第98回全国高等学校野球選手権大会第2回戦
〜山梨学院2対7でいなべ総合に敗れる〜
〜絶好機内角攻めで強打封じ込められる〜
第98回全国高等学校野球選手権大会第8日第2回戦第1試合の、21年ぶり1勝の山梨学院 対 初勝利のいなべ総合戦が8月14日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で行われた。山梨学院は絶好機をつくりながらもあと一本が出ず2対7でいなべ総合に敗れた。山梨学院は1回戦で失点0と好投した先発の左腕・吉松塁が2回裏、連続四球と内野失策で0対1と先制される。山梨学院は5回表に好投していた先発左腕・赤木から、俊足の9番・広瀬巧真が内野失策で出塁、3番・知見寺代司のライナーが内野失策を誘い中前に転がる間に、広瀬が生還し1対1の同点。続く4番主将・瀧澤虎太朗の左線適時二塁打で2対1と逆転するも、その裏、吉松が9番・赤木に左前安打、1番・奥村に適時二塁打を許し2対2の同点とされた。6回裏、山梨学院はエース右腕・栗尾勇摩(2年)に投手交代。栗尾は期待に応え打者3人を連続凡打に仕留める好投。山梨学院は7回表、左腕・赤木を二死一三塁と追い込み、今日2打点の4番主将・瀧澤が、厳しく内角を突かれ死球で歩かされ満塁とされ、後続が打ち取られる。栗尾は7回裏も、三者凡退に打ち取り攻撃のリズムをつくる。山梨学院は栗尾を援護すべく8回表、投手交代した右腕・山内を攻め立てて二死一三塁の勝ち越しの絶好のチャンス、前打席で中越え二塁打を放った1番・土田が2-2からストレートで内角をえぐられ見逃し三振で追加点の芽を摘まれた。その8回裏、栗尾が先頭打者安打に盗塁と適時二塁打で2対3に、さらに左越えの走者一掃の3点適時二塁打を浴びて2対7とされた。山梨学院は4回・7回・8回と絶好機をつくりながらも、あと一本が出ず3回戦進出は叶わなかった。
◆5年ぶり6度目出場の山梨学院は、固守の長崎商(長崎)を攻めては立ち上がり4球3連打で2得点あげると相手の失策を絡めて得点を重ね、守っては左腕・吉松、右腕・栗尾の継投で5対3で破り進出してきた。6年ぶり2度目出場のいなべ総合は、強力打線の鶴岡東(山形)に攻めては2点リードされながら相手の失策に本塁打とスクイズで逆転し、守っては左腕・赤城、右腕・山内、右腕・水谷の継投で5対3の逆転で下し進出してきた。両チームの戦力は投手が継投、打者は左打者が多いなど酷似しており、両監督の采配が見どころのカードとなった。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 合計 | |
山梨学院 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
いなべ総合 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 5 | × | 7 |
【二塁打】瀧澤2本・土田(山梨学院)、奥村・藤井・山内(いなべ総合) 【盗塁】宮崎(いなべ総合) 【暴投】吉松(山梨学院) |
投 手 | 投球回数 | 打者 | 投球数 | 安打 | 本塁打 | 犠打 | 犠飛 | 四球 | 死球 | 三振 | 暴投 | ボーク | 失点 | 自責点 |
吉松 塁 (左) |
5 | 22 | 93 | 3 | 0 | 1 | 0 | 3 | 0 | 6 | 1 | 0 | 2 | 1 |
栗尾 勇摩 (右) |
3 | 15 | 58 | 5 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 5 |
◆甲子園球場の午前9時の天気予報(日本気象協会発表)は、晴れ・気温30.0度・湿度82%・風向 南西・風速2m/s。午前8時00分、試合開始のサイレンが山梨学院といなべ総合の代表選手をダッグアウト前からホームベース前に押し出しすと、主審の手が夏の天空に突き上げられ試合が開始された。
◆1回表、先攻の山梨学院は二死から3番・知見寺代司(3年)が四球を選び出塁。続く4番主将・瀧澤虎太朗(3年)の二塁内野安打で二死一二塁としたが後続が断たれた。
◆1回裏、山梨学院はマウンドに1回戦で先発5回2/3失点0と好投した左腕・吉松塁(2年)をマウンドに送る。吉松が一番・奥村に三塁強襲安打を許し無死一塁。続く2番・宮崎を右飛に打ち取り一死一塁。3番・神田のとき暴投で二進を許すが、神田を空振り三振、4番・藤井も空振り三振に切って取る立ち上がり。
◆2回裏、吉松が5番・渡邉、6番・守田に連続四球を与え無死一二塁。続く7番・深瀬に投手前の犠打を許し一死二三塁。8番・藤田を空振り三振に打ち取り二死二三塁とし、9番・赤木を内野ゴロに仕留めるが内野失策で1対0と先制された。
◆4回表、一死後、5番・五十嵐寛人(2年)が四球を選び出塁。6番・松尾孝太(2年)の右前安打で一死一三塁としたが後続が倒れ絶好機を逸した。
◆5回表、山梨学院は先頭の9番・広瀬巧真(2年)が俊足を生かし内野ゴロで失策を誘い無死一塁。後続が倒れ二死一塁、3番・知見寺の強烈なライナーが内野失策で中前に転がる間に、俊足の広瀬が生還し1対1の同点。二死一三塁、4番主将・瀧澤が初球ストレートを叩き、左線適時二塁打を放ち2対1と逆転した。
◆5回裏、吉松が三振を取った一死後、9番・赤木に左前安打を与え一死一塁。続く1番・奥村に左中間を破る適時二塁打を許し2対2の同点された。
◆6回裏、山梨学院は左腕・吉松からエース・右腕・栗尾勇摩(2年)に交代した。栗尾は期待に応え5番・渡邉を三塁ゴロ、6番・守田を投手ゴロ、7番・深瀬を三塁ゴロと三者凡退に打ち取る。
◆7回表、一死後、切り込み隊長の1番・土田佳武(3年)が中越え二塁打を放ち一死二塁。2番・宮下塁(3年)の右前安打で一死一三塁。二死一三塁で4番主将・瀧澤、山梨学院の得点パターンのチャンス到来。しかし、瀧澤が厳しく内角を突かれる死球で二死満塁とされ、バッテリーに後続も打ち取られ絶好機を消された。
◆7回裏、栗尾が8番・藤田を三塁ゴロ、9番・赤木を投手ゴロ、1番・奥村を二塁ゴロの三者凡退に仕留める好投。
◆8回表、いなべ総合学園は左腕・赤木から右腕・山内に交代。山梨学院は6番・松尾が投手の代わりばなを捉えて中前安打で出塁。7番・小林侃汰(2年)の代打・青野岳史(3年)が犠打を決めて一死二塁。8番・栗尾は四球を選び一死一二塁。9番・広瀬の三塁ゴロで二封。山梨学院は二死一三塁の勝ち越し得点の絶好のチャンスに、前打席で中越え二塁打を放った切り込み隊長1番・土田を迎えた。土田が2-2からバッテリーの思い切った内角をえぐるストレートを見逃し三振に倒れ追加点の芽を摘まれた。
◆8回裏、代打の青野がそのまま一塁の守につく。栗尾が先頭の2番・宮崎に中前安打され無死一塁。3番・神田で盗塁を許し無死二塁。神田の二塁ゴロで一死三塁。4番・藤井にライトフェンス直撃の適時二塁打で2対3。続く5番に左前安打され一死三塁。続く7番・深瀬に四球を与え二死満塁。投手9番・山内に左越えの走者一掃の3点適時二塁打を浴びて2対7とされた。
◆9回表、山梨学院は二死後、4番主将・瀧澤が三塁手への強襲二塁安打で出塁するも、後続が倒れ試合終了となった。
◆瀧澤虎太朗主将(3年)は神妙な面持ちで「チャンスはつくれていたが」と言葉を飲んだ。「あと一本が出なくて苦しかった」と吐き出した。それでも「試合終了まで、何が起こるかわからないので、皆んな諦めてはいなかった」と、9回表の2アウトでも「普段通りに打席に入り、バッティングに集中できた」と、自ら三塁手への強襲二塁打を放ち得点圏に進んだ。「山梨で負けた36校の思いを胸に甲子園で戦います」という誓を最後の最後まで実践して見せた瞬間でもあった。今は「負けた悔しさより、あの大観衆の中でプレーができたという誇りと、支えてくださった方々のお陰で自分たちの持っている力を十二分に発揮できたので、悔いはありません」と歯切れよく言い切る。また、「遠くから甲子園に応援に来てくれた方々、テレビで観戦で応援していただいた方々に、心から感謝したいと思います」と爽やかに述べる。後輩には「投手の栗尾・吉松・宮内、キャッチの五十嵐などが中心となりチームがつくり上げられると思う」が、しかし「甲子園は頑張った球児しか立てない、全員にチャンスがある」。これから「皆んなで切磋琢磨して、春夏連続で出場してもらいたい」とエールを送った。
◆吉田洸二監督は今日の試合を振り返り「うん、」と言葉を飲んだ。相手のインコース攻めの「見逃し三振、このチームでは珍しい」と、「瀧澤の死球、厳しいとこをつきフォアボールでも良いという攻め、このケースで県大会では続く2年生の五十嵐が投手を打ち崩してくれた」と目を伏せる。何故か「勝利の女神様が最後は相手に味方したんだと思います」と穏やかに話す。「3年生はよく戦っていたので悔いはないと思うが、2年生には課題が残った」。このほろ苦い経験は「2年生だからこそ、次につながる」と頷く。「もう10日もすると、春の甲子園へつながる秋の地区大会が始まる」。勝って「2年生にはやり残した課題を、春の甲子園でクリアしてもらいたい」と眼光を放つ。「今回、学校の応援に凄まじい勢いを感じ、いい意味でのプレッシャーを感じて戦えた」と心境を述べる。この夏を総括して「感謝の一言です」と頭を深々と下げる。「学校の応援体制や選手の甲子園で一勝できた成長に、感謝したいと思います」と喜色満面。また、「県民の皆様や山梨学院を応援してくださった全国の皆様にも感謝したいと思います」と一礼した。
文(H.K)、カメラ(平川大雪・藤原稔・今村佳正)2016.8.14
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山梨学院高 2回戦応援団 ~甲子園に轟く大応援団の声援も及ばず敗退~ |
8月14日、「第98回全国高校野球選手権大会」8日目2回戦第1試合目、山梨学院高校野球部は9日の試合で7年ぶりに夏の甲子園で2勝目を挙げ、2戦目に三重県代表・いなべ総合高との決戦を迎え、初の3回戦進出を目指した。1塁側アルプススタンドは約1,600人の山梨学院高応援団が陣取った。生徒、教職員の応援団は昨夜9時半に甲府を23台のバスに分乗して午前6時に到着。試合が始まる8時前に保護者応援団、一般の応援を含め応援の体制を整えた。この日の甲子園は旧盆中とあり、開門前の午前6時頃には、多くの高校野球ファンが球場を取り囲んだ。山梨学院高の試合が始まる午前8時に内外野のスタンドはほぼ満員になった。
先攻の山梨学院の攻撃に対して一塁側アルプススタンドに陣取った応援団は、野球部の応援団、鉢巻袴姿の2人の女子応援団、チアリーダー部、吹奏楽部が中心となり、選手が打席に立つごとに選手に合わせた吹奏楽部の演奏と名前を書いたボードを掲げ、生徒・保護者らがメガフォンを手に取り大声援を送った。1点をリードされた5回表、2死1・3塁で4番・瀧澤虎太朗主将(3年)が左翼線を抜く2点適時打を放ち逆転すると、応援席は歓喜に沸いた。その後同点に追いつかれるも、7回は2死満塁、8回2死1・3塁の好機には生徒らは肩を組んで山梨学院全員が一体になった応援を繰り広げたが惜しくも点に結びつかず応援席からは大きなため息が漏れた。『チャンスの後にピンチが訪れる』と言われるように、8回裏、好投の吉松塁投手(2年)を救援した栗尾勇摩投手(2年)が打ち込まれたときには『頑張れ!ここをしっかり!』と選手団、応援団から励ましの言葉が懸けられで勇気づけた。しかしこの回一挙5点を奪われ応援席は、肩を落とした。
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