●第49回全日本大学レスリング選手権大会2日目
~山学準優勝 今回も日体の牙城を崩せずも、僅差の2点差~
~2番手、3番手が成長、総合力で優勝を目指す~
全国大学30校が集まりフリースタイル日本一を決める「第49回内閣総理大臣杯全日本大学レスリング選手権大会」2日目が11月19日、大阪府堺市金岡公園体育館で行われた。個人の成績ポイントによる大学対抗戦で争われる大会は1日目で10階級の準決勝までが決まり、2日目に敗者復活戦、5位、3位決定戦後に決勝戦が行われた。山梨学院は1日目を終え、8階級中6階級で決勝に進出したのに対し5階級進出で4連覇を狙う日体大との事実上の一騎打ちとなった。数字上は山学大が優位に立つも、緊張感を持って挑んだ。午後1時から始まる決勝戦の前に行われた3位決定戦で留学生ソヴィット・アビレイが3位を決め、対抗得点獲得に貢献。決勝戦は軽量級から順に行われ、最初の57㎏級で優勝候補の日体大選手が敗れ、さらに流れが山学大に傾くかに見えた。続く61㎏級、65㎏級は日体大との直接対決。いずれかに勝利すれば優勝はほぼ手中と思われたが、ともに敗退。次の70㎏級では青柳善の輔の勝利で持ち直すも、優勝の行方は混沌とした。山学大は、残る3人であと1勝を目指したが、74㎏級の鈴木大樹、86㎏級の佐藤匡記は日体大選手に惜敗し、山学大は1勝4敗、日体大は3勝1敗。残る一人97㎏級の五十嵐文彌が勝利すれば優勝となる最大の山場を迎えたが、五十嵐は対戦相手の日大選手に接戦の末、敗れ山学大は対抗得点2点差で4年ぶりの優勝を逃した。日体大のここぞという時の経験値差が出た敗退だった。
8階級の個人成績ポイントの大学対抗得点の合計で争われる大会2日目。1日目に準決勝まで行われ、決勝に進出したのは山学大6階級、日体大が5階級、他に日大、育英大が2階級、早稲田大、明大、大東大、拓殖大、帝産山大が各1階級。実質、山学大と日体大との一騎打ちで優勝を競った。山学大が優勝すれば4年ぶり7回目、日体大であれば4年連続24回目となる。
■大会2日目 3位決定戦、決勝戦ー
◆決勝戦前に行われた3位決定戦。
125㎏級ソヴィット・アビレイ(2年)は2日目の決勝で優勝した育英大の留学生に1日目の準々決勝で5-6で敗れ3位決定戦に回った。試合は、最重量級の試合とあって力のこもった戦いになった前半、アビレイが圧力を掛けコーションにより1-0で折り返し、後半にもアビレイが1ポイントを加え2-0。終盤、相手が挽回しようと積極的になりアビレイがコーションを奪われた2-1となったが、そのまま逃げ切り勝利。3位となり、対抗得点獲得に貢献した。ソヴィット・アビレイ選手は3位になったことについて「セミファイナルの試合がちょっと悔しいです。もっと上に行きたかった。ネックストの試合に頑張ります」と答えた。
◆61㎏級須田宝(1年)は正選手の小野正之助(2年)の副選手として登録されたが、小野が大会直前腰の故障で離脱、急遽代役を担うと地力を発揮、決勝に駆け上った。決勝の相手は日体大の優勝候補選手。前半、立ち上がり早々、攻撃を受けコーションでポイントを奪われると、さらに大技で4ポイントを失い、続けての大技で0-8とリードされた。1ポイントを返えし、1-8で後半に入ると、攻勢を仕掛け積極的に渡り合うも、カウンターでポイントかと思われた場面で相手に返され2ポイントを奪われ(チャレンジ不成立)1-10で敗れた。
◆65㎏級の荻野海志(2年)は闘志を燃やしていた。荻野は前回大会にこの階級で優勝を果たしたが、今大会に優勝候補の日体大清岡幸太郎(4年)の棄権で得た勝利にきっちり真の優勝者になるためにこの一戦に臨んだ。試合は互いに俊敏な動きで相手に圧力を掛けあうが前半は0-0で折り返した。後半、荻野が先にコーションでポイントを奪われリードされ攻勢をかけるも、相手のガード堅くなかなか中に飛び込めずに息詰まる時間が過ぎていく。終盤、荻野も積極的に攻撃を仕掛けポイントを返すも、そのまま逃げられ1-2と悔いが残る試合となった。ここで山学大は日体大との直接対決で2戦連敗し形勢は危うくなった。
◆70㎏級青柳善の輔(4年)がマットに上がった。青柳は世界選手権に出場して、安定感がより増し、試合運びに風格が感じられるようになった。開始早々、相手選手(育英大)にうかつにも投げられ2ポイントを先制されるが、落ち着いた取り口で徐々に挽回、前半を2-2で後半に折り返した。またも、早い時間にポイントを失い再びリードされるも、中盤から攻撃の精度を上げ、一気に逆転し、7-4で貫録勝ち。青柳は2連覇を飾り、決勝戦でのチーム1勝を挙げ、日体大との形勢を戻した。
◆74㎏級鈴木大樹(3年)は早大選手と対戦。試合は立ち上がりから相手の速攻に防戦、序盤に6ポイントをリードされた。その後は落ち着きを取り戻し、一進一退が続いた。後半、徐々にペースを奪い攻勢を掛け4-6とポイントを挙げて、さらに終了間際ラストポイントを狙って仕掛けるもカウンターからポイントを奪われ4-8で敗れた。
◆86㎏級佐藤匡記(4年)の本来の階級は74㎏級だが、チーム事情からこの大会2階級上げて戦ってきた。決勝の相手は本来86㎏級で戦う五十嵐のライバル日大の高橋夢大。今年の全日本学生選手権(インカレ)で優勝を飾っている。前半、膠着状態が続いた2分、佐藤はバックを取られ2ポイントを先制される。後半に入って、攻勢を仕掛ける佐藤に対して高橋堅いガードでかわした。佐藤は時間が無くなりなおも攻める中、カウンターで倒されポイントを奪われ0-4で敗退した。佐藤は「最後、ワンチャンスを狙っていたんですがそれが決まらなく悔しい」と話した。
◆97㎏級㎏五十嵐文彌(2年)はチームが1勝4敗と後がなくなった中、山学大最後の決勝戦に登場。相手は日大の強豪吉田アラシ(2年)と対戦した。五十嵐が勝利すれば山学大が優勝、吉田が勝てば日体大が僅差で優勝する山場を迎えた。前半立ち上がりから吉田は五十嵐に圧力を掛け、その中で隙を見て足をとり五十嵐が先制、3-0とリード。終盤にも相手の攻撃をカウンターで投げを決めポイントと思われるも、その前に五十嵐の足が先に出たと逆に1ポイントを失った。この判定が流れを変えた。3-1で後半に入ると激しい攻防が展開するが主導権を握った吉田が攻勢を強め3-5と逆転。健闘するも無念の敗退を喫した。
この一戦まで優勝の行方が分からなかった勝負も、山学大の敗北で日体大が得点を2点上回り4年連続24回目の優勝を飾った。
試合終了後、五十嵐文彌選手は4年ぶりに優勝が懸かる一戦に、「実力差があるので手管れないように、ポイントだけは取ろうという気持ちで臨みました。あの3点はたまたまの3点だったので実質ゼロですね。最後、自分が勝っていれば優勝でしたよね。チームの皆に申し訳ないです」と唇を噛んだ。さらに「準決勝までは相手が年下の選手だったので勝って当たり前だったですけど、大事なところで勝てなかったです。アラシが強かったです」と素直に敗北を認めた。青柳主将と学生最後の団体戦に出場した佐藤匡記選手は「自分が4年生になってからリーグ戦も今回もそうなんですけど、自分が勝てなかったことで今回も負けてしまって、最高学年として情けないなく、ちゃんと最後に優勝したかったので悔しいです」と後悔を残した。4年間で良い思い出は、「良くも悪くも、今回戦った4年生の団体戦がチームで戦ったという気がして、高校まで自分は団体戦に出たことがなかったので新鮮さも、楽しさもあって、リーグ戦ならではの緊張感もあって、それが一番いい思い出です」と笑顔になった。主将の青柳善の輔選手は「総合力の差が結果に出ました。57と61はサブの副選手だったので正選手がしっかり仕事を果たしていれば結果も変わっていた可能性もあったと思うので来年は総合力に期待したいところです。個人的にはしっかり優勝できて、ひとまずは良かったんですけど、団体は勝ってないので悔しい気持ちは強いですね。自分はこれからもレスリングは続けるのでもっともっと練習してレスリングは奥が深いので。高めていきたい」とさらに上を目指す。大学時代の思い出として「大学での大きい舞台で1位、2位を争う経験ができたのは、これからの人生の中でもこのような緊張感を持つことは少ないですし、良い人生経験ができたなと思います」と新たな一歩を踏み出す。
小幡邦彦監督は「こういう展開にはなると思っていたので、勝負所でしっかり勝ちきれなかったのはうちの敗因で、そこをしっかり勝ちきったのは日体大の底力だと思うので、昔からの王者でプライドもあったと思うので向こうの意地を見せつけられたなと思います。出た選手は持っている力は出してくれたのでこの悔しさを来年に向けて頑張ってもらいたい」と語った。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2023.11.19
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