●山学短大 豆腐・豆乳を使ったメニュー開発試食会 最終報告会
~冬向けテイクアウトメニュー4品を商品開発に提案~
~豆腐の素材の良さを存分に活かし、関係者に高評価~
山梨学院短期大学で「豆腐・豆乳を使ったテイクアウトメニューの開発に係る試食会」最終報告会が2月29日に開かれた。これは食料品製造業・株式会社ソイワールドと山梨学院短大食物栄養科の特定事業に関する協定に基づくもので、(株)ソイワールドの新商品開発に向けたメニューの試作に応じて8月に行った夏向きメニュー5品が高評価を得たのに続き、今回、冬向きのテイクアウトメニュー4品が試作され、試食会を行った。最終報告会には、(株)ソイワールド長澤要市代表取締役社長以下、6人の関係者が出席。本学食物栄養科栄養士コースからは商品開発を主導する山梨学院短大食物栄養科中川裕子教授と2年生3人、1年生5人計8人のゼミ生、直接指導を担当した食物栄養科古屋七虹助手が2カ月半を掛けて完成させた4品のメニューを用意した。報告会は中川教授が進行を務め、はじめに羽畑祐吾地域連携研究センター長、(株)ソイワールド長澤要市社長が挨拶。長澤社長は「皆さんが作ったものを何とか商品化を実現したいと思っています。今から(試食)楽しみにしています」と述べた。6人による試食では冬向きテイクアウトメニューにふさわしい豆腐・豆乳とのマッチングや食べやすさ、手軽さ、見栄えのする容器の選択などが総合評価され、出席者一人一人が感想を述べ好評を集めた。閉会後も双方の関係者で意見交換を熱心に行っていた。
■山梨学院短大と株式会社ソイワールドの特定事業協定ー
2023年4月1日、山梨学院短期大学と株式会社ソイワールドは特定事業に関する協定を締結。本協定により定めた地域の食と健康に関する教育・研究を深め地域の振興に寄与することを目的に、(株)ソイワールド商品を使用したテイクアウトメニューを開発し、商品化を目指すことで昨年、夏向けに5品の商品を試作し、今回冬向きメニューとして4品を試作した。(株)ソイワールドとの特定事業連携協定締結年度内(2024年3月31日まで1年契約)において進められ、特定事業協定は3件目となる。
■株式会社ソイワールドとはー
株式会社ソイワールドは、山梨県アルプス市を拠点に2009年(平成21年)に設立した。主力の豆腐、豆乳製品は一切妥協を許さない「全てにこだわった商品づくり」をコンセプトに、山梨県北杜市産大豆と南アルプスの伏流水、国産にがりを使用するなど原材料を吟味し、合成食品添加物を使用しないなど食の安心・安全を第一に、栄養価が高い品質の商品を開発・製造を進めてきた。現在、『大豆まるまるおっとうふ』『大豆まるまるドリンク』『おっとうふ豆乳アイス』をメインとする商品で東京、大阪をはじめとする百貨店や全国有名食品販売店、自然食品販売店、ホテル、県内大手スーパー、県内JAでの販売とネット通販で、数多くの販路を広げている。また、豆腐・豆乳を使用したレシピの開発にも注力し、会社設立以来、山梨学院短大食物栄養科・中川裕子教授研究室の協力のもと、さらに豆腐、豆乳の食品としての魅力を広げるべく新しいメニューの開発展開に挑んでいる。
■テイクアウトメニュー開発の最終報告、試食・意見交換ー
今回、山梨学院短大食物栄養科中川裕子教授ゼミで取り組んだのは豆腐・豆乳を使用した冬向きのテイクアウトメニューの開発。昨年夏向きテイクアウトメニューの開発から2回目の報告会は、(株)ソイワールド関係者6人が出席して試食会、意見交換が行われた。山梨学院短大は(株)ソイワールドと今年度4月に結んだ連携特別事業協定に基づき、食育活動の一環として中川ゼミ生8人が参加して行われた。午前11時00分、短大51号館106実習室での試食会は、メニュー開発を主導してきた中川裕子教授の司会進行で行われた。はじめに山梨学院短大食物栄養科長・羽畑祐吾地域連携研究センター長が挨拶。「学生の熱い思いが詰まっております。ソイワールドの皆様には学生の思いを汲みながら新しい味、新しい形をご堪能していただければと思います」と挨拶。続いて株式会社ソイワールド・長澤要市代表取締役社長は「名もない地方の小さな会社ですが、地元でもこういう若い方がうちの会社に行きたいと入ってくれて一緒に仕事をしてくれている現状があります。私たちもそれに応えて地元産生もので添加物を使わないなど特長を持った企業に何とかしたいという考えで一生懸命取り組んでおり、中川先生にご協力を仰いでいる形です。今後も、私たちは商品開発含めて、皆さんが作っていただいた商品を参考にしながら何とか商品化を実現したいと思っています。今から(試食)楽しみにしています」と述べた。
■若い創造力と感性が凝縮。4品のテイクアウトメニューの紹介ー
続いて中川教授とともに、学生を指導した古屋七虹食物栄養科助手が試食品を紹介。「商品開発には、学生とともにテイクアウトを考えて、食べやすく、手軽さ持ち帰りが便利な容器の選択からメニューの形態など俯瞰的に開発を進めた。また、夏向きレシピとの違いを豆乳から冬向きに豆腐を主に使用し、身体を温めるしょうがやトウガラシなどの薬味を合わせてソイワールドの濃厚な豆腐や豆乳だからこそできるレシピを意識した」と説明した。引き続き担当学生から4品のレシピのアピールポイントがそれぞれ紹介され、試食が始まった。
1.豆腐のしょうがスープ=血行促進効果のあるしょうがを用いることで、寒い冬に身体の温まる一品にした。水溶き片栗粉は、弱火にしてから入れて混ぜ、沸騰させると均一にとろみがつく。
2.豆腐チヂミ=最近のトレンドフードである韓国料理を取り入れた。キムチを生地に混ぜ込む際、大きな白菜は刻んでおくと食べやすくなる。
3.豆腐ハンバーガー=豆腐を丸ごと揚げてサンドすることで、コクのある濃厚な豆腐を味わえる。ソースを作る際、めんつゆは一度に加えると分離しやすいため少量ずつ加える。
4.豆乳そば=だし汁に豆乳を加えることで、濃厚なスープでそばを味わうことができる。甲州小梅を使用することで、山梨県らしさを演出した。
■ソイワールド関係者が一様に商品化に前向きな評価ー
6人の関係者は料理を試食しながら事前に配られたアンケート用紙に豆腐と料理のマッチングや感想を記入。試食後、それぞれが評価を述べた。関係者の意見は全体的に味については、どれも豆腐、豆乳とのマッチングが良く美味しかったという高評価。商品化に当たっては「どれもおいしい食になっていました。調理が難しかったと思いますが、特有の豆腐の味がちょっと足りない部分があった。商品開発の課程でもう少しブラッシュアップできれば」。「商品化としてのアイディアは面白いと思う。特に最近は小麦粉や動物性を使わないなどが女性のトレンドになってきているので罪悪感がなく、まったり感を演出できる」。「社長とは昔から豆腐のフルコースが食べられるようなお店をやりたいなと話していて、和食だけでなく中華や韓国だったりいろんなジャンルの豆腐のメニューの可能性を感じることができました」などの意見が述べられ、その中で株式会社ソイワールド・長澤要市社長は「今回、すべての完成度が高く、ちょっと手を加えればこのまま商品化できると感じています。ここまで仕上げてくれたことに皆さんの努力とご尽力に感謝します。(中略)商品開発は一度作ったからといってそのままOKということはあり得ません。ヒットするのは本当に数多くの商品の一つから生まれる時代ですので、今日試食会で食べさせていただいて感じましたが、このような若い感性の商品開発できっかけをつくっていただいたのでもう少し積み重ね、すり合わせして商品化ができたらものすごく面白い商品になるかなと思っています」と述べた。
今回の実施担当として指導した古屋七虹助手は学生たちの取り組みを、「2年生は10月から12月中旬までこのメニューの開発に集中してもらって毎週のゼミで取り組みました。栄養士からすると実際に作ってみて、塩分やたんぱく質、脂質、炭水化物あたりは揃えたいなという部分はあったんですけど、第一に見た目と、おいしさを優先すると栄養バランスは取りにくかったなと感じました。でも学生の中では塩分は0.8%で抑えてなどという工夫はしていて、そこらあたりはとてもバランスは取れているメニューになったかなと思います」と学生たちの意識の高さを評価した。また、「ソイワールドさんの豆腐がかなり濃度の高い豆腐なので、その香りが苦手な方もいらっしゃるので、その香りを活かしつつ食べやすく工夫することは難しかったです。味の面とテイクアウトの面で一番苦労しました」と学生たちとともに試行錯誤して4品を作り上げた。
■夏向きメニューから冬向きメニュー、商品開発に取り組んだ学生はー
試食会が終わって、「豆乳そば」を担当した磯野有沙さん(2年)は出来具合を、「味は問題なく、そばの茹でるタイミングは良かったんですけど、スープと麺が分離してしまったのがちょっと。勉強不足でした」と悔しさを表した。企業の商品開発に携わって、「めったに関わらないことなので学生時代に経験できたのは良かった」と話し、卒業後は栄養士として学校給食の現場に立つ。「豆腐のしょうがスープ」のメニュー開発に携わった押領司希さん(2年)は関係者の感想の一つにしょうがをもう少し抑えたらとの意見に、「私はしょうがが好きなので今のままでもおいしいと思うんですけど、人によっては感じ方が違うので提供する方はもう少し抑えた方がいいのかな思いました。でも、高評価を得られて良かったです」と味の難しさを実感した。企業の商品開発を経験したことに、「レシピを開発する上で大学で学んだ栄養の知識や調理技術・方法が活きています」と基礎の学びの大切さを話した。卒業後は、栄養士の資格を取り就職はせずに『食』を土台に新たに進学の道を選択するという。今回、最も反応の高かった「豆腐ハンバーグ」を提案した高井鴻弥さん(2年)はレシピで苦労したことに、「本来メインになるパティを豆腐にすることで、味付けに工夫しました。豆腐の今回使った『おっとうふ』の特長である濃厚でコクがあり、まろやかな味の豆腐に合うソースを作ることに工夫をしました」と試行錯誤を続けた。商品開発に携わったことには、「『おっとうふ』を使うことがテーマだったのでその味を活かし、損ねてはいけないことを意識して考えました」と話し、卒業後は栄養士として社会への一歩を踏み出す。
最終報告会終了後、中川裕子教授は「1年半というゼミ活動を本学は行っていますので、今回その中で、豆腐・豆乳に向き合った1年半でした。夏、冬の季節感にも応じた献立作成ができたということで本当に学生たちも食材の良さを知りつつ、それをどう活かしたらいいか自分たちの創造力や食べたいもの、人々が何を求めているかまで考えながらやってきました。学生たちには、これが商品化されるんだという夢のようなお話でそれに向ける力の入れ方も通常よりもスキルアップができた気がします。ある(既成の)献立を作るだけではなくイチから作り上げる活動の中で学生たちの成長が感じられた1年でした」と今回の特定事業協定に基づく取り組みを総括した。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2024.2.29