春季関東高校野球大会 山学高タイブレーク初戦勝利
菰田圧巻の奪三振ショーで味方のサヨナラ勝利をお膳立て
萬場の同点打、平野のサヨナラ打、粘りの野球が光る

「第77回春季関東地区高校野球大会」は5月17日、茨城県水戸市で開幕予定が、降雨のため18日に順延で開会式が行われた。大会2日目1回戦の山梨学院高(山学高)は、19日にノーブルホームスタジアムで埼玉2位の叡明高と対戦した。山学高は山梨県大会決勝で帝京第三高を破って2年連続9回目の優勝を飾り、4年連続16回目の春季関東大会出場を果たした。後攻の山学高は2回裏、先頭打者横山悠の四球から足を活かし、無安打で1点を先制した。山学高は山梨県大会で好投した檜垣瑠輝斗投手が先発。安定した制球力で3回まで1安打無得点と上々の立ち上がりを見せた。しかし4回、叡明高の先頭打者に初球を狙われ、次打者にも2球目を左中間適時打、続く打者の内野ゴロの間に1点を加点され逆転された。その裏、県大会で打撃好調な山学高は3番菰田陽生の先頭打者安打、4番横山の2連打。一死後、梅村団の適時打で同点。続く萬場翔太の2点適時二塁打、鳴海柚萊と連打で4点。5対2で優位に立った。檜垣は5回、6回と無失点で抑えたが、7回表に崩れ、交代した足立康祐も打ち込まれ、同点とされた。ここで最速152kmの菰田陽生を投入。菰田も速球を合わせられ逆転されるも、そこからが圧巻の投球を見せた。菰田は叡明高打線に8連続三振を奪うと、それに応え8回、萬場の執念の三塁打で同点。試合は、そのままタイブレークに入ると10回表、叡明高の一死満塁の攻撃をさらに3連続三振で三者凡退に抑え、味方の攻撃を待った。山学高も一死満塁から平野天斗が三遊間を抜くサヨナラ打を放ち、初戦を辛くも勝利した。
夏の甲子園に向けて関東一を目指す17校が激突
大会には開催県の茨城県から3校、東京都、山梨県、神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県、栃木県からそれぞれ2校、1都7県、計17校が出場する。出場校は山梨学院高(山梨1位)を含む、横浜高(神奈川1位)、東海大相模高(神奈川2位)、健大高崎高(群馬1位)、常総学院高(茨城1位)、専大松戸高(千葉1位)、浦和学院高(埼玉1位)、佐野日大(栃木1位)など関東の名だたる強豪校が揃った。
苦しみながらも貴重な勝利 まずは1勝、前に進む
5月19日、予定試合開始時間午前10時、茨城県水戸市・ノーブルホームスタジアム水戸上空の雨もようやく上がり、開始時間は午前11時30分と決まった。今大会は17日開幕、山梨学院高は大会2日目1回戦に出場予定されていたが、17日開幕日が降雨順延になったため1日ずつのスライド開催となり、19日となった。この日の気温は、1か月前に戻った肌寒い曇り日の中での試合となった。この日の山学高からの応援団は平日のため野球部員のみ約60人、保護者会から約50人、合わせて約110人が一塁側応援団席に陣取り声援を送った。山学高のスターティングメンバーは3年生を中心に6人、2年生3人で臨み、埼玉2位の叡明高と対戦した。
前半・中盤、そつのない攻撃で優位に試合を進めるも
後攻の山学高は先発に県大会初戦、準決勝、決勝の先発マウンドに立ち好投した檜垣瑠輝斗投手(2年)が関東大会初戦に起用された。檜垣は期待に応え3回まで1安打無失点と上々の立ち上がり。山学高の攻撃は2回裏、先頭打者の4番横山悠(3年)が四球を選び、二盗も成功させた。5番平野天斗(3年)の内野ゴロで横山は三進。続く梅村団(3年)の三ゴロで好スタート切った横山は本塁へ生還。1点をそつのない無安打攻撃で先制した。4回表、叡明高の攻撃。2番先頭打者に初球を狙われ、次打者にも2球目を左中間に適時打を打たれ、バックホーム送球を焦って同点とされ、続く打者の内野ゴロの間にも1点を加点し、逆転された。その裏、県大会で打撃好調だった山学高は、先頭打者3番菰田陽生(2年)がこの試合山学高の初安打で出塁。4番横山も初球狙いで2連打。続く平野が初球を犠打で走者を進塁させ、得点の好機に6番梅村の右前適時打で同点。次打者萬場翔太(3年)の2点適時二塁打、鳴海柚萊(3年)と連打で4点。先発の檜垣も5回、6回と無失点で抑えた。5対2で優位に立った。
後半7回表、好投していた山学高先発、檜垣が叡明打線に捉まり逆転される
しかし、山学高は5回から継投した叡明高の3番手に5、6回と手をこまねいていると、7回表、叡明高が反撃。檜垣が先頭打者安打、犠打、安打と一死三塁二塁のピンチに、続く打者の適時打で1点を失い5対3。山学高は、2番手足立康祐(3年)に継投するも打ち込まれ5対5の同点にされた。たまらず山学高は152kmの最速スピードを持つ、抑えのエース菰田陽生(2年)に継投。しかし、菰田は追い込んだ叡明高打者に速球を軽く合わせられ逆転されるも、そこから圧巻の投球を見せた。5対6とリードされた山学高は、8回に萬場の執念の三塁打で同点。その間、菰田は8連続三振を奪い叡明高を完全に抑え込んだ。6対6のタイブレークで延長に入ると、菰田の投球はさらに凄みを見せた。10回表、叡明高の一死満塁の攻撃を3連続三振で無得点に抑え、俄然有利になった味方の攻撃を待った。山学高の攻撃。無死二塁一塁、打席には菰田が立ったが遊ゴロのWプレー崩れに、菰田は辛うじてセーフ。叡明は次打者の横山に故意申告四球で満塁策を取った。好投を続けてきた叡明高3番手投手の2球目を5番平野が三遊間をきれいに抜くサヨナラ打を放ち、初戦を苦しみながらも制した。
試合記録
◆山梨学院高VS叡明高 5/19(月) 大会2日目1回戦 ノーブルホームスタジアム水戸
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
叡明高 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 4 | 0 | 0 | 0 | 6 |
山梨学院高 | 0 | 1 | 0 | 4 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1× | 7 |
◆山梨学院高先発メンバー 〇囲みは学年、〇印は主将
1.(左)高橋英登③、2.(中)石井陽昇②、3.(一)菰田陽生②、4.(捕)横山 悠③、5.(遊)平野天斗③、〇6.(三)梅村団③、7.(二)萬場翔太③、8.(左)鳴海柚萊③、9.(投)檜垣瑠輝斗②
◆山梨学院高バッテリー
檜垣⇒足立康祐③⇒菰田 ー[捕手]横山
[投手]檜垣:6回1/3 打者26 投球数88 被安打6 奪三振 6 与四球1 失点5
足立:0回0/3 打者 2 投球数 4 被安打2 奪三振 0 与四球0 失点1
菰田:3回2/3 打者13 投球数45 被安打2 奪三振11 与四球0 失点0
[打撃]安打9 長打(三塁打=萬場、二塁打=萬場)、三振6、四球6(申告四球1) 得点7
[交代]高橋(右)⇒(H)大石康耀③⇒(右)柴田悠生③、檜垣(投)⇒(投)足立康祐⇒(一)藤田蒼海②
試合後のインタビュー
試合後、最初に球場から出てきた吉田健人部長は「前半は良いペースで進められ、(7回)突然逆転されて苦しくなりましたけど、萬場がつないでくれて、そこで前の平野が二盗で出てくれたので、相手のセンターが前に出てくれて萬場が頭を越してくれたというつながりがあった」と貴重な同点の場面を分析した。好投の菰田投手については「直接、菰田につなげばよかったですけど」と苦笑い。次戦の東海大相模戦には「今日の試合とは違う展開になると思いますので、また一からしっかりリセットしてやっていきたい」と気を引き締めた。
吉田洸二監督は「この大会は、3年生の粘りを試すとやってきたのですが、まさに狙った通りの(結果的に)試合が見られて良かった」と笑顔で答えた。好投のリリーフ菰田投手にについては「だいぶ良くなってきました。楽しみです」と選手の成長を言葉にした。
終盤、緊迫した場面で相手打線抑え、味方から同点、サヨナラ打を引き出した菰田陽生投手は「ピンチの場面で回ってきて、1点は取られてしまいましたが、最少失点で抑えられたのは自分でも良かったです」と重責を果たした。「今日は球威もあって、力もあったのでほとんど真っすぐで押しました」。最速148kmの速球で三振の山を築き、勝利に貢献した。梅村団主将は「今、3年生のつながりとチームのつながりを4月に入ってから大事に取り組んできたので、今日の試合で少しずつつながろうという成果が打線としても出ていると思いました」と、より強いチームの結束が固まりつつある。4回、連打の逆転の場面は「強引に自分が打ちたいところを我慢して、低いコースを打つとか、全員の意識の中であったのかなと思います」。次戦に向けては「甲子園で勝ち上がることが最終的な目標なので、それを踏まえて、次の試合は自分たちがどれぐらいつなげるか、実力があるのかは相手の高校も強いので、それを感じるためにしっかり準備して臨みたい」とチームに慢心はない。
大石光泰野球部保護者会長は、この勝利を「山梨学院が目指しているものが違うので、その一過程として捉えたいのですが、今日は素直に喜びたいと思います。粘り強くなりましたね」と目を細めた。
山梨学院の2回戦準々決勝は21日、同球場で神奈川県2位の東海大相模高とべスト4を懸け対戦する。
文・カメラ(K.F) 2025.5.19