●第50回全日本大学レスリング選手権大会2日目
~山学2位に約倍の得点差で5年振り優勝 団体二冠を達成~
~全階級8種目で進出した決勝で5勝3敗と得点を伸ばす~
「第50回内閣総理大臣杯全日本大学レスリング選手権大会」2日目が11月10日、大阪府堺市金岡公園体育館で行われた。個人の成績ポイントによる大学対抗戦で争われる大会は1日目に10階級の決勝進出校を決め、2日目に敗者復活戦後に決勝戦が行われた。山梨学院大は1日目を終え、準決勝までに過去に実績がない出場8階級中全階級で決勝に進出し、事実上優勝を手に入れたが選手たちは緊張感を持って挑んだ。午前に敗者復活戦が行われ、続けて決勝戦は午後0時15分から軽量級から順に行われ、最初の57㎏級勝目大翔が不戦敗で幕を開けた。2番手の61㎏級須田宝は後半まで苦しんだが4点差を大技で6-6の同点にすると点の取り合い後、12-8で先陣を切った。続く65㎏級荻野海志は前回この大会で3位の専修大選手と対戦。順調に得点を重ね勝利。次は、70㎏級から74㎏級に階級を上げた森田魁人は今年のインカレで1年生王者になった早稲田大の選手と対戦。互いに決め手がなく森田が1-1のラストポイントを奪い辛くも勝利。続く79㎏級に階級を上げた鈴木大樹もこの階級で2連覇を狙った日体大選手に苦戦するも、後半1分を切ったところで同点ポイントを奪い2-2。ここもラストポイントで粘り勝ちした。86㎏級五十嵐文彌は相手を横に振る戦法で翻弄して快勝。ここまで山学大は5連勝1敗。決勝戦でも躍動した。続く97㎏級、125㎏級は敗れたものの、5年ぶりの優勝と東日本リーグ戦優勝の二冠にも輝いた。
大会2日目。1日目に準決勝まで行われ、決勝に進出したのは山学大出場階級全8階級、昨年優勝の日体大が2階級、他に専修大と拓殖大が2階級、早稲田、日大が1階級で山学大を追随する。山学大が優勝すれば5年ぶり8回目、一番の実績を誇る日体大であれば5年連続25回目となるが、準決勝終了時において、過去に実績ない全階級8階級決勝進出でほぼ優勝が決まっている。
≪11/10 大会2日目決勝戦結果 ≪5勝3敗≫ 大阪府堺市金岡公園体育館 | |||
階級・氏名・学年 | 決勝戦 | 階級・氏名・学年 | 決勝戦 |
57㎏級勝目大翔② | VS.拓殖大:不戦負け ● |
79㎏級鈴木大樹④ | VS.日体大2-2 ラストポイント 勝利 〇 |
61㎏級須田 宝② | VS.専修大 12-8〇 |
86㎏級五十嵐文彌③ | VS.拓殖大 10-0 〇 |
65㎏級荻野海志③ | VS.専修大 7-2 〇 |
97㎏級増田大将② | VS.日体大 0-10 ● |
74㎏級森田魁人④ | VS早稲田大 1-1 〇 ラストポイント勝利 |
125㎏級ソヴィット アビレイ③ |
VS.日本大 0-12 ● |
※出場順は、左の軽重級から右の重量級 |
◆57㎏級勝目大翔(2年)は2日目、決勝戦に負傷棄権し、不戦敗となった。1日目に負傷の影響で本来の戦いができなかったが、4試合を全力で駆け抜け無敗のチームの決勝進出に貢献した。勝目大翔選手は「去年、自分が負けて点数も取れないまま、大学も2位で終わってしまい、去年の悔しさを晴らしたいと臨みました。そして去年、全然貢献できなかったので全員が決勝できてすごいなという気持ちとうれしさでいっぱいです」。勝目は12月の天皇杯に向けて、調整を続けていく。
◆61㎏級須田宝(2年)は正選手の小野正之助(2年)が故障の悪化を避けて欠場のため副選手として出場した。須田は8月の全日本学生選手権(インカレ)でこの階級の優勝者して実績を残している。決勝戦、前半相手のパッシブ(消極的)で1得点を獲得。さらに外に出して2-0で折り返す。後半、中盤に相手の大技で逆転されるが、すぐに須田も巴投げで6-6と同点。その後は得点を加え再逆転12-8で勝利した。試合後、須田宝選手は「自分が思っていた通りにいかなかったですけど後半、自分が攻めてしっかりポイントを重ねることができましたが、反省もあった試合でした」と振りかえった。1日目の快進撃には「インカレも優勝して、研究されていた部分もあったので、そこも通して自分のスタイルを貫くことができたのが良かった」とまた大きく羽ばたく選手が誕生した。
◆65㎏級荻野海志(3年)は、今年、U23世界選手権2位に入り勢いに乗る。立ち上がりから積極的に攻め、先制してから同点に追いつかれるが前半終了間際に4-2とし後半に。一進一退の展開の終盤、残り1分を切ったところで相手を捉まえ、タックルからバックを奪い7-2で勝利。チームは2勝1敗。荻野海志選手は団体優勝について「どのチームも万全でない状況ではあったと思うですけど、うちは全員が万全で出場できて、そこで自分の力を発揮すれば優勝できると自分は思っていたので、仲間を信じて自分の力を出し切ることをしたまで」淡々と話した。次に向けては、「いろいろな試合をこなして優勝を目指すというか、自分のレスリングを完成する意味で試合に向き合おうと思います」と目標に貪欲だ。
◆副主将74㎏級森田魁人(4年)は、この大会のため70㎏級から74㎏級に階級を上げた。決勝戦前に筆者と廊下で行き会うと、「増量が大変、今は約72㎏位」と顔をしかめた。対戦相手の早稲田の選手は8月のインカレに79㎏級で出場して1年生でありながら優勝した新生。前半、森田は落ち着いて試合に入るがパッシブでコーション1点を先制された。後半、森田は1点を入れ挽回。中盤は攻め合い好機をつくるも、両者のディフェンステクニックのうまさで勝ち越しポイントが奪えず、そのまま終了。あとで同点にした森田がラストポイントで辛勝。森田魁人選手は開口一番「しんどすぎてあんまり覚えていないんですけど、良かったですね。優勝できて」と満面の笑みで喜んだ。4年間切磋琢磨して、優勝への思いは「自分たちの代でリーグ戦と内閣総理大臣杯を取れたことは、これからの自分の人生の大きな出来事だと思います」と苦労して手にした優勝を噛みしめた。
◆主将の79㎏級鈴木大樹(4年)は国スポ74㎏級で優勝。この大会では森田と同じく79㎏級に上げて決勝まで来た。相手は前回大会この階級で優勝、2連覇を狙う。試合は、相手の圧力に押され気味に後半中盤までパッシブにより2点を失った。その後も相手の攻撃を凌ぎながら残り1分を切ったところでチャンスが訪れた。相手足にタックルが決まりバックを奪い2-2に追いつく。その後は相手の猛攻を何とか凌ぎラストポストで勝利。二人でチームをまとめ上げてきた森田とともに貴重な勝利を収めた。
鈴木大樹選手は「団体優勝を目標にしていたので達成でき良かった」と背負った主将の責任を解放し、安堵の表情を浮かべた。1階級上げた79㎏級での戦いは「チーム事情ですけど、体重差や力負けが不安だったですけど、ガンガン攻める予定でしたけど、相手の組手が上手く中に入れなくて、でも4年間、毎日走っている自分のスタミナが保って何とか優勝できて良かった」と細い目をさらに細めて笑みを浮かべた。
◆86㎏級五十嵐文彌(3年)は立ち上がりから積極的に攻め、相手を防戦一方にする。中盤にタックルから相手を投げる大技が決まり4-0。その後、2ポイントを決め前半を6-0で前半を収めると、後半もスピーディーな攻撃で相手の側面を回りながら、相手の隙を見極め得点。残り2分で10-0のテクニカルスペリオリティ(VSU)で勝利。2戦目から5連続勝利。五十嵐文彌選手は「個人の優勝はうれしいですけど。チームの優勝はメチャうれしいです。でも自分は反省点しかないですね。良いところが一つもないです。これではシニアでは戦えないなと感じました」と謙虚に答えた。次に出場する天皇杯(全日本選手権)に向けて「社会人の二人が強くて実力も向こうが全然上なので胸を借りるつもりで臨みます」とあくまで控えめに話した。
◆97㎏級増田大将(2年)は1日目の試合を今回の一番の殊勲者してチームに勢いをもたらした。決勝戦では昨年のインターハイで優勝。同年のJOCジュニアオリンピックU20の覇者と対戦。相手の力強い攻撃力で前半を0-6。後半も相手に押し負け0-10で敗退した。増田大将選手は「初日はいい感じで勝ち上がれて、チームのみんなも決勝に行けてすごく良くて・・・。でも決勝でもみんないい感じで勝っていたのに自分だけちょっと情けない負け方をして悔しいなと気持ちがあります。入学した時はみんな勝てなかった人ばかりだったんですけど、そういう人に勝てたことはうれしいですけど、まだ課題が残りました」とこれからに前を向いた
◆125㎏級ソヴィット・アビレイ(3年)は、1日目の4試合をテクニカルスペオリティで3試合、1試合を不戦勝と相手を寄せ付けずに順調に勝ち上がった。2日目、決勝戦の相手は日大・吉田アラン。階級を30㎏上の最上重量の125㎏級に上げて参戦した。本来は92㎏級で国際大会でも実績を挙げ、昨年のアジア選手権で優勝して若きチャンピオンとして注目されている。試合は、アビレイのプレッシャーをものともせず軽い身のこなしで翻弄。アビレイも攻撃を仕掛けるが軽いいなしからカウンターで着々と点を重ねられ0-11で敗れた。ソヴィット・アビレイ選手は「優勝はうれしいですけど、決勝戦はちょっと恥ずかしいです。次は頑張る。練習に頑張ります」と悔しさと照れ笑いを見せた。
山学は決勝戦を5勝3敗となり、団体対抗得点を87点(大会最高得点は日体大の87.5点)とし、2位となった拓殖大(44点)に約2倍の差をつけ圧勝した。
試合終了後、小幡邦彦監督は「出る階級全部優勝を目指したんですけど、最低限4つは取りたいと思っていたんで、5階級取れたことは良かったと思っています。86と65は普通に勝てると思っていたので、それ以外の勝負するところは僅差の接戦でしっかり勝ちきってくれたので、そこは選手の成長も感じましたし、そこの階級は4年生のキャプテンと副キャプテンが大事なところを勝ちきってくれ、波に乗せてくれました」と4年生を称えた。
最終順位は、1位:山梨学院大(87.0点)、2位:拓殖大(44.0点)、3位:日本体育大(43.0点)、4位:専修大(34.5点)、5位:日本大(32.0点)、6位:育英大(24.0点)、7位:中央大(23.5点)、8位:東洋大(23.0点)と2位の拓殖大に2倍近くの
得点差で5年ぶり8回目、東日本リーグ戦に次いで8年ぶりの二冠制覇に輝いた。層の厚い山学大の進撃はまだまだ続く。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2024.11.10