●山学高2年連続花園へ 全国高校ラグビー県予選決勝戦
~フィジカルの強さと組織力で2年連続伝統校日川を粉砕~
~花園に向け、課題の反則を修正して昨年の悔しさに挑む~
「第104回全国高校ラグビー大会山梨県予選」決勝戦が11月10日最終日、南アルプス市御勅使南公園ラグビー場で行われた。復活4年目を迎えた山梨学院高ラグビー部(山学)が17連覇52回の出場を誇る伝統校日川高を43-3、ノートライで破り『高校ラグビーの聖地・花園』へ2年連続2回目の出場権を獲得した。山学の鍛え上げた強力なパワーを誇るFW陣と日川のキックと伝統のアタックの対抗が見どころの試合は開始3分、山学#10SO小嶋咲汰朗が先制のトライを決め5-0。その後、拮抗が続いた11分、日川がPKを得てPGを決め5-3と迫った。終盤に入り、日川陣内の山学ラインアウトを起点に#12CTB井上愛斗が日川ディフェンスを振り切りトライを決め、コンバージョンキック(GK)も決まり12-3と山学がリード。前半、両者それぞれの持ち味を発揮した。後半開始早々、#7FL原田尊が、右サイドランを一気に走りトライ、さらに5分、日川のゴール前の混戦に#8佐野涼太がトライ。GKも決まり26-3と点差を広げた。日川もチャンスを作り反撃するが19分、再び山学#7原田が右サイドを突進、#3PR鈴木涼平につないでトライ。31-3と点差を広げた。その後、28分には#6FL渡邊颯太、ロスタイムの33分、途中交代の#19田形正大がモールからトライ。GKも決まり43-3。直後、ノーサイドの笛が鳴り、山学の2年連続の花園出場が決まった。全国大会は12月27日開幕する。
■山梨学院高校ラグビー部 復活4年目にしてさらに進化ー
山梨学院高校ラグビー部が2021年4月に正式に復活し4年目を迎えた。昨年、3年がかりで高大連携の効果もあり「打倒、日川高」を掲げた目標を達成。“高校ラグビーの聖地・花園”のグラウンドに立った。年末の花園、初出場の山梨学院高の初戦。長崎南山高校との対戦で1点リードの終盤、痛恨のPGで逆転され26-28。2点差で勝利を逃がしたが新しい歴史の一歩を刻んだ。そして、迎えた全国高校ラグビー大会県予選を勝ち進み決勝戦、昨年同一カードの日川高校との対戦となった。日川とは、今年1月の県新人大会、5月の県総体に勝利している。
■鍛え上げられたフォワードとバックスの連係で2年連続花園出場を目指すー
決勝戦の始まる午後1時35分前、曇り空の下、には両校の応援団や保護者やラグビーファン約500人の観衆が詰めかけた。前半、日川高のキックオフで試合が開始されると、試合は立ち上がり、日川のゴール前での攻防から日川がスペースに蹴ったキックを山学が捉え、#15・FB篠原悠士(3年)が相手守備を崩し突進。#10・SO小嶋咲汰朗(3年)が篠原のオフロードパスを受け先制のトライで5-0とした。難しい位置からのコンバージョンキック(GK)は#15篠原がポールの左に外した。その後、山学の100㎏を超えるFW陣の圧力を日川のタックルで凌ぐ拮抗が続いた11分、山学の反則により日川がPKを得ると、PGをきっちり決め5-3と迫り、PGを決めた日川にやや流れが傾く。開始5分半、日川の2つ目のペナルティキック、ラインアウトからモールで山学ディフェンスをゴール前まで押すが山学が守り切り難を逃れた。終盤、日川陣内の山学ラインアウトを起点に、激しいブレイクダウンから山学がボールを奪うと左、右、左に大きく展開。その中から#12・CTB井上愛斗(3年)が日川ディフェンスを振り切りトライ。GKも決まり12-3と山学がリード。両者それぞれの持ち味を発揮した好ゲームの前半は12-3で終了。
■後半、日川の鋭いタックルに苦しむも、勝負所で一気に突き放すー
後半、サイドが変わり山学のキックオフで試合が始まった。開始早々、日川のハイパントキックを山学が奪うと、#15篠原の突進に右へ展開。それを受けた#7・FL原田尊(3年)
が、狭い右サイドランを日川のタックルをかわし一気に走りトライ。GKも正確に決め、
19-3と差を広げ優位に立った。さらに5分、日川はゴール前の山学FW陣の強力モールに耐え切れず#8佐野涼太(3年)がトライ。GKも決まり26-3と点差を広げた。それでも8分、日川の攻撃陣も得意のキックで山学22m陣内に挽回。ラインアウトからモールやブレイクダウンで山学ディフェンスを苦しめた。その混戦で#15篠原はシンビン(危険なプレー)によるイエローカードで7分の退場。山学は一人減り、日川は勢いを増し、さらに山学ゴールへ迫った。しかし、山学の強靭なFW陣は6分間の猛攻に耐え続け、日川のノットリリースボールの反則でようやく山学ボールに戻った。19分、山学はターンオーバーで日川のボールをカットすると右へ展開。再び右サイドから#7原田がタックルをかわしながら#3・PR鈴木愁平(2年)にゴール前でパス。鈴木は日川ディフェンスを引きずりながらトライを成功させた。これで31-3とさらにリードした。山学はFW前列3人を代え、日川の攻撃に備えた。なおも28分、山学は日川22m陣内にペナルティキックでチャンスを作り、スクラムの密集から出たボールをつなぎ#6・FL渡邊颯太(3年)が右中間にトライ。GKも決まり38-3となった。さらにロスタイム残り1分を切り、モールから途中交替で入った#19田形正大(3年)が5点を加え43-3.最後のGKは外したがここでノーサイドの笛がグラウンドに鳴り響いた。
■山梨学院高スターティングメンバー
〇#1・PR渡辺侑③、#2・HOヘンダーソン・リアム③、#3・PR鈴木愁平②、#4・LO文箭優翔③、#5・LOチトコ・フィリペ③、#6・FL渡邊颯太③、#7・FL原田 尊③、#8佐野涼太③、#9・SH菅沼直樹②、#10・SO小島咲汰朗③、#11・WTB三木良唯吏③、#12・CTB井上愛斗③、#13・CTBフォトフィリ・パエア③、#14・WTB川住昇大③、#15・FB篠原悠士③ ※#前の〇印は主将
◆交替=(15分)#5⇒#20下條友成③、(19分)#9⇒#23松隈孝信③、(21分)#3⇒#18ポレ・ゼリアミ・マロロ①、(21分)#②⇒#19田形正大③、(21分)#1⇒#16石倉蒼汰②、(26分)#13⇒#24石原玄飛②、(26分)#14⇒#25宮里楽空①、(27分)#8⇒#22代田琉梧③
第104回全国高校ラグビーフットボール大会山梨県予選 決勝戦 《山梨学院高校VS県立日川高校》11/10 御勅使南公園ラグビー場 |
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〇 山梨学院高校 43 | 前半 12-3 後半 31-0 |
3 日川高校 ● |
山梨学院トライ=#10小嶋咲汰朗、#12井上愛斗、#7原田 尊、#8佐野涼太、 #3鈴木愁平、#6渡邊颯太、#19田形正大 コンバージョンキック=#15篠原悠士4 日川トライ=0、ペナルティキック=1 |
試合後、古屋勇紀監督は「前半苦しい展開が続いたんですけど、さらに篠原をシンビンで7分間欠いた時間帯がある中で、ゴール前まで攻め込まれましたけど、そこでの粘り勝ちというかあそこが1年間のすべてを象徴するようなディフェンスだったですね。ノートライに抑えたが「特にフィジカルについては1年間ここをメインで取り組んできたので前面に出すというかフォワードがフィジカルバトルの面では機能していました」。前半のピンチを守り切ったことは「1年間を通じて強豪校とかなり強化試合を積んできたのでそこでの経験が大きかったのかなと思います」。今年のチームの強みは「フォワードのフィジカル面、それを前に出すことができるキッカーの精度、キック力によってフォワードを前に出すことでトライラインまでボールを持ち込める。その辺だと思っています」。全国に向けては「やはりあの大きな舞台で去年は2点差で負けたんですけどペナルティの数は12対4と、ラグビ-ではありえない反則を重ねて、それによってリズムを崩して、ああいうスコアになったんですけど、今日も前半、そう意味ではまだまだ反則をしているのでその課題を修正して全国大会に入れればなと思っています」とインタビューに答えた。
スクラムリーダーとして最前列でチームを率いた渡辺侑主将は「前半、我慢比べで我々が相手にダメージを与えて、後半、身体を当ててドライブとかタックルでダメージを与え続けていくことで安定感ができたのかなと思います」。篠原選手がシンビンで退場になって苦しい場面があったがノートライで抑えられたことは「総体の時もシンビンで一人欠いてその時はワントライされたので横のつながりを忘れないように、コミュニケーションを取り合ってバックスが抜けた部分、フォワードがハードワークしようと言い続けてあの時間を耐えたのが良かったです」。花園に向けて「年越しを最近、山梨県はしていない中で、ベスト4なんですけど、メチャメチャ難しい目標だと思うんですけど、それでも練習量とか練習の質を上の強豪のチームに劣ってはいけないと思うし、身体づくりの面でもまだ時間があるのでじっくり取り組んでいきたい」と意気込んだ。
後半の速い時間帯でトライし、チームを勢いづけた原田 尊選手は「日川さんも強かったので、前半は、自分たちの思うようにはいかなかったですけど、後半では自分たちがやってきたことができたと思っています」。狭いライン際を駆け抜けたトライに「自分のトライで悪かった流れが変わったと思います」と試合を振り返り。花園で戦うには「フォワードの平均体重が重いのでセットプレーのスクラムモールでトライできれば」と意欲を示した。
FWに的確な指示を出した昨年の花園経験者の一人。#8佐野涼太選手は「自分たちは前半の入りを大事にしてきたので、いい入りができて良かった」。昨年、悔しい思いをしたが、「3年生が卒業して、今度は自分たちがやっていかなくてはという中で、仲間を引っ張ることを意識して1年間やってきたのでそれが出せたのではないかなと思います」と話した。
「第104回全国高校ラグビー選手権大会」は12月7日に組み合わせ抽選会が行われ12月27日、東大阪市花園ラグビー場で開幕する。山学の初戦の勝利を期待する。
文(K.F) カメラ(小池裕太) 2024.11.12