●山学高 3年連続7度目、春の選抜出場決定
~歴史を塗り替えた昨年に続き今年も挑戦者で~
~一戦一戦、粘り強い試合で勝利を目指す~
山梨学院高校野球部に吉報がもたらされた。1月26日、大阪市内で「第96回選抜高校野球大会」選考委員会が行われ、出場校32校が決定した。その結果がインターネットLIVE配信中継で発表された。午後3時半過ぎ、山梨学院高校の校名が告げられるとその模様を同校芙蓉ホールのスクリーンで見守っていた野球部員たちから大きな拍手が起こり、その瞬間を待った多くの報道陣が一斉にカメラのシャッターを切った。山梨学院は昨年の秋季関東地区大会で準優勝を果たし出場は確実視されてはいたが、目標としていた前回大会優勝の「紫紺の大優勝旗」を全員で返還することが現実となり、喜びは格別なものとなった。出場は3年連続7回目となる。出場校発表は21世紀枠から始められ、続けて北の地区から順に高校名と選考理由が説明され、山梨学院は関東地区の2番目に読み上げられた。出場決定後、同席した山梨学院高・吉田正校長は「また、甲子園を沸かして県民に元気を与えてもらいたい」と激励の言葉を掛けた。続けて吉田校長、吉田洸二野球部監督、吉田健人野球部部長による記者会見が開かれ、それぞれ挨拶と記者との質疑応答が行われた。その後、野球部員は前庭に出て写真撮影や記者の取材に応じた。組み合わせ抽選会は3月8日に行われ、大会は3月18日より30日の決勝戦まで21世紀枠2校、一般選考29校、神宮大会枠1校の計32校の高校球児が頂点を目指してしのぎを削る。再び『山梨学院旋風』を巻き起こせるか。
■多くの報道陣が集まり、山梨学院の出場決定を待ったー
インターネット配信が始まる午後3時前に同校芙蓉ホールに1・2年生野球部員52人(欠席1人)とマネージャー3人、野球関係者、教職員約100人が集まり発表を待った。会場には前回大会に歴史的な快挙を成し遂げたチームを取材しようと、例年を上回る報道陣が訪れた。中継は時間丁度にLIVE配信が開始され、選考委員が21世紀枠2校の発表後、一般選考の全国9地区を北地区から南地区へ順に出場校の選考理由を説明し進められた。山梨学院は関東地区に加盟しており、東京地区とともには開始3地区目で発表された。関東地区4枠は秋季大会ベスト4の順に優勝した栃木代表の作新学院高から準優勝の山梨学院高、群馬代表の高崎健大高崎高、茨城代表の常総学院高と順当に選出された。東京地区は関東第一高、そして、2つの地区の中から比較検討する1枠には関東地区の千葉代表の中央学院高が選ばれた。午後3時半過ぎに準優勝して選出が確実視されていた山梨学院の校名が読み上げられると、会場にはどよめきと大きな拍手が起こり、報道陣はその様子を盛んにカメラに収めていた。
■試合ごとに成長した若いチームが3年連続7度目の選抜出場を獲得ー
山梨学院高校は前回の「第95回選抜野球記念大会」で山梨県勢初の春夏通じて初優勝の快挙を成し遂げ山梨県に明るい話題を提供した。この余勢を駆って夏の甲子園に春夏連覇を目指したが惜しくも県大会準決勝で涙を飲んだ。強い先輩たちからバトンをつないだ新しいメンバーは脆弱性が不安視されたが、臨んだ秋季県大会では試合ごとに選手が成長し快進撃で優勝。秋季関東地区大会に3年連続山梨1位代表で出場した。栃木県宇都宮市で行われた秋季関東地区大会では、1回戦を埼玉2位代表の昌平高にタイブレーク11回に5-4で勝利。続く準々決勝の桐光学園高(神奈川1位)でもタイブレーク11回4-2で勝ち進み、準決勝では昨年と同じカード、群馬1位代表の強豪健大高崎高との対戦は、逆転で3-2。いずれの3試合も粘り勝ちで2年連続の決勝に進出した。決勝は栃木1位代表の作新学院高との対戦。中盤6回まで2-3と拮抗した試合展開だったが7回表、この大会抜群の制球力でチームを牽引してきた櫻田投手が相手の強力打線につかまり、結果4-13と大敗を喫し2連覇は逃した。
■山梨学院の選考理由ー
選考委員会委員長による選考理由は、はじめに関東地区はレベルの高い大会でベスト4の高校は全会一致で推薦が決まったと説明。山梨学院については、1年生が多い若いチームでエースの櫻田隆誠投手(2年)を中心にタイブレーク2試合を制し粘り強さを発揮。櫻田投手の巧みな投球術や外野の守備も思い切った前進守備でサヨナラヒットを防ぐなど守備陣の堅い守り、代打陣の終盤の活躍などベンチと一体となった試合運びを評価した。
■吉田監督、吉田部長が今後の抱負を語るー
3年連続7度目の出場決定を聞いた吉田正山梨学院高校長は選手を前に「選手たちは前年の優勝校としてプレッシャーを感じていると思いますが、チームは新しいチームですのでプレッシャーを感じることなく、自分たちの野球で楽しんで、また、甲子園を沸かせて県民に元気を与えてもらいたいと思います。本当におめでとうございます」とエールを送った。そして、『優勝旗を持って帰って来るぞ!』」と選手に大きな声でシュプレヒコール。選手全員で「オー」と元気に返した。引き続き、選手が会場から退場後、記者会見が行われ、初めに壇上で報道陣の要望に応え、吉田校長、吉田洸二野球部監督、吉田健人野球部長・コーチがっちり握手してカメラに納まった。記者会見では吉田正山梨学院高校長は冒頭に集まった報道陣に謝意を表した後、「昨年、監督と部長が『俺たちはチャレンジャー』という言葉を掲げ優勝してくれました。1年生が主体のまだチャレンジャーのチームですが今年もその言葉をそのまま彼らが胸に秘めて活躍してくれることを私たち教員もバックアップしていきたいと思います」と挨拶した。続いて吉田健人野球部部長は「うちのチームはメンバーが大きく変わって1年生が多く出ていますが関東大会では2年生がしっかり活躍してくれました。全員で優勝旗を返還しようと中原主将を中心にまとまってくれ、選手の頑張りでまた甲子園に行くことができます。そして、昨年の優勝で新しく山梨学院ファンになってくれた方々いますので、注目を受ける中で少しでもいいチームに仕上げて大会に臨みたいと思います」と挨拶。また、吉田洸二監督は「私の経験から今年は(出場)厳しいかなと思っていました。ところがうちの3人の若いスタッフ(コーチ)が選手を鼓舞させて結果として答えを出してくれました。私は甲子園に連れて行ってもらえるという気持ちでいっぱいです。本当に感謝してしっかり準備していきたいと思います。皆で優勝旗を返しに行くというのは昨年優勝を成し遂げた3年生に対しても感謝の気持ちを表せるものと思いますので、開会式では全員が胸を張って行進できるように準備していきたい」と挨拶した。
報道陣との質疑応答では、2連覇について吉田監督は「メチャメチャしたいです。しかし、優勝したことをすっかり忘れないと新しいものが入ってきませんので目の前の試合に全力で臨めるようにしたい」と慎重な姿勢を示した。この冬に『一冬に二冬超す』というスローガンを立てたその練習の成果について、吉田健人部長は「練習の方は順調に進んでいます。秋のチームの課題としては打力なので秋の大会に出場していた選手の打力を上げること、打撃は良いけど守備面で劣り出場できなかった選手など、それぞれの不得意なところを伸ばす練習をしてきました。昨年の3年生は経験が豊富でしたので時間が短いですけどどのくらい調整できるか。体力面では確実に伸びている」と練習経過を説明した。同じ質問に対して吉田監督は練習の成果の部分もあると断った上で、「この冬で大きく成長するんだという意気込みの表現でもありますが、練習を見る限り力はついていると思います。しかし、春先のシーズンが始まって3週間位で試合がありますので、この冬の練習で培ったものをどこまで出せるかは未知数ですけれども、春だけなくその後の大会にも効果が及ぼすのではないかという思いを込めて練習をしてきました」と選手たちの大きな飛躍を先に見る。
■報道陣の撮影に応えて様々なポーズで出場決定を喜ぶー
記者会見後には、選手たちは前庭に場所を移動。報道陣の撮影に元気に応え、喜びのポーズをとって甲子園での活躍を誓った。選手たちはその後、報道陣の共同インタビューに応じた。中原義虎主将(2年)は決まった時の気持ちを、「素直にうれしいです。全員で優勝旗を返す気持ちでやってきて、一戦一戦選手一丸で戦った結果、こうやって選ばれて良かった」と話した。開会式での行進を問われ、「優勝旗を持って最初に入場するので注目はされると思うので先輩方や学校の名前を背負って全員でそれにふさわしい姿で行進したい」と意気込んだ。本番では、「去年の先輩たち一緒でチャレンジャーの気持ちで一戦一戦戦ってその一戦に勝てれば」とその先の連覇を見据える。県大会、関東大会で一気に頭角を現し、選抜でも活躍が期待される櫻田隆誠投手(2年)は「名前を呼ばれてほっとした気持ちになりました」と一言。甲子園のマウンドに立つことに、「野球を始めた時から甲子園に行きたいと思っていた夢の舞台です。ここまで野球させてくれた親に最高の恩返しをするという思いで投げられたらいいと思います」。質問が前回大会優勝の林謙吾投手に及ぶと、「林さんよりいいピッチングをしたい」と人柄を表すひかえめな言葉を口にした。大会まで2ヶ月、どんな準備を、「持ち味のコントロールだったり、緩急や変化球などを磨いて甲子園でいいピッチングができるようにしたい」と本番に照準を合わせる。
■初戦までに実戦感覚を取り戻す練習で本番に備えるー
選抜大会まで約2ヶ月。これまで体力面の強化と打撃、守備のそれぞれの課題を抱えていた選手の修正を図ってきた練習から、これからは少しずつ実戦形式の練習が増え、チームプレーに重点置いた練習に移行。勝利のため厳しく選手の見極めをしていく。
「第96回選抜高校野球大会」組み合わせ抽選会は3月8日。大会は3月18日に開幕。30日までの13日間(休養日を含む)にわたり阪神甲子園球場で熱戦が繰り広げられる。開会式では全国32校の先頭に立ち、山梨学院高の堂々とした入場行進が見られる。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2024.1.27