●関東大学サッカーリーグ1部参入戦 山学大悲願の昇格ならず
~早い時間の失点が最後まで響き、中大に0-1で敗れる~
~1部の厚い壁を実感、さらなる強化を今後に活かす~
2023年度「関東大学サッカーリーグ1部参入プレーオフ決定戦」が12月2日、千葉県・ブリオベッカ浦安競技場で行われた。今季、関東大学サッカーリーグ2部に昇格した山梨学院大はリーグ戦を3位で通過。僅か1年で1部参入の出場権を得て、1部10位の中央大と対戦した。序盤7分、山学は中大の左サイドからのペナルティエリア中央へのパスボールを手薄になったディフェンスの間隙を押し込まれ先制点を許した。山学も11分、ロングボールが前線に通り#15MF岡澤韻生がいいタイミングのシュートも、枠を外し同点機を逃した。このプレーを機に中大が豊富な運動量でボールを保持してから前線へのプレスや左右のサイド攻撃で主導権を握り山学ゴールを脅かした。前半を0-1で折り返すと、立ち上がり山学が守備を起点に攻勢を掛け、何度かロングボールで前線を走らせ攻撃のリズムを掴み掛けるも、決定力に欠け得点好機を逸した。それでもボールが回るようになった山学は中盤、CKからのセットプレーで相手ゴールを脅かしたがGKの好プレーによって阻止されるなどゴールが遠い。中大も前線のスピードある攻撃に手を焼く山学のファールによるFKのセットプレーで再三ゴールを狙ったが、山学の粘り強いディフェンスがシュートを阻止した。その後も互いの激しい攻防が続いたが、山学は前半の早い時間帯の先制点が重くのしかかり0-1で敗れ、1部の厚い壁に阻まれた。悲願の昇格は来年に持ち越された。
■山梨学院大サッカー部男子、関東大学サッカー大会までの経緯―
山梨学院大学サッカー部は2008年創部。翌年の2009年に強化育成クラブに指定され、東京都大学サッカー連盟に所属、関東大学サッカーリーグ1部を目標にスタートした。2010年に東京都大学サッカーリーグ2部優勝1部昇格し、2011年2位と躍進した。関東大学サッカーリーグ2部参入戦決定戦に初挑戦するもならず、その後も2013年、2019年、2020年と挑戦は続くがいずれもはねのけられた。そして2022年、5回目の挑戦でようやく関東大学サッカー大会グループAを1位通過し、関東大学サッカーリーグ2部に念願の昇格を果たした。そして、今季リーグ戦前期に7勝3分4敗、後期には新しく完成した山梨学院川田ツインサッカー場のホームゲームを4勝3分1敗の好成績で通算11勝6分5敗で3位(1位、2位は自動昇格)となり、1部参入戦の出場権を僅か1年で獲得した。
■1部参入戦、伝統校中央大学と対戦ー
1部参入戦の対戦相手は創部90余年の伝統を誇る中央大学。これまでにオリンピックやW杯日本代表、Jリーグ選手を輩出するなど、大学サッカー界を牽引してきた。2008年全日本大学選手権で優勝、2011年には関東大学サッカーリーグ1部準優勝、近年では2019年に全日本大学選手権でベスト4を果たし、2018年、2022年に関東大学サッカーリーグ2部で優勝と実績を残すも、今季リーグ1部では12チーム中10位となり1部参入プレーオフ決定戦に回った。
■前半、序盤の痛恨の失点が最後までー
試合は、快晴の千葉県浦安市・ブリオベッカ浦安競技場で午後2時、山梨学院のキックオフで開始された。立ち上がり5分、山学#15MF岡澤韻生(3年)が両チーム初のシュートを放つが相手GKの正面、しっかり抑えられた。その直後、中大は左サイドからのペナルティエリア中央へのパスボールを手薄になったディフェンスの間隙を突いて#18FWがゴール右隅に押し込み先制した。山学も11分、ロングボールが前線に通り、またも#15岡澤がいいタイミングのシュートも、枠を外し同点機を逃した。最終ラインを引いて守ることからカウンターで攻め上がる山学に対して、中大は豊富な運動量でボールを保持してから前線へのプレスや左右のサイドアタックで主導権を握った。ボールを支配する中大に山学はFKを与える場面が多くなり、セットプレーで山学ゴールを脅かした。何とか凌いだ終盤、ペナルティエリア付近からの直接FKに相手GKのファインセーブ、続くCKでのゴール前の好機にも攻撃を阻まれ惜しくも得点できずに前半を0-1で終えた。
■後半、2点を奪うため反撃するもー
1部昇格には同点は許されず、勝利しかない山学は後半立ち上がり守備を起点に攻勢を掛けた。何度かロングボールで前線を走らせ攻撃のリズムを掴み掛けるも、決定力に欠け好機を逸した。それでも細かいパス回しもスムーズに機能するようになると、山学のボール保持力も高くなり相手スペースに攻め込み一進一退の攻防が続いた。中盤17分、右CKを#28MF石本勝悟(1年)のキックしたボールは直接ゴールに向かい良い軌道を描いたが、相手GKのパンチングによって阻まれた。好機を作る場面が多くなるがゴールが遠い。一方、中大は前線の左右のウイングがスピードある攻撃を展開。手を焼く山学のファールを誘い、FKのセットプレーやディフェンス裏に飛び出したウイングからのクロスを受けたセンターフォワードのシュートを山学は、ディフェンスの堅い守備と守護神、#12GK高橋クリス(4年)の素早い反応でゴールを死守した。中大の厳しい攻撃が続いた中盤30分、山学はカウンターから中央へのパスを途中交代の#MF中田開人(3年)がシュートまでつなげるが、ここでも相手GKに阻止された。その後も互いの激しい攻防が続いた。運動量の落ちない中大に対して、山学は前半の早い時間帯の先制点が最後まで重くのしかかり0-1で敗れた。
■《山梨学院大学の結果》
| 2023年度関東大学サッカーリーグ1部参入プレーオフ決定戦 《山梨学院大学VS中央大学》12/2 千葉県浦安市・ブリオベッカ浦安競技場 |
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|---|---|---|
| ● 山梨学院大学 0 | 前半0-1 後半0-0 |
1 中央大学 〇 |
◆山梨学院大先発=#12GK高橋クリス④、#3DF一瀬大寿③、#4DF原田蓮斗②、#16DF岩崎柊汰②、#8MF村田智也③、#13MF藤田夏寿丸③、#14MF池田悠夢①、#15MF岡澤韻生③、#18MF岩城颯真②、#28MF石本勝悟①、#11FW吉長由翔②
❖リザーブ=#1GK小櫃政儀②、#5DF加藤佑太郎②、#29DF吉野柊①、#10MF斎木大和②、#2MF中根悠衣③、#19MF野田駿人①、#24MF近藤那央③、#25MF中田開人③、#26FW風穴真苑③、
❖交代=#18岩城颯真⇒#24近藤那央、#14池田悠夢⇒#10斎木大和、#8村田智也⇒#25中田開人、#28石本勝悟⇒#29吉野柊
試合後、岩渕弘幹監督は「あのスタートの失点がすべてを終わりにしてしまったような、あれで我々は2点以上を取らなければならなくなってしまいました。前半できればゼロゼロでいきたいと思っていたんですけども、あまりにも早い失点過ぎました」と敗因を語った。2部で戦ってきたことに「正直なところ我々は2部の中で、今年のリーグ戦が数回行われたとしたら我々は10位にいるチームだと実際に思っています。力の差は2部でやっていても感じましたし、力がないのにちょっと上に行ってしまったという感じがあります。にもかかわらず3位でシーズンを終えたということは選手がよく頑張ってくれたし、我慢だとか、負けないように何とか勝とうとする工夫がすごく見られたシーズンだったと思っていまして、ちょっとそこが僕も驚きの所ではありました。良い経験をさせてもらったと思っています。この経験が多分、将来的に数か月後とか1年後にあの時の経験が良かったねと言えればいいと思うんですけど、選手たちはよくここまで来てくれた」と選手を労った。
DFの要・一瀬大寿選手(3年)は「1点目が早かったというのは、後ろの責任でもありますし、練習試合を含めて、何度かやっていて一度も勝ったことがないチームに自分たちが主導権を握れない状況になるということはやる前から正直分かっていたことで、1点取られてから相手が余裕を持ち始めて2点取らなければならない状況の中で、その後のやりにくさがありました。緊張感もあったと思いますし、そういうのも含めて自分たちのメンタル面とか、コントロールできなければいけなかった」と反省の言葉を口にした。昇格試合に臨めたことについては、「まぐれとは言えないですけど、運とかもあってのことだったので、正直、今年上がっても関東2部の中でもレベルからいったら上位に加わっていけるチームではないなと思っていたので、この結果は、もう少し気を引き締めてオフシーズンにチームとして、個人としても強化していって、来年はプレーオフではなく実力で昇格出来たら」と話した。
再三の好プレーでゴールを最少失点で守ったGKの高橋クリスゲームキャプテンは「0-0では勝てないという状況をチームで前から1点を先に獲りに行こうという話をしていた中で、立ち上がりの失点がやはり一番痛かったです。自分たちの入り方の悪さでこのように最後終わってしまったのは、率直に悔しい」と失点場面を悔いた。目標の1部昇格逃がしたことに「都リーグから2部に上がって、最初、降格争いというように周りから言われたことが本当に悔しくて全員で『フォア・ザ・チーム』で戦って、3位という結果を達成できたということはチームとして自信を持つべきだし、良い選手が揃っているのでこういう負けた経験も活かして次につなげて来年2回目の挑戦で結果を出してくれることを楽しみにしています」と後輩に1部昇格を託した。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2023.12.3