●山学短大栄養士コース2023年度「専門的実践力外部試験」
~10項目の審査基準を食の専門家が厳正評価~
~独自色溢れる成人女性向け昼食献立で2年間の集大成~
2年間、山梨学院短期大学食物栄養科栄養士コースで学んだ学生が知識と技術を総動員して挑む卒業試験、2023年度「専門的実践力外部試験」が2月15日、16日の両日、短大調理実習室で行われた。この外部試験は、文部科学省に認定された「卒業時における『質保証』の取り組みの強化」として学修成果を学内外の両輪で評価し、社会に目に見える形で提示していくもので今回、7回目となる。栄養士コース2年生55人が2日間午前・午後組4グループに分かれ行われた内容は、成人女性(18歳~29歳)を対象に学食や社員食堂で提供される冬(2月)の昼食献立を想定し、あらかじめ与えられた課題で献立を作成し、実際に1人分を調理・完成させる。学生は、この日までに何度も試作を繰り返し作った独自の献立を約1時間半で調理。調理中には山梨県内の食に関する第一人者3人の外部審査員が調理台を回り、学生があらかじめ提出した献立表を手に、作業するひとり一人を見回り、視点項目通りに作業が行われているか確認した。料理完成後には、学生は審査員に献立についてのプレゼンで思いを伝えた。それに対して審査員は材料や味付けや彩りなど細かいやり取りを交わし、その後、講評を行った。結果は、10項目にわたる評価表を基に厳正な審査を経て、卒業式事前指導において配布される。
■学外の食の専門家から評価を受ける「専門的実践力外部試験」ー
山梨学院短期大学が2016年度文部科学省「大学教育再生戦略推進費・大学教育再生加速プログラム」に認定された事業計画の一つ、「卒業時における『質保証』の取り組みの強化」として「学外助言評価委員会の設置」から外部の専門家が評価する「専門的実践力外部試験」を2年生のカリキュラムに設定。2年間の学びの中で専門的な知識・実践力・総合的人間力を養い、専門職として社会に貢献できる力を卒業時に学生が確実に身につけられたのか、学修成果を学内外の両輪で評価し、目に見える形で提示していく仕組みとして食物栄養科栄養士コースは2017年度から行われ今回で7回目。同科パティシエコースは認定年度の2016年度から実施し、今年度は1月23日に行われた。
山梨学院短大食物栄養科栄養士コースでは「喫食者に見合った献立作成ができること」「献立に沿った調理することができること」を栄養士の最も基本の専門的実践力と捉え、「専門的実践力外部試験」は、この2つがどれだけ身に付いたかを評価。身体活動レベルの普通(Ⅱ)の成人女性(18歳~29歳)が利用する学食または社員食堂の冬(2月)の昼食献立1食分を想定し、あらかじめ与えられた課題で学生たちは昨年8月頃から準備を始めて自ら献立を作成。その後、教員の指導受けながら家庭での試作を繰り返し試験への準備を進めてきた。卒業に向けて、2月13日、14日には卒業レポート発表会が行われ、続けて15日・16日に2年間の集大成となる「専門的実践力外部試験」が実施された。2年生55人が2日間午前、午後組の4グループに分かれ実技試験に臨んだ。
■2年間の学びのすべてを懸けるー
短大51号館204調理学実習室に集まった食物栄養科栄養士コースの学生たちは身支度、材料測定、調味料計測など事前準備を済ませ、試験開始を待った。試験に先立ち、開式で山梨学院短大中川裕子食物栄養科教授から3人の審査員が紹介され、引き続き同大食物栄養科・羽畑祐吾科長は「2年間の栄養学、栄養士資格取得の勉強の集大成として自分オリジナルの献立を調理して外部の専門家に見てもらうため夏から準備してきました。緊張していると思いますけど、この経験を将来活かす体験としてほしいと思います」と挨拶。卒業試験とも言える「専門的実践力外部試験」が始まった。学生たちの調理時間は約1時間半。限られた時間内に、2年間の学びのすべてを懸けて献立調理に挑んだ。何回も繰り返した試作に自信を持って調理する姿には真剣な表情で黙々と調理に取り組み主菜、副菜、汁物、デザートを仕上げていった。審査委員は、調理開始とともに各調理台の学生ひとり一人に献立のアピールポイントや使用した食材、工夫点などを聞いて回り、下記の評価基準のチェックをしていた。審査員の一人は「非常に手際が良い。調理がこなれている」と評価。調理終了後は、出来上がった順に写真撮影をし、審査員へのプレゼンテーションに臨んだ。審査員はそれぞれの学生が調理した献立を試食しながら学生に献立への思いや調理への工夫を聞き、長年現場で培った経験と客観的視点から厳しい指摘やアドバイスを織り交ぜながら採点をしていた。
■3人の外部審査員による10項目にわたる詳細な評価基準ー
外部試験の審査は、両日とも管理栄養士で現在、一般社団法人「ぽぷらの木」代表理事で山梨学院幼稚園で長年、アドバイザーを務める秋山知子氏、元相川ケアセンターで管理栄養士として務め上げ、現在、公益社団法人山梨県栄養士会副会長の堀口一美氏、そして甲府市、甲斐市の特定保健健診管理栄養士として、また、厚生連の保健指導を行う赤澤明美氏の3人が担当した。
◆評価は昼食『給食』を献立・調理を目的にしており、家庭料理ではなく1食の給食としての形がしっかりとれているかが大切となっている。❖⓵基準となる食品構成を参考に食事摂取基準を満たしているか。❖⓶食品構成をもとに1食分として適切な量となっているか。❖⓷1食分の体裁(主食、主菜、副菜の組み合わせ、分量など)が整っているか。❖⓸各料理の味付けは適切であるか。❖⓹衛生的(食材の取り扱い、加熱状況等)な配慮がなされているか。❖⓺「給食」として経済的な配慮がなされているか。❖⓻材料に対して適切な調理がなされているか(調理技術は適切であるか)。❖⓼適切な容器に体裁よく盛り付けられているか。
❖⓽おいしそうな色合いとなっているか。❖⓾献立(料理)は、作成者の「意図」や「思い」が反映されているかの10項目から評価され、A評価(優れている)10点、B評価(普通)7点、C評価(劣る)5点で採点。評価は、3人の学外審査員の得点の平均点を算出し、その値を「総合得点」とする。また、視点別得点も同様に、それぞれの視点ごとに3人の審査員の平均点を算出し、その値を「総合得点」とする。また、「視点別得点」も同様とする。
◆調理、プレゼン終了後の講評では、はじめに堀口一美審査員が評価項目の⓵~⓹まで、⓺~⓾までを赤澤明美審査員が専門家としての注意点やアドバイスを交えながら講評、二人は概ね好評価を与えた。最後に秋山知子審査員は総評して、「今年の方々は、本当に味のセンスがいい人が多いと感じました。センスは習い事であるようで、生まれつきのものであるようで、なかなか難しいです。こういう専門職を目指す皆さんは、学習としても味付けを学ぶことが大事で、私たちは自分が経験した味しか作れないそうです。だからいろいろな味を自分で経験したりしないと自分の持っている味の幅が広がらないと思います。今日の皆さんは同じような料理が多かったですけど、それぞれに使っている食材の味を上手に使っていろいろな味に仕上がっていました。多分、料理を作ることの意識も高いことが味覚の良さを生んだのかなと思っています。(中略)半年かけて皆さんが一生懸命準備して今日、この晴れの場で披露して本当に素晴らしいなと3人(審査員)で話をしていました。これからも今日チャレンジしたものをもっと違う形に膨らませてほしいと思っています」と期待を述べた。審査員の3人はこれからひとり一人の10項目の評価を判定する。試験開始から2時間半。学生にとって人生の節目となる緊張の貴重な体験となった。
■2年間の知識と技術をつぎ込んだ献立を調理ー
冬が旬のかぼちゃやほうれん草、ねぎなどの野菜を使用、彩りに工夫した「鶏肉豆腐」を主菜に、和え物とデザートにフルーツヨーグールトを添えた献立を調理してみせた南アルプス市在住の佐久間愛さんは、「女性向きで冬の献立なので鶏肉を使って暖かくてやさしい味の煮物的な和風仕上げにしました。いろんな調理法で一つの献立を作り、とてもおいしくできたと思います」と自信の程を示した。審査員の前でプレゼンテーションでは、「緊張したんですけど、味はおいしいと言っていただき、管理栄養士の方の目線からアドバイスをいただけたことは、これから自分の力につながりもっと成長していきたい」とさらなる高みを目指す。卒業後は保育園で栄養士として一歩を歩み出す。中央市在住の小林礼奈さんは「ぶりと根菜の煮物」を主菜に副菜にはエノキの白とブロッコリーの緑、桃色のたらこを加え、春を表現。汁物もかぶとジャガイモなど野菜を多く使った献立にした。「いろいろな食材を使うことで食欲が増すということや用途に応じて食材の大きさを変えることなど学びを活かして調理しました」。外部の専門家に審査をされることに「すごく緊張したんですけど、専門の方々に見てもらうことはプラスにもなりますし、これから就職するに当たり、この経験が活かせられたらなと思います」。短大での2年間の学びは、「入学した当初は、献立作りも大変過ぎてついて行けるか不安ではあったんですが、先生にアドバイスをもらい繰り返すことで今では苦労も無くなり、いろんな調理方法を学ぶことができるようになって楽しかった」と振り返った。子供が好きで小学校や幼稚園の給食を作りたいと栄養士コースを選んだ小林さんは、地元の小学校へ就職を決め、夢を叶えた。
■7回目の外部試験を見守ってー
深澤早苗食物栄養科教授は7回目の試験となるこの試験について「学生の真の実力が図れるように毎年少しずつ改善をしてきたんですが、今年は教員の手が全く入らないように自分で献立を考えて、直して自宅で試作を繰り返し、今日に臨んでいるので自分の力で成し遂げた試験になったかなと思います」。今回の献立の傾向を、「旬の食材を積極的に使おうという意識が強く、適正な味付けができるように工夫していましたね。今年の特長としては女性向きということでデザートに凝ったものが多かったです」と感想を述べた。また、2年間の集大成を見守って、「食物栄養科の最後の卒業試験という位置づけで、今年の学生は一生懸命に取り組んでいて、この方法が良かったですね。これからも自分で最後まで考える力で育っていってもらいたいですね」と卒業を迎える学生に社会での活躍に期待を寄せた。
結果発表は卒業式前日、3月14日の卒業式事前指導において配布される。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2024.2.16