山梨学院広報課

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●山学短大栄養士コースで「専門的実践力外部試験」
~2年間の学びが審査員の“おいしい”の言葉に凝縮~
~対象者に寄り添った温もりの一品が揃う~

山梨学院短期大学食物栄養科栄養士コースで2年間学んだ学生が卒業する集大成として実施される2024年度「専門的実践力外部試験」が2月18日、19日の両日、短大調理実習室で行われた。この外部試験は文部科学省に認定された「卒業時における『質保証』の取り組みの強化」として8回目となる。「喫食者に見合った献立が作成できること」「献立に沿った調理ができること」を栄養士の最も基本の専門的実践力と捉えており、本試験は、この専門的実践力がどれだけ身についているか、学外の管理栄養士から評価を受ける栄養士コースの卒業試験である。今年度は、栄養士コース2年生37人が2日間午前・午後組4グループに分かれ、1日目の午前の部に10人が試験に臨んだ。内容は、成人女性(18歳~29歳)を対象に学食や社員食堂で提供される冬(2月)の昼食献立を想定し、あらかじめ与えられた課題で献立を作成し、実際に1人分を調理・完成させる。学生は、この日までに何度も試行錯誤を繰り返し作り上げた独自の献立を約1時間半で調理。作業中には外部審査員が献立表を手に調理台を回り、献立基準通りに作業が行われているか確認した。料理完成後には、学生は審査員に献立についての思いをアピールした。それに対して審査員は材料や味付けや彩り、調理技術の適切さなど細かいやり取りを交わし、その後講評を行った。結果は10項目にわたる評価表を基に厳正な審査を経て、卒業式事前指導において配布される。

■学外の食の専門家から評価を受ける「専門的実践力外部試験」ー
山梨学院短大食物栄養科では2年間の学びの中で専門的な知識・実践力・総合的人間力を養い、専門職として社会に貢献できる力を卒業時に学生が確実に身につけられたのか、学修成果を学内外の両輪で評価し、目に見える形で提示していく仕組みとして、「専門的実践力外部試験」を2年生のカリキュラムに設定。食物栄養科栄養士コースは2017年度から行われ今回で8回目。同科パティシエコースは認定年度の2016年度から実施し、今年度はすでに1月21日に行われた。身体活動レベルの成人女性(18歳~29歳)が利用する学食または社員食堂の冬(2月)の昼食献立1食分を想定し、あらかじめ与えられた基準の中で学生たちは昨年8月頃から準備を始めて自ら献立を作成。その後、教員の指導受けながら家庭での試作を繰り返し試験への準備を進めてきた。2月12日に最終献立表を提出。18日・19日に2年間の集大成となる「専門的実践力外部試験」が実施された。2年生37人が2日間午前、午後組の4グループに分かれ実技試験に臨んだ。

■2年間の学びのすべてを懸けるー
2月18日、外部試験1日目朝9時に午前の部の学生10人が短大51号館204調理学実習室に集合した。身支度、材料測定、調味料計測など事前準備を済ませ、試験開始を待った。山梨学院短大食物栄養科・鈴木睦代専任講師管理栄養士の司会進行で開始された外部試験は、最初に山梨学院短大・中川裕子食物栄養科科長が挨拶。「今日、皆さんの2年間の学びの成果を専門の3名の先生から評価受ける大切な機会です。私は3つのアドバイスを考えてきました。今日はいろいろな形で練り上げてきた献立てと思います。その力を存分に発揮してください。2つ目は、皆さんが社会に出るにあたってありがたい機会だと思いまですので、取り組みの中で作業工程とか材料の種類だとかしっかりと整えながら調理をしてください。3つ目です。この慣れ親しんだ調理の実習室で実際に調理するのも、最後の機会になります。皆さんがこの時間を有意義に、そして楽しみながら料理を作ってもらえたらきっといい成果が生まれてきます。この3つを念頭において取り組んでください」と述べた。

■審査員の紹介ー。
続いて山梨県内の食に関する第一人者3人の外部審査員を紹介。一人目はこの「専門的実践力外部試験」が2018年に始まった当初から審査委員務める秋山知子氏。現在、山梨県栄養士会の常務理事、一般社団法人「ポプラの木」代表理事。さらに山梨学院短期大学外部評価委員を務める。2人目は山梨県栄養士会副会長の堀口一美氏。秋山氏と同じく1回目から「専門的実践力外部試験」審査委員。現在、山学短大外部評価委員を務めている。3人目は赤沢明美氏。本短期大の卒業生で元石和温泉病院栄養室長を歴任。現在は甲府市、甲斐市の特定保健検診と乳児検診の管理栄養士、また山梨厚生連の管理栄養士として勤めている。

■3人の外部審査員による10項目にわたる詳細な評価基準ー
評価は昼食『給食』を献立・調理を目的にしており、家庭料理ではなく1食の給食としての形がしっかりとれているかが大切となっている ❖⓵食事摂取基準となる見合った献立になっているか ❖⓶食品構成をもとに1食分として適切な量となっているか ❖⓷1食分の体裁(主食、主菜、副菜の組み合わせ、分量など)が整っているか ❖⓸各料理の味付けは適切であるか ❖⓹衛生的(食材の取り扱い、加熱状況等)な配慮がなされているか ❖⓺「給食」として経済的な配慮がなされているか(350円以上500円未満) ❖⓻材料に対して適切な調理がなされているか(調理技術は適切であるか)。❖⓼適切な容器に体裁よく盛り付けられているか ❖⓽おいしそうな色合いとなっているか ❖⓾献立(料理)は、作成者の「意図」や「思い」が反映されているかの10項目から評価され、3人の学外審査員の得点の平均点を算出し、その値を「総合得点」とする。

◆学生たちの調理時間は約1時間半。限られた時間内に、2年間の学びのすべてを懸けて調理に挑んだ。何回も繰り返した試作に自信を持ち真剣な表情で黙々と主菜、副菜、汁物、デザートと仕上げていった。審査委員は、調理開始とともに各調理台の学生ひとり一人に献立のアピールポイントや使用した食材、工夫点などを聞いて回り、上記の評価基準のチェックをしていた。調理終了後は、出来上がった順に写真撮影をし、審査員へのプレゼンテーションに臨んだ。審査員はそれぞれの学生が調理した献立を試食しながら献立への思いや調理への工夫を聞き、長年現場で培った経験と提供される対象者視点から厳しい指摘やアドバイスを織り交ぜながら採点をしていた。

◆調理、プレゼン終了後の講評では、まず、堀口一美審査員が評価項目⓵~⓹まで、⓺~⓾までを赤沢明美審査員が審査し、どの項目も色々な工夫がなされ二人は概ね好評価を与えた。最後に秋山知子審査員は総評して「はじめに各テーブルを回った時に、皆さんそれぞれが臆することなく、家で何回も調理してきて自信に満ちた姿が見えました。プロを目指していることが実感できました」。出来具合については減塩などに考慮し、メインのものはしっかり味を際立させ、添え物で香りを立てたり調整していることを感じたと技術の高さを評価。続けて、「栄養士としてあの人に食べてもらいたいなど、些細なことがモチベーションとして大事です。ただ栄養価やバランスを合わせるだけではなく、おいしそうな顔をしたらうれしいなとの思いを身上にして仕事をしていくと、いろんなものが上達したり、もっとおいしいものができるようになると思います」と食べる人を思いやる心が大事とした。

■2年間の知識と技術をつぎ込んだ献立を調理ー
「カレー風肉じゃが」を主菜に献立を選んだ南アルプス市在住の糸井百花さんは、冬が旬の白菜やかぼちゃ、じゃがいも、玉ねぎの野菜を使用、主菜、副菜など献立にそれぞれに入れ、肉じゃがをカレー風味にしたことで塩分を控えた。「カレー風味は家でもあまりやったことがなくチャレンジしたんですけど練習を何回もして、練習よりも上手くできて良かった。副菜の白菜塩昆布和えはごまの風味を感じられるように工夫した」と自信の程を示した。対象者にはどんな思いで作ったか「今回は若い成人女性の献立だったので肉じゃがをカレー風味にすることで興味を持ってもらうようにしたのと、塩分を控え目にして健康面に気を使った献立にしました」。卒業後は、保育園の栄養士として就職する予定。
静岡県出身の小俣有咲さん「豚肉と野菜の酢豚風炒め」を主菜に豚ももを使用することでビタミンB1を手軽に摂取できるようし、生姜を使うことで味にインパクトが生まれ、寒い冬にぴったりだという。「本番は今まで練習してきた中で一番できたかなと思っています。何度も考え、先生にも相談して自分の力が発揮できるようにしました。最初の見た目のインパクトが大事だと思ったので、全体として見れるように一品一品とのバランスを考えながら色合いをなるべく5色使うように工夫しました。今日、静岡産のイチゴと山梨の食材を使えたのでいろいろ思いがある一品になった」。2年間この大学で学んで「思っていたより、実習の大変さも凄い濃密な2年間だった」と振り返った。卒業後は、保育園に就職し、将来は管理栄養士を目指す。

■8回目の外部試験を見守ってー
深澤早苗食物栄養科教授は8回目の試験となるこの試験について「2年間の集大成で学生がそれぞれの思いで献立を立てているなという感じがしました。2年間本当に頑張ったなという思いです」。献立は、「規制がある中、上手にたんぱく質を使って、上手に減塩を図ってバランスよく野菜も取れてという配慮が見えた献立が多かったです。今年の学生は創意工夫がみられます。お魚の料理は難しいですけど、お魚のメニューも意外に数が多かったのでアイディアが詰まった感じですね」。栄養士に求める点は、「給食の提供は誰かに食べてもらうことなので、食べてもらう人がおいしいと思ってもらえるように普段の授業でも声を掛けて来たので、学生たちが“対象者がおいしい”と思ってもらえる視点で表現できていたと思います。審査員の方からもおいしいという声が聞かれ、昨年も味付けの評価が高かったですので、学生の頑張りが見えました」と卒業を迎える学生に社会での活躍に期待を寄せた。
❖結果発表は3月14日卒業式前日、卒業式事前指導において結果表が配布される。

文(K.F) カメラ(平川大雪) 2025.2.19