●山学高で復興庁職員による出前授業「福島の復興」を考える
~震災から13年。災害を風化させない 復興庁が山梨初の授業~
~山学高特進コース40人が「復興」で何ができるかを議論~
10月23日、山梨学院高校で国の行政機関復興庁の職員による「福島の復興」について考える出前授業が行われた。復興庁では2022年度より、全国各地の中学・高校へ復興庁職員を派遣する出前授業が行われており、この出前授業は山梨県では初の試みで山学高2年生の特進コースの1クラス40人が通常授業の一環として出席した。「福島の復興はどのくらい進んでいるのか」、「震災を風化させないためにはどうすべきか」、「どうしたら風評の影響を払拭できるのか」などのテーマで福島の復興をクラス全員で考えた。出前授業は初めに復興庁宇野善昌事務次官が東日本大震災の概要、復興の現状、残され課題などを紹介。その中で復興の課題では福島原子力発電所の重大事故に触れ、『除染は進み福島産の農水産物は現在、健康に影響のない放射線量になっているが、いまだに風評被害の影響があり、原子力災害の復興はまだ終わっていない。そのためには原子力災害を知ることが大事でそのためには復興に対し一人一人が何をできるか考えてみよう』と問いかけた。その後、出席した生徒が8グループに分かれ、用意された3つのテーマを一つ選びグループディスカッションを行い、様々な意見を発表した。それに対しての寸評で宇野事務次官は「災害の恐ろしさ、災害について風化させず、語り継ぐこと」が重要であると指摘した。この様子は多くの報道各社が取材に訪れ、関心の高さを示していた。授業終了後には生徒たちへ福島産のリンゴが配られた。
■復興庁による「福島の復興」をテーマにした出前授業ー
10月23日午後1時55分6校時。山梨学院高ルネサンスホールにおいて山梨県で初となる復興庁による出前授業が実施された。授業開始前、山梨学院高・宮崎健副校長が「復興庁の方々が直々に授業してくれるまたとない機会ですからみなさん、ここに(テーマが)並んでいますが、それをよく知って考えて最後はその考えをみんなで発表して、それを聞いて考える。そういう貴重な時間にしてください」と挨拶。その後担当者から授業の流れの説明があり、復興庁・宇野善昌事務次官が東日本大震災の概要、復興の現状、残された復興の課題、復興の伝承などをスライドとⅤTRを使い紹介した。生徒は、詳細に書かれた冊子を見ながら宇野事務次官の説明に耳を傾けた。生徒は震災があった2011年3月11日当時3歳から4歳の幼児。生々しい様子を知るものはいなかった。話を順に進める中で、宇野事務次官が特に力を入れたのは、東京電力福島原発の津波による原子炉の重大事故のことが紹介された。当時約16万人の避難者がいたが、今も約2万6千人もの人が避難を余儀なくされている。現在は、除去や自然減衰などにより、放射線量は韓国、イギリス・ロンドンと同率になったがその間には農水産物の中国などの輸出制限や様々な風評被害が広がり、まだ少なからず残っている。「福島の復興は着実に進んでいますが、まだまだでやっとスタートラインに立ったところではないかなという状況をよく知っていただいて、ぜひ応援してもらいたいと思います」と宇野事務次官は生徒に呼びかけた。続けて最後に震災を語り継ぐためにと「(抜粋)災害の恐ろしさを心で感じていただいて、災害が起きる前に何をしたらいいか。福島の今を正確に知っていただいて応援してほしいと思います。そして、風評を生み出さないために放射線に関する正しい知識を得てほしい」と次のディスカッションにつながるテーマを生徒に与えた。
■グループディスカッションに議論するテーマを3つ用意されたー
◆①東日本大震災など大災害に対し、自分たちはどう行動すべきか
このテーマは8グループのうち1グループが議論した。その内容は「過去の災害を調査したり現地の人の話を聞くことで今後に有効な政策が考えられる」。「募金活動に協力して人を助けることで次の自分たちも守られる」などと次につなげる取り組みの意見が出た。
◆②福島を応援し、関心を持ってもらうには、どのような取り組みが必要か
このテーマについて最多の6グループがアイデアを出した。「大企業の誘致や労働者の雇用を促進する」。他のグループは「小中学校の義務教育で災害の実態を知ってもらい、地元の祭りやイベントで人を呼んで福島の特産物などをPRする」、「給食で福島産の食材を多く使ってもらい食の安全を知ってもらう」、「全国で福島産の特産物展を開催する」、「現地の情報を発信し、来てもらうことで地元の魅力を実感してもらうためツアーやキャンペーン情報を多く発信する」、「国から税金(補助金)をもらって施設をつくるのではなく、クラウドファンディングで自分のお金を寄付をしてもらうことで福島を自然豊かな第二の故郷になることに関心を持ってもらう」など多くの意見が発表された。
◆③放射線の基礎知識や健康影響など正しく知ってどのような取り組みが必要か
3番目のテーマに1グループが挑んだ。「震災や地震の知識はある程度あるが、放射線の危険性については知る機会がないので学校の授業に積極的に入れてもらうことが大事」「情報媒体として影響力のあるインフルエンサーが情報発信することで若者に広く伝えることができる」などと各テーマで様々なアイデアが発表された。これを受けて宇野事務次官は「非常に皆さん真面目に熱心に聞いてくれたと思いますし、その後の話し合いもみんなで意見を出し合って、積極性のある素晴らしい生徒さんたちと思いました」と感想を述べた、
■授業を受けた二人の生徒に聞いたー
授業終了後、生徒の一人は授業の感想を「ためになったものもありますし、自分が知っている現状だとまだまだ知らないことがいっぱいあって、改めて復興の大切さとか、自分が後に伝えるという使命感も感じました」。授業で印象に残ったことは「授業を受ける前はまだ放射線が残っているものだと思っていたので授業を受けた後に放射線に汚染されてなくて安全な地域がいっぱいあるんだと知りました」と伝える力の大事さを感じた。
他の生徒は「本当に今日の授業はメチャメチャためになった授業でした。強く印象に残っているのは放射線について何も知らなかったことが一番大きなもので、まだ生活ができていない地域があるということを全然知らなかったことを今日知りました。自分の身になったら本当に大変だろうと思って胸をぎゅっとなるような気持ちになり、今日の話を聞いて現地に行って自分の眼でちゃんと見て伝えることが今後大事だと思うので機会があれば行ってみたい」と真剣な眼差しで応えた。
授業終了後には、復興庁職員が用意した福島産の安全なリンゴが生徒に配られ大事そうに手にしていた。この出前授業は24日、市立甲府商業高校でも行われる。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2024.10.23