山梨学院広報課

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●文部科学大臣賞「第二十五回酒折連歌賞」表彰式
~4年ぶりの晴れの場。一般・アルテア部門大賞らを表彰~
~酒折連歌賞の歴史の蓄積がレベルを上げたと総評~

「第二十五回酒折連歌賞」の表彰式が2月17日、山梨学院広報スタジオで行われ、コロナウイルス感染症防止のため4年ぶりの開催となった。今回の応募は国内外から総数30,214句が寄せられ、2月1日に入賞百選が発表され、その中から全応募作品を対象にした一般部門大賞・文部科学大臣賞には東京都・江連守さん、山梨県知事賞は神奈川県・合志龍樹さん、山梨県教育委員会教育長賞の渡井由佳さん(静岡県)、甲府市長賞は山梨学院高校2年の山西彩湖さん(甲府市)がそれぞれ受賞。小・中・高校生を対象にしたアルテア部門の大賞・文部科学大臣賞は中学2年・堀江文音さん(東京都)が選出された。表彰式では、上位5人(1人欠席)にはそれぞれ表彰状と副賞とともに大賞杯や楯が贈られた。主催者代表の挨拶では古屋忠彦山梨学院特別顧問が受賞者への敬意を表し、選考委員や関係者に謝意を示した。また、25回目を迎えた酒折連歌賞を回顧し、連歌と酒折の地の関係性などが述べられた。三枝昂之選考委員長からは創設からこれまで回を重ねた蓄積がレベルの高い受賞作品につながったとの講評を行った。続けて各受賞者からは受賞への喜びの声、答えの歌への思いが述べられ、事故で欠席した山梨県知事賞の合志龍樹さんからは書面で受賞の言葉が届けられ司会者が代読した。閉会後、記念写真撮影が行われ、その後、連歌発祥の地・酒折宮を参拝し、受賞を報告した。

■酒折連歌賞とはー
わが国の連歌発祥の地とされている『酒折宮』にちなんでつくられた酒折連歌賞は、1998年(平成10年)、山梨学院大学が中心となり、多くの人に連歌に興味・関心と創作意欲を持ってもらい、衰退していた連歌を蘇えらせ普及させ、文化の創造や文学の振興、また、生涯学習の推進を図ろうと創設された。「古事記」に登場する倭建命(日本武尊)が甲斐の国・酒折宮で御火焼(かがり火役)の老人との問答にちなみ、五・七・七の問いの片歌に対して答えの片歌五・七・七で返す問答形式のやり取りが連歌の起源といわれ、文学形態上からも珍しく特色があることから伝統を現代に活かそうと始められた。1999年度に応募が始まり、応募数は5回目から3万句を超えるようになり2008年、10回目の節目には5万句を超え、連歌ファンが大幅に増えた。それ以降もコンスタントに3万通を超える数で推移している。第25回を迎えた今回は30,214句の応募があった。表彰は、一般部門では大賞の文部科学大臣賞をはじめ、山梨県知事賞、山梨県教育委員会教育長賞、甲府市長賞を設け、また、小・中・高校生を対象に、斬新で若々しく将来楽しみな才能を見出すことを目的としたアルテア部門の最高賞も大賞・文部科学大臣賞が設定されている。表彰式に招かれる上位5人の句のほか、入選10句、優秀賞12句、優良賞54句、アルテア賞佳作19句の合計100選が選出される。

■コロナ禍で中断していた表彰式が4年ぶりに実施ー 
猛威を振るったコロナウイルス感染症の拡大防止のため、表彰式は2020年度「第22回」を最後に中断していたが、4年ぶりに「第二十五回酒折連歌賞表彰式」が2月17日に実施されることになった。晴れの会場は、久ぶりに山梨学院広報スタジオにセッティングされ、今回受賞した上位5人(山梨県知事賞者は欠席)のうち4人と、酒折連歌賞実行委員会関係者、選考委員の三枝昂之委員長(歌人)、西村和子氏(俳人)、今野寿美氏(歌人)、井上康明氏(俳人)、もり まりこ氏(歌人)の5人、受賞者家族、そして多くの報道各社が集まった。
式は酒折連歌賞実行委員会・滝沢裕一郎事務局長の司会進行で行われた。❖はじめに主催者代表の古屋忠彦山梨学院特別顧問が酒折連歌賞の創設からこれまでを回顧するとともに連歌と酒折の地の関係性を述べ、続けて「たかだか25年ですのであまり大きなことは言えませんが、句数を見ますと難しい文学形式にも関わらず、何万句という応募が何年も続いている現実は私どもにとっても大変誇らしく感じます。これからも世の中は変わっていくでしょうがその中でも変わらず、何世紀も齢を重ねた連歌の歴史を育みながらこれからも続けていきたいと思います」と挨拶。労を取った選考委員や関係者に謝意を表し、受賞者にはこれからも続けて連歌賞挑戦をお願いした。❖引き続き、廣瀬孝嘉酒折連歌賞実行会委員長が酒折連歌賞の経緯、応募者の統計・傾向などを説明。改めて連歌の魅力について、「相手を受け止めた上での言葉選びにこの文芸の特長があり、鑑賞や創作を通して二人の心が触れ合い、通じ合いが生まれ、独吟では得られないコミュニケーションが形成されます。このように酒折連歌は人の心と言葉をつなぐ奥の深い魅力ある文芸であります。四半世紀の活動を積み上げてまいりましたが、こうしたぬくもりの輪をさらにさらに広げていきたいと願っております」と挨拶した。続けて今回の受賞者の作品を紹介した。❖これを受け選考委員の三枝昂之委員長は「(連歌)一番古い文芸なんですけど、酒折連歌という形で一番新しい文芸に蘇ったことが非常に大事なところだと思います。科学技術の世界と違って文芸の世界は古いものは本当に古いままかというとそうではなく、古いからこそ価値があるということをこの酒折連歌は実証していることで非常に貴重な文芸でありイベントであると思います。その古いものの新しさを積極的に継承して再確認してくれた山梨学院のご努力に伝統的な定型式に関わる者として感謝申し上げます。(中略=5句の講評)25回を迎えて皆さんのレベルがかなり上がってきました。今まで重ねた24回のトライが、皆さんの問いの片歌の答えの中に蓄積としてどこかエールを送っているのではないかと感じます」と参加者の成熟の高さを評価、総評した。最後に受賞者ひとり一人から喜びの言葉が述べられた。

◆上位5人の受賞者の喜びの声ー ※山梨県知事賞・合志龍樹さんは欠席。

◆一般の部 大賞・文部科学大臣賞 江連 守さん(74) 東京都東大和市
問いの片歌3 
ユトリロの〈白の時代〉を抜け出して来い
答えの片歌
出られない「山椒魚」の頭でっかち
     
「酒折連歌賞の25回目の節に大賞を賜りましたことは望外の喜びであり、誇りであります。妻が我が事のように喜んでいる姿を見て、私も大変にうれしくなりました。受賞した問いは、天才的で多様な解釈を可能にすると同時に、人間の存在そのものに深くかかわる哲学的な思索を必要とする不思議な力を持っていました。その力によって井伏鱒二の「山椒魚」が必然的に導き出されました。『私は出られない山椒魚の頭でっかち』。と、うたいましたが本音では抜け出します。と言いたい欲求に駆られていました。しかし、それは容易なことではありません。なぜなら自分の運命や無意識、そういったものも変革しなくてはならないからです。今、私は酒折の地に立っています。連歌が求める当意即妙の対話の力、たゆまざる自己変革の力を高めていく、と、この地で深く決意しています。このような思いに立つこともできたのも酒折連歌賞のおかげです。心から感謝申し上げます」。

  ◆一般部門 山梨県知事賞 合志 龍樹さん(19) 神奈川県横浜市  ※写真なし
問いの片歌4
運命のサッカーボール白線の上
答えの片歌 
シェルターで今日も誰かがピアノ弾いている

「山梨県知事賞という栄誉ある賞をいただきありがとうございます。家族みんなが喜んでくれ感謝の気持ちが溢れ出そうでした。魂がこぼれそうになりました。表彰式にはぜひとも伺おうと思っていましたが、事故で通院中のため出席できず誠に残念です。作品は自分の置かれている状況を悩むだけではなく、未来に向かって一歩でも前進する必要があるのが人生だという思いで創作しました。今後は連歌だけではなく詩や短歌、俳句、川柳などにもチャレンジしていきたいと思います。そして近未来には小説にも手を染めていくつもりです。本日は誠にありがとうございました」。(司会者代読)

◆一般部門 山梨県教育委員会教育長賞 渡井 由佳さん(41) 静岡県富士宮市
問いの片歌2
巣ごもりがどうやら終わり春が近づく
答えの片歌 
せり、なずな、すずな、すずしろ、これだけでいい

「この度は素晴らしい賞をいただきありがとうございます。酒折連歌賞には7回ほど応募しており、100選には3回入選させていただいていて、今回も100選に入ればいいなと思っていたら電話をいただて、びっくりしましたが本当にうれしかったです。先程、三枝先生からもったいないような講評をしていただいて恐縮なんですけど、巣ごもりを終わってマンモスが・・・というようなビッグな歌を詠んだ方がいたようですが、それに比べると私の七草ということですごくスモールな感じですが、(講評では、シンプルな受け方にセンスがうかがえると評価)私の場合、七草(粥)全部揃えないと。いう感じで結構プレッシャーになってしまうタイプなんですが、今回『これだけでいい』と七草全部入れなかったのは、何らかの理由で全部揃えられなかったとしても、やることに意味がある。上へ上へと目指してしまうときりがありませんので、足ることを知るということも大切だなと思い詠ませてもらいました。私は川柳を主にやって、ボチボチ評価をいただいているんですがこれからも連歌の方もまたこちらに呼んでもらえるように頑張りたいと思います」。

◆一般部門 甲府市長賞 山西 彩湖さん(17) 山梨県甲府市
問いの片歌1 
真っ直ぐな朝の日差しに大根干す
答えの片歌 
ああいいな新しい朝何気ない日々

「このような素晴らしい賞をいただいて素直にうれしいという気持ちです。私は中学1年生の時から毎年応募していて、友達も連歌を作ることが好きな人が多いので書いたものを詠みあって『面白いね。そうゆう詠み方があるんだ』とか、いろいろな切り口から自由な詠み方ができるのが連歌の素晴らしいところだと思っていて、毎年100選が発表される時期になるとちらちらと確認していました。今まで2回選んでいただいたんですが、今回このような大きな賞は初めてなのでうれしく、ありがとうございました。私が詠んだ歌ですけど、自分の周りには畑や田んぼが多くあって朝早くから畑仕事をする人たちの景色を見た時に、しみじみと『あぁ、いいな』と感じたことを素直に表現してみようと思い、私はまだ若くて語彙も少なくて難しい言葉は知らないんですが、私の素直な気持ちが読んでいただいた方に伝わったのがうれしいです。私は今、理系を選択しているんですが、勉強の合間にも文学に親しんでいろいろなことに挑戦して自分の伝える力を養っていけたらいいなと思っています」。

◆アルテア部門<小・中・高校生対象>
大賞・文部科学大臣賞 堀江文音さん(14) 東京都三鷹市
問いの片歌3 
ユトリロの〈白の時代〉を抜け出して来い
答えの片歌 
ぬりつぶす絵ノ具は心をうめつくせない

「今回は名誉な賞をいただき本当にありがとうございました。私の学校は百人一首とか俳句など日本の伝統的な文化の大会でいろんな賞を取っているんですが、連歌は初めてどうしたらいいか分からなく、ずーと頭ひねっても何も浮かばなくて『やばいな』と思っていたら、ふっと降りてきて応募したのが今回の句です。(受賞が決まって)アンケートで何でこの歌を詠んだのかと聞かれた時に、何がと言われてもフィーリングとしか答えようがなく困ってしまいました。だけど多分、私こんなことを考えていたんだろうなと過去の自分を想像してその質問には答えました。最初、連歌には興味がなかったんですがこの賞をきっかけに連歌や俳句、短歌など日本のいろんな伝統的な文化に興味を持てたのでこれからも取り組めたらいいなと思っています」。

受賞者は閉式後、山梨学院大学クリスタルタワー前で記念写真撮影が行われ、連歌発祥の地・酒折宮を参詣し、境内で『連歌の碑』などを見学、その後本殿を参拝し受賞を報告した。

文(K.F)カメラ(平川大雪)2024.2.17

酒折連歌賞ホームページ