第74回関東大学バスケットボール選手権
山学男子 法政大を相手に大差を劇的大逆転
流れがくるまで我慢。最終Qで同点。延長で勝利呼び込む

4月12日開幕した、1都7県の約90の大学がトーナメント方式で関東1位の座を争う「第74回関東大学バスケットボール選手権大会」大会6日目の4月30日、山梨学院大バスケットボール部男子の初戦が東京・大田区立総合体育館で行われ法政大(関東1部)と対戦した。山学バスケ部男子は2023年に関東1部リーグに昇格。この大会では昨年4強の成績を残したが、リーグ戦では2部に降格し、1部の壁にぶち当たった。大学バスケットボールのシーズン幕開けの大会でチーム力を占う大事な大会となる。試合は第1Q(クォーター)、山学が先制するも、その後は法政大のディフェンスのプレスに山学のアタックは弾かれ、一方的に法政大に押され14対26。第2Qで司令塔中村千颯の3Pシュート、センターのイゴールのセットプレーやドライブが決まり出し、やや点差を詰め29対36。後半第3Qに巻き返したい山学に対して、法政大は序盤に8連続得点を奪うなど、41対58と大差をつけられた。第4Q、いきなり中村が2連続3Pでチームを勢いづけると徐々に点差を詰め、残り5分から猛攻が始まり、中村の3Pと抜群の攻撃力を持つ菅野陸の2人車輪で、残り約3分で2点差まで追い詰め、そして、山銅彪剛がファールフリースローを決め、ついに67対67の同点に追いついた。試合はそのまま5分の延長。ここでも中村がスーパープレーを見せ、山学が79対73と振り切り、手に汗握る劇的な大逆転勝利を収めた。試合後、古田悟監督の“よくやった!”の声が響いた。
山梨学院大バスケットボール部男子は、2014年から強化育成クラブに指定されてから本格的に活動を始動するも、なかなか芽が出ずに低迷していた。そこでテコ入れを図るため、2019年7月に世界選手権日本代表主将やBリーグの監督を歴任した古田悟監督が就任すると、急速に頭角を現し、2021年2部昇格、2022年には最速で悲願の1部昇格を果たした。そして、2024年のこの「関東大学選手権」でも、強豪校と戦い4位となり大きな実績を得た。しかし関東1部リーグ戦では2部降格を味わい、今季は1部復活を目指すとともに、大学バスケットボールシーズン幕開けのこの大会でチームの実力を見極める大事な大会と位置付ける。
関東大学バスケットボール選手権大会
通称「スプリングトーナメント」と呼ばれ、各大学が新しいチームとなって戦う、大学バスケットボール開幕を告げる国内最大級の大会の一つであり、1都7県から約90の大学が出場し、トーナメント方式で関東1位の座を争う。4月13日に開幕した大会は、主要3会場で各大学による激戦が繰り広げられ、最終日の5月4日に国立代々木競技場第二体育館で決勝戦、3位決定戦、5位~8位決定戦が行われる。山梨学院大バスケットボール部男子はベスト32を決める4月30日に初戦を迎え、関東1部リーグの法政大学と対戦した。
山学、法政大のディフェンスのプレスとスピードの速さに苦戦する
第1Q(クォーター)、ジャンプボールを拾った山学#5PG中村千颯(3年)がパスを受け、先制のシュートを決めるも、その後は法政大の#7の選手が独壇場の活躍で大差をつけられた。その間には#9齋藤 晴(3年)の3Pや#7渡邉直洋(3年)、#14菅野 陸(2年)のドライブで反撃するも、法政大ディフェンスのプレスに山学のアタックは弾かれ、相手インサイドラインに入れず14対26で終了。第2Qに入り#98・Cスヴェトリシック・イゴール(3年)がオフェンスリバウンドを押し込み、相手のディフェンスを切り裂く圧巻のドライブシュートで山学選手を鼓舞。それを機に司令塔中村千颯の3Pが決まり出し、29対36と点差を詰めた。第3Q、追いつきたい山学ディフェンスの前に相手Cが立ちはだかり、セットプレー、ドライブシュートが決まり8得点を重ねられ、29対44と差を広げられた。山学の攻撃は、ここでも法政大の執拗なマンツーマンディフェンスを敷かれ、得点を阻止された。その中でも、センターの役目がなかなか果たせない#イゴールは再び自身でカットインダンク、リバウンドから一気に持ち込む迫力あるプレーを見せた。しかし、得点差は41対58と、この試合最大の17点差となった。
諦めない山学、最終第4Qで同点。延長戦で相手を振り切り勝利
第4Q、法政大が大差をつけたことで油断はあるまいが、中村が2連続3Pを決めるとチームは勢いづいた。その後、法政大もドライブ、オフェンスリバウンド、3Pを決め引導を渡そうと攻勢を強めた。しかし、ここから山学が猛攻。山学の攻守の中心であり、2年先輩のOB野溝利一に継いで3Pを得意とする#5中村と、高校時代にプロの経験をした#14菅野を中心に、残り約6分で12点差あった得点を、残り3分で2点差まで縮め、残り1分30秒で#28山銅が2本のフリースローを決め、ついに同点。そして残り1分を切り、山学が法政大のファールで逆転勝利の好機を得て、再び山銅がフリースローを打つが、緊張からか2本とも外し、同点で延長戦になった。延長初めの得点は、#5中村のパスを#14菅野が受け、さらに#0藤崎郁海が初めてのシュートで先行し、遂に逆転。それでも法政大が食い下がり70対71と再度リードされる。ここでも#5中村が2、3Pで74対70と再逆転。しかし法政大も諦めずに3P決め74対73に迫られる。延長戦残り1分、またも中村のスーパープレーがさく裂し、76対73。バスケットカウントで1点を加え、77対73。残り20秒で法政大がフリースロー。ここで2本決めても77対75となるため、ほぼ勝利を手中にした。相手の選手は2本とも失敗。残り7秒、山学が最後のフリースローを得ると、シューター#9齋藤 晴(3年)が落ち着いて決めた。第4Q、延長戦の死闘を繰り広げた結果、79対73で山学が劇的な逆転で勝利した。
試合記録

◆山梨学院大のスターティング5(ファイブ)
#5PG・中村千楓③、#14・SG菅野 陸②、#23・PF叶 慈平①、#28・SF山銅彪剛①、#98・Cスヴェトリシック・イゴール③の5人。
◆他登録メンバー
〇#0・PG藤崎郁海④、#7・PG渡邉直洋③、#9・PF齋藤 晴③、#18PG・児玉雅空②、#24SG・鮫島颯介①、#27・PF清水雄太③、#32・SG新開温矢①、#58・PFダニエルスジャー淳揮④、#70・Cカマレ・ムレマ・フランシス④、#90・PG大道一歩①が途中、随時交代した。
※〇印/主将
試合後インタビュー
主将の藤崎郁海選手は「最初はみんな(プレーが)硬く、なかなか自分たちのリズムを作れなくて、ディフェンスのフォーメーションを遂行することが全くできず、アシスタントコーチに喝を入れられた。そこから2、3段階ギアが上がった感じです。最後の第4Q、自分たちの持ち味であるディフェンスから3Pを2回成功でき、そこから流れを持ってこられたことが勝因」と試合を振り返った。第4Q、延長戦で勝利のため5本の3Pを決めた中村千颯選手は、最大17点差の劣勢で「まだ時間があるから我慢するしかないと言われていて、そこでチームがヘッドダウンしたらだめなので、自分は先頭に立って背中で示さなければいけないと思い、そこはずっと我慢して、悪い展開でも絶対に自分たちに流れがくると思い我慢を続けました」とその我慢が一気に爆発した。多くの得点に絡んだ菅野 陸選手は「第3Qまで完全に相手のペースで、監督からもここは我慢しようと言われていたので、しっかりディフェンスで我慢し、自分たちの得意のトランジションバスケ(攻守の速い切り替え)で早いうちに、第4Qには追いつこう話した」。その第4Qで流れを変えた二人は「昨年、野溝さん(=野溝利一選手、山学OBでB2神戸ストークス所属)というすごい選手がいたんですけど、その(野溝選手の抜けた)分を自分たちでどんどん点を取りに行けとコーチに言われていて、(中村)千颯さんがたくさん決めてくれたので、明日は自分がもっと頑張れたら」と眩しい笑顔を見せた。
山梨学院大の次戦は、5月1日に関東1部リーグの中央大と対戦する。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2025.4.30