな進歩や成果を達成するかについて話し合います。それは大きな意味があることです。皆様の斬新な発想と知恵によって、日中文化交流と相互学習、教育分野における日中協力の促進に貢献できると信じています」と本シンポジウムへの期待を語った。山学大孔子学院の熊達雲院長(日本側)からは本シンポジウムについて、「①本孔子学院の教育の質を高める、②中国語の学習・教育方針や教育方法の総括及び改善、③山学大と西安交通大学の交流を更に緊密にし、本孔子学院の業務を向上させる」と3つの趣旨を述べた。
基調講演は中国語教育学会の氷野善寛会長から「日本におけるICTを活用した中国語教育の現在地と未来」をテーマに、100年前には最先端であった音声・画像を用いた中国語教育の創意工夫や、現代の生成AIを活用した教材等の最新事例をお話頂いた。
第1セッションは「中国語教育における現状及び教育理念」をテーマに、西安交通大学国際教育学院の李馨郁准教授から「国際中国教育における教育理念と教授法」の報告と、東海大学語学教育センターの森山美紀子教授から「学習者・教師・教育環境の特性を生かす中国語教育を目指して」の報告があった。
第2セッションは「中国語教育における教授法及び実践報告」をテーマに、西北大学国際教育学院の楊煜准教授から「専門表現のローカリゼーション」の報告と、山学大孔子学院教員の根岸深雪先生から「山梨学院高等学校における中国語教育の現状と模索」の報告、山学大GLCの劉頌浩教授から「山梨学委員大学ダブルディグリープログラムについて」の報告があった。
全てのセッションが終わった後は、参加者による質疑応答があり、IC学習データの活用方法や中国語と日本語学習における共通点の活かし方などについて、参加者と専門家が意見を交わし、山梨大学総合研究部の町田茂准教授からは「相手の言語を話す経験が、相手のことや文化を理解することに繋がる」という言語学習の目的についての示唆があった。
シンポジウムの最後には山学大GLCの齊藤眞美センター長からGLCの教育理念について説明があり、閉会挨拶では山学大孔子学院の趙蔚青院長(中国側)は「本日のシンポジウムでは、中国語教育の第一人者の諸先生方から教育研究成果を共有頂くことで、中国語教育について更に深く考え、意見を交わすことができたのではないでしょうか。このことは今後の日本で中国語教育の発展を促進するための大きな知恵と力になると信じています」と締め括った。
本シンポジウムには約50名が対面とオンラインで参加し、約5時間に渡るシンポジウムの中で、中国語をどのように学ぶか、何を目的に学ぶかについて深く考える機会となった。
文・カメラ(R.K) 2023.11.11