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VOL299 6月30日 |
シンポジウム『表現の自由とプライバシーの保護を問い直す』 〜 文学保護かプライバシーの保護かで議論過熱 〜 |
![]() 山梨学院大法科大学院(小野寺規夫法務研究科長)と日本ペンクラブ(井上ひさし会長)は6月30日、同校法科大学院棟模擬法廷でシンポジウム『表現の自由とプライバシーの保護を問い直す』を2部構成で行った。1964年にプライバシーの侵害を認めて損害賠償を初めて認めた三島由紀夫の小説『宴のあと』事件(元外務大臣と料亭の女将をモデルとした)、損害賠償と「修正なしには出版しない」との合意事項に著者側が違反したことを理由に単行本の出版差し止めを認めた柳美里の小説『石に泳ぐ魚』事件(文学表現の自由とモデルとなった女性のプライバシー保護が争われた)、車谷長吉『刑務所の裏』事件、田中真紀子氏の娘の週刊文春発売差止事件などの事例があげられた。第1部は「表現の自由とプライバシーの相克」について、山梨学院大学法科大学院教授の五十嵐二葉さんがコーディネーターで、パネリストの作家・評論家の関川夏央さん、作家・歌人の小嵐九八郎さん、編集者・俳人の新海均さん、作家の久間十義さん、ノンフィクション作家の吉永みち子さん、ノンフィクション作家の吉岡忍さんで、文学者などの表現者の立場で発言された。第2部は「表現の自由とプライバシーの保護をめぐる法的諸問題」について、コーディネーターに山梨学院大学法科大学院教授の荒牧重人さん、パネリストに早稲田大学法科大学院教授の戸波江二さん、山梨学院大学法科大学院研究科長の小野寺規夫さん、山梨学院大学法科大学院教授の梓澤和幸さん、同教授の辻千晶さんで、第1部を受けて法律家の立場で発言された。第二部の後半では参加者の会場発言も含めた公開討論で、文学者のパネリストが「取材する側が、相手のプライバシーを考えていたら何も書けなくなる」と表現の自由の重要性を主張すると、法律家のパネリストは「公共の利害に関する事項に当たらない私人の場合、私的事項の暴露によるプライバシーの侵害が重大であって、表現行為の価値が劣後することが明らかな場合は、言論や表現の自由は絶対的なものではない」と反論、文学保護かプライバシーの保護かで議論が過熱する場面も見受けられ、参加者約150人を巻き込んで議論を戦わしていた。
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