第75回関東高校女子ソフトボール大会準決・決勝戦
山学高 決勝で厚木王子高に敗れるも2年連続準優勝
準決勝は昨年の覇者健大高崎高に雪辱 田波が無安打完封

「第75回関東高校女子ソフトボール大会」は5月31日開幕が降雨順延のため日程がスライド。6月1日に1回戦、2回戦。準決勝、決勝が6月2日、東京・江戸川区球場で行われた。前回大会準優勝の山梨学院高は、1日目を無事通過。前回大会優勝の健大高崎高(群馬)と準決勝での対戦となった。2019年(令和元年)の初優勝以来、2度目の優勝を目指すには避けて通れない難敵。試合は後攻の山学高が1回裏、1番石川まゆはの安打、盗塁を足掛かりに相手の失策もあり1点を先制。2回にも、2安打で二死二塁・一塁から3番二橋美緒が2点適時二塁打で3対0とリード。山学高の先発、田波媛子と3回から継投した相手エースが投げ合い、3回以降は投手戦となり山学高がそのまま守り切り、前回の雪辱を果たし決勝に進んだ。田波は無安打1四球の完封。決勝戦はいくつのもの大会で接戦を繰り広げてきたライバルの厚木王子高(神奈川)と対戦。先攻山学高は1回、石川が先頭打者三塁打で先制点の好機をつくるも後続が続かず無得点。初回裏、山学高先発の制球が定まらず、直ちに2番手栗原しおりに継投したが2点を先取された。2回表には山学高も厚木王子高の守備の失策から1点を返す。3回、厚木王子高は二塁打と適時打でつなぎ1点を加え1-3とリードした。その後、両チーム譲らず厚木王子高が勝利し、山学高はあと1歩及ばす2年連続準優勝となった。
一時の廃部危機を乗り越え、伝統と強さを継続するソフトボール部女子
1965年創部。60年の歴史を誇る山梨県屈指の強豪校と君臨してきたソフトボール部女子は2016年、部員減少により廃部の危機に陥ったが、伝統の灯を消してはならないと佐々木憲士現顧問らの努力もあり、後任の監督と部員の確保により存続の危機を乗り越えた。2017年4月に就任した渡辺努監督と佐々木顧問のもと、2年生5人と1年生新入部員の8人、計13人により再始動した。その年の5月の山梨県高校総体で2年生・1年生だけの若いチームでいきなり優勝、6月の山梨県で行われた関東大会、センバツ大会でも3位と健闘した。その後も着々と実力をつけ2019年の関東大会で初優勝。インターハイでは全国の強豪校と対戦して山梨県初となる3位。そして2021年には雨のため準決勝、決勝が中止となり4校同時優勝ながら初優勝を飾った。また、2022年3月に行われた全国高校選抜大会では2012年度以来、2度目の準優勝となり、この年のインターハイでは準優勝を飾っており、全国でも実力校として名が知られている。
大会2日目 準決勝健大高崎高戦
1日目の初戦、光明学園相模原高校(神奈川)、2回戦の千葉英和高校を破り準決勝に進出した山学高は、前回大会の決勝戦で敗れた高崎健康福祉大学高崎高校(健大高崎高・群馬)と準決勝での対戦となった。2019年(令和元年)に初優勝を飾って以来、2度目の優勝を目指すには避けては通れない難敵。健大高崎高には105km(野球の体感では約150km)の最速記録を持つエースが立ちはだかる。試合は曇り空の江戸川区球場で11時20分、健大高崎高の先攻で始まった。山学高先発の田波媛子(3年)は、初回を僅か10球の三者凡退で打ち取る上々の立ち上がり。後攻の山学高に対して健大高崎高はエースを温存して対抗してきた。1回裏、1番石川まゆは(3年)の安打、盗塁、相手の失策もあり無死三塁一塁。3番二橋美緒(3年)の内野ゴロの間に1点を先制した。2回にも、9番関百花(3年)の内野安打、2番船津琴音(1年)の2安打で二死二塁一塁から、再び3番二橋が右中間を破る二塁打でまずは関が生還して1点。二塁走者の船津もホームに突入。わずかに速くセーフ。2点目を上げ3対0とリードした。その後は、山学高の先発田波の内外のコースを投げ分ける好投と、3回から継投した健大高崎高エースの100kmを越える速球で山学高打線を封じる投手戦となり、山学高が序盤の3点を守り切り、昨年の雪辱を果たし決勝に進出。田波は無安打1四球完封の快投を見せた。
試合記録(準決勝:健大高崎高戦)
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
健大高崎高 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
山梨学院高 | 1 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | × | 3 |
◆山梨学院高出場メンバー
《先発》※数字の前の〇印は主将
〇1,石川まゆは(中・③)、2.船津琴音(二・①)、3.二橋美緒(遊・③)、4.郷古あいみ
(DP・②)、5.武石萌愛(右・③)、6.小堀愛実(一・②)、7.森田結菜(捕・③)、8.加藤瑠唯(三・②)、9.関 百花(左・③)、FP田波媛子(投・③) ※DP(打撃専門選手)、FP(守備専門選手)
《控え選手》
斎藤真瑚③、加々美沙良②、塚田真莉②、荻巣蒼央③、大石真桜②、武石麻愛②、栗原しおり①、小池七桜①
◆バッテリー (投手)田波媛子ー(捕手)森田結菜
[投手]田波=投球回数7、打者27、投球数95、被安打0、四球1、三振9、失点0
[打撃]安打7 長打《二塁打:二橋1》、四球2,三振6
準決勝後インタビュー
田波媛子投手は今日の投球を振り返り、「スピードもいつも通り出ていたし、アウトコース、インコース両方投げ分けることができ、自分なりの力は出し切れた」。強力打線の健大高崎戦にあたっては「甘く入ると自分の場合、ホームランがあるので常に厳しく意識して投げるようにしていました。昨年の健大高崎戦には自分が投げて負けてしまっているので、今年の大会は3年生の自分の最後の大会なので、優勝したいという気持ちは強いですし、健大高崎高には勝ちたいという気持ちがあったので、勝つことができて良かった」と安堵の表情を見せた。
全得点を挙げた二橋美緒選手は追加点の好機で「打席に入る前、先生から頼んだぞと言われて、ここで打って決めようと」意識を集中させた。昨年は悔しい思いをしたが「去年の関東大会の時に、自分はコロナに罹ってしまい出ることができず配信で見ていて、今回が初めての関東大会なので絶対に出て勝とうという気持ちでやってきた」と思いが叶い、笑顔が広がった。
石川まゆは主将は健大高崎戦にむけて、「去年は全然打てずに負けてしまったので、今回は打って勝てて良かった」。先発はエースではなかったが「エースがいつ出てくるかは分からなかったですが、ピッチャーが違ったので、積極的に行こうという意識で臨みました。いいチームなのは分かっているので、自分たち一人一人がいいプレーができるように意識していました」。決勝の厚木王子戦には「ピッチャーも打線も守備もいいチームなので、準決勝のいい流れで、打ち勝ちたい」と意気込んだ。
渡辺努監督は「去年のリベンジ等とは考えていませんでしたけど、次につなげる試合をしようと。ただこれで4試合できることはいいことですね」。エースを先発に持ってこなかった相手に「いろんな考えがあるので。得点は出来なかったけど後に投げた投手も(球は)捉えていたから」と自分たちのプレーに徹した。次戦、ライバルの厚木王子高について「毎年毎年、チームが変わるから。健大高崎高もそうだったようにこの大会というのは、いろいろなことを試さなければいけない大会なのでピッチャーも、情報も含めて、インターハイに向けての収穫になれば」と優勝には言及しなかった。
決勝戦は好敵手・厚木王子高戦
決勝はいくつのもの大会で接戦を繰り広げてきたライバルの厚木王子高(旧厚木商業高・神奈川)と対戦。先攻山学高は1回、石川が先頭打者三塁打で先制点の好機をつくるも二人が倒れて二死三塁。続く4番DH郷古あいみ(2年)が1・2塁間を抜く右前ゴロを放ち1点先取かと思われたが、厚木王子高の右翼手が猛然と前進、一塁で間一髪アウト。先制を逃し無得点。その裏、山学高は荻巣蒼央(3年)を先発のマウンドに上げた。しかし、先頭打者に四球、2番打者にはワイルドピッチで走者を進めた。ここで山学高は2番手栗原しおり(1年)を急遽マウンドに送った。しかし、栗原は犠打と投前ゴロをフィルダ―チョイスし、走者を三塁一塁に背負った。次打者4番打者を迎え、盗塁で一死満塁にされ、ここで適時打を浴び1点を失う。さらに続く5番打者の二ゴロの間に1点を加えられ、0対2とリードされた。2回表、山学高も厚木王子高の守備の失策と7番森田結菜(3年)の安打、さらに暴投で1点を返した。さらに1番石川に対しての申告故意四球で二死満塁とし、一打同点の好機を迎えた。打席には2番船津琴音(1年)。左打者の船津は外角のボールを逆らわずに三遊間に鋭い当たりを放つが、厚木王子高の遊撃手が右へ横っ飛びの美技で得点を許さず、山学高の攻撃は1点のみに抑えられた。このプレーが流れの分岐点になった。3回山学高の攻撃に、厚木王子高は先取点を上げピンチを防いだ4番の遊撃手が2番手投手として継投し、三者凡退とした。その裏、厚木王子高は2番打者の二塁打を、再び4番打者が適時打で1点を加え1対3とリードされた。その後、両チーム譲らず厚木王子高が勝利し、山学高は序盤の攻防であと1歩及ばず、2019年以来の2度目の優勝はならず、2年連続準優勝となった。
試合記録(決勝:厚木王子高戦)
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
山梨学院高 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
厚木王子高 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | × | 3 |
◆山梨学院高出場メンバー
《先発》※数字の前の〇印は主将
〇1,石川まゆは(中・③)、2.船津琴音(二・①)、3.二橋美緒(遊・③)、4.郷古あいみ
(DP・②)、5.武石萌愛(右・③)、6.小堀愛実(一・②)、7.森田結菜(捕・③)、8.加藤瑠唯(三・②)、9.関 百花(左・③)、FP荻巣蒼央③(投・③)
《控え選手》
斎藤真瑚③、加々美沙良②、塚田真莉②、大石真桜②、武石麻愛②、栗原しおり①、小池七桜①、田波媛子③
◆バッテリー (投手)荻巣⇒栗原しおり①ー(捕手)森田
[投手] 荻巣=投球回数0、打者1、 投球数7、四球1、失点1
栗原=投球回数7回、打者24 投球数79、被安打3、四球1、三振3、失点2
塚田=投球回数0、打者1、被安打1
[打撃]安打3、長打《三塁打:石川》四球1、三振1
決勝後インタビュー
渡辺努監督は、優勝を逃したが「打線の方は1点しか獲れなかったですけど、そこまで打てないわけではなかったです。ただ、やっぱり試合展開で劣勢になってしまった。4試合やるということが一つの目標としてあって、準決勝で田波を使ってしまったので、この大会はもう一人ピッチャーを育てたいということもありました。収穫としては、1年生の投手が途中から苦しみながらも最後まで抑えてくれたので、それが決勝戦に関しては収穫ですかね」。インターハイに向けては「ピッチャーが一人では、心許ない夏の暑い中での6連戦(決勝まで)になるから、そこがうちのチームの課題です。去年は複数いたけど、今年は田波一人に頼ってしまっているので」と第2のエースの育成を急ぐ。
石川まゆは主将は「いいチームなので、思うように打ったりできませんでしたが、いい試合はできたので、夏までにレベルを上げていきたい」。今大会での収穫は「得点する時に転がして取ったり、守備でも目立ったエラー(ミス)もなく、自分たちのプレーができたと思います」。インターハイに向けては「1試合でも多く試合を出来ることが自分たちの目標なので、そのために夏までに全員で頑張っていきたい」とあくまでも自分たちのプレーを貫く。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2025.6.2