●山学短大2023年度「スイーツマイスター」実技試験
~2年間の集大成をオリジナルスイーツで表現し、全員合格~
~「専門的実践力外部試験」も学生の努力が認められ高評価~
山梨学院短期大学食物栄養科パティシエコースで1月23日、2023年度「スイーツマイスター」実技試験が行われた。「スイーツマイスター」とは、2年間の学びで培った製菓・製パンに関する知識と技術の習熟度を測るため、山梨県産の農畜産物や加工品を活用して「オリジナルスイーツ」1点を製作して取得する山学短大独自の認定資格。13回目となる今回はパティシエコース2年生18人が実技試験に臨んだ。時間制限のある中で取り組んだ作品は、いずれも学生が選んだ地元食材が上手く使用され、デザインや味についても工夫が詰まった一品として製作された。審査は本学の食物栄養科科長と同教授の2名、外部専門家の1名が行い、実技試験の結果は当日の審査後に発表され、受験者18人全員が評価基準を上回り合格となった。また、この実技試験は2016年度から実施された「専門的実践力外部試験」を兼ねており、外部の製菓・製パンの専門家3名が同時に審査にあたり、審査員の一人は今回の講評の中で「皆さんの頑張りが作品から伝わってきた」と学生を労った。審査結果は3月15日の卒業式に合わせ事前に発表される。
山学短大独自の認定資格「スイーツマイスター」を取得するための実技試験は、2010年(平成22年)に食物栄養科フードクリエイトコース(現パティシエコース)が開設されてから実施され今回で13回目となる。2年間の学びの中で山梨学院短大が掲げる『スイーツを知り』『スイーツを食し』『スイーツを探求し』『スイーツをつくる』の4つの要素の知識と技術を深め、安全で美しくおいしい洋菓子・和菓子・製パン技術と専門教育科目を修得した学生の集大成として実施されてきた。実技試験の内容は、山梨県産の農畜産物、加工品を活用し「オリジナルスイーツ」1点を製作しその完成度を図るもの。また、『学修成果を学内・学外の両輪で評価し社会に目に見える形で提示していく仕組み』として2016年度から実施された「専門的実践力外部試験」を兼ねており、外部の製菓・製パンの専門家3名が同時に審査にあたった。
学生たちの2年間の集大成として挑む「オリジナルスイーツ」の製作は、山梨が誇る大地の恵みから生まれた農畜産物や加工品を活用することを条件にしており、今回の作品にはりんごやあけぼの大豆、 ゆず、さつまいも、小麦粉(かいほのか)が多く使用され、他にも大塚ニンジンや武川米、いちご、キウイフルーツ、柿、さくらんぼ、ブルーベリーなどバリエーション豊かな地元の果物・野菜が使用された。学生たちは自分で考え抜いた作品のレシピを基に何度も試作を繰り返し、当日を迎えた。作品の製作は午前10時40分から約3時間の中で行った。洋菓子・製パン・和菓子担当講師から最後のアドバイスを受けながらデコレーション・焼く・蒸すなどの作業を行い、県産畜産物・加工品をふんだんに使った、アイディアあふれる色とりどりのオリジナルスイーツが学生たちの技術によって仕上がった。完成した全18作品は、2階カフェテリアの審査会場に並べられ、写真撮影が行われた。「スイーツマイスター」認定資格実技試験は、羽畑祐吾山梨学院短大食物栄養科長、中川裕子同食物栄養科教授、食に関するクリエイティブワークを主宰し、後期授業の教壇に立って学生たちを指導したKANAEフードビジネス研究所の芦澤香苗氏の3名が審査に当たり、「専門的実践力外部試験」は外部審査員3名が担当した。審査は作品の撮影後に始まり、2時間の中で厳正に行われた。
審査基準は、①地域素材の活用、②独創性、③製菓技術(レシピ通りの製作 コストパフォーマンス)、④視覚性(美しさ・センス・好感度)、⑤味覚性(おいしさ)の5つの視点から評価され(100点満点)、それぞれA評価(優れている)20点、B評価(普通)15点、C評価(劣る)10点で採点。実技試験は、60%の得点率を持って合格となる。「専門的実践力外部試験」の評価は、3名の学外審査員の平均点とする。学生は、事前に「材料・分量・原材料費」「作り方」「作品の菓子の意図や食材に関する事項」をレポート用紙に記入提出し、審査時には製作時の工夫点や思いなどを1分間のプレゼンテーションを行った。審査では計6名の審査員が見た目のデザインや味、食材のマッチング・バランス、大きさと量のバランス、原価率など細部にわたり質問やアドバイスを受験者ひとり一人とやり取りを繰り返した。その結果、「スイーツマイスター」の審査結果は、いずれも60%以上の評価基準を満たし18人全員が合格と認定された。
審査結果の発表・講評は、山梨学院短大食物栄養科・関戸元恵講師の進行で行われた。審査後の講評で、「スイーツマイスター」審査委員長・羽畑祐吾山梨学院短大食物栄養科科長は「審査員からの専門的な質問に対し、堂々と自分の考えを発言している皆さんの姿を見て、今後はそれぞれ専門の道へ進んでいくのだと実感し、感無量の気持ちになりました。皆さんの2年間の思いが詰まったスイーツを頂くことで、お腹がいっぱいになると同時に涙腺もゆるんでしまう、そんな時間でした」と成長した学生への思いを伝えた。続けて、「スイーツマイスター」実技試験の審査発表が行われ、18人全員が合格したことを発表した。「スイーツマイスター」実技試験の講評では、審査委員の中川裕子食物栄養科教授は「皆さんの作品それぞれに地域食材への思いが込められていて、審査をする中で皆さんが2年間で行ってきた作業の一コマ一コマが思い出される時間になりました。皆さんの力を、今度は社会に向けて活かせることを願っています」と激励の言葉を贈った。また、KANAEフードビジネス研究所の芦澤香苗氏は「皆さんにはプレゼンのやり方や、人に感動を与える職について授業で講義しましたが、今日はその成果が良く表れていましたし、ひとつひとつの素材を大事にしていること、地域の付加価値を高めるための思いが詰まった良い作品が完成したことは(講義を行った)私にとっても大きな喜びです」と学生を称えた。
また、同時に行われた「専門的実践力外部試験」は、今回実技試験に臨んだ18名の学生に対して、製菓衛生師に係わる専門的実践力が2年間の学びの中でどれだけ身に付いているか「卒業後の保証」という見地から、学外の製菓・製パンの専門家の評価を受けるものであり、審査は、審査委員長の山梨学院短期大学学外助言評価委員会委員を務め、山梨県洋菓子協会会長で㈱清月専務取締役の野田清彦氏と、山梨県製パン協同組合理事長で㈲六曜舎代表取締役の小野 曜氏、Patisserie La Neige オーナーパティシエの橋本隆男氏の3名が行った。審査委員長を務める野田清彦氏は講評の中で「全ての作品が美味しかったです。これらを完成させるのに皆さん試行錯誤されたと思います。また、完成させるにあたって支えてくれた方がいると思いますが、皆さんがこれから出ていく社会は、一人ひとりの力で成り立っています。周りに感謝しながら、自分も周りの力になるという思いで、これから頑張ってください」と学生たちの今後に期待を込めた。小野 曜氏は、「皆さんの入学時や、ご家族を思い出しながら作品を見ると、この作品は歴史であり物語です。それが味に表れるので、どの作品も個性があり美味しく、思いが詰まっていて、家族や地域との繋がりを感じられたと思います。皆さんはコロナ禍に入学して、学校へ来ていいか分からないような経験を経て、本日このような素晴らしい作品が出来上がったことは皆さんの財産です。この経験を忘れずに次のステップを進んでください」と学生たちにエールを贈った。橋本隆男氏は「このような審査員をさせて頂くのは初めてでしたが、皆さんの頑張りがとても伝わってきました。これから実践の場で働く方も多いと思いますが、今回苦労したことを色々なことに結びつけて、自分の糧にしていってください」とそれぞれ講評した。外部専門家3人による「専門的実践力外部試験」の結果は、3月15日に行われる卒業式に合わせ事前に通知される。
審査を終えて、アップルティー風マカロンを製作した飯室来楽さんは「一番自信のあるスイーツで審査に挑んで、それが評価されて良かったです。プロの方々からアドバイス頂いたことで、自分の作品をまた違った視点で見ることができ、勉強になりました」と振り返った。あけぼの大豆プレート ~朝ぼらけ~を製作した上田容示さんは「ワンプレートに3種類のスイーツを作り、前日から準備していたので当日はスムーズに完成させることができました。自分のオリジナルレシピで作品を作り上げたことに満足していますが、もっと素材の良さを活かした新しいスイーツを作りたいです」と今後の意欲を語った。otsuka carrot cakeを製作した後藤美紅さんは「キャロットケーキはスパイスが多く入っているスイーツですが、スパイスのバランスを審査員から褒めてもらえたのが良かった。食材をもっと活かすための調理や加工方法についてもアドバイス頂けたので、今後は素材のことを考えた製作をしたいです」と語り、柚子香るタルトレットを製作した深澤拓実さんは「何よりも見た目が綺麗に仕上がったことに満足しています。初めて作ったスイーツで、最初は上手くいきませんでしたが、試作を繰り返しながら本日の作品が完成して、他の学生にも見た目を褒められて嬉しかったです。今回は丁寧な作業を行うことができたので、今後もこのことを忘れずに活かしたいです」と審査の充実ぶりを語った。審査を振り返った4人の学生は卒業後、県内外のホテルパティシエ、個人経営の洋菓子店、洋菓子工場へと就職し、それぞれの技術を更に磨いていく。
文(R.K) カメラ(藤原 稔) 2024.1.23