山梨学院大学ニュースファイル

全国高校野球準決勝 中盤リードも守り切れず決勝進出ならず

Vol.3521 | 2025年8月21日

ともに初決勝を懸けて激突。沖縄尚学高の粘りに逆転許す
4強で終わるも、投打に山学高強しの衝撃印象残す

15日間の日程で行われてきた「第107回全国高校野球選手権大会」もいよいよ大詰めを迎えた8月21日、大会14日目準決勝2試合が行われた。第1試合は日大三高と岐阜県立商業高の試合に日大三高が勝利し決勝に進んだ。第2試合、山学学院高と沖縄尚学高が初の決勝を懸けて激突した。この日も、山学高応援団約800人、他にOBや一般観客がアルプススタンドを埋め尽くし声援を送った。試合は山学高の先攻で始まった。1回表、1番鳴海柚莱が四球と相手捕手のミスで二塁進塁。二死後、横山 悠が大会タイとなる8安打連続安打で先制した。先発の菰田陽生は立ち上がり2安打を打たれ1点を失い、肘の違和感でこの回で降板、檜垣瑠輝斗が継投した。その後、沖縄尚学エースと檜垣の好投で4回まで拮抗状態が続いた5回山学高の攻撃。一死後、1番鳴海から3番梅村 団の3連打で無死満塁。4番横山の三ゴロを相手が後逸、2点を奪った。さらに6回には先頭打者菰田の二塁打と相手内野手の悪送球で1点を追加。4対1と優位に立った。しかしその裏、沖縄尚学高も反撃。先頭打者の二塁打から3連打で2点。さらに山学高の失策で1点を奪い、4対4の同点とした。流れが沖縄尚学高に傾いた7回、檜垣は二死を取るが続く主軸に長短打を浴び4対5と逆転された。山学高は6回途中から交代した沖縄尚学高2番手を攻めあぐねたが9回表二死後、3番梅村、4番横山の連続安打で走者二塁一塁。一打同点の好機に5番平野天斗の捕飛で試合終了。山学高は惜敗で決勝進出は逃した。

初の4強になった山梨学院高の準決勝戦に、この日も多くの応援団が山梨から駆け付けた。21日午前0時半に生徒会、応援団、吹奏楽部、チアリーダー部、野球部員含めた生徒450人と教職員50人、PTA50人、野球部保護者約250人の一部などがバス16台に分乗し出発。午前9時には三塁側アルプススタンド入口に応援団総勢800人、他にOBや一般の山学高ファンも集まり、試合開始前にはアルプススタンドが満員に膨れ上がった。なお、第2試合の甲子園球場の観客数は36,000人と記録された。

試合前の選手に向けた応援メッセージ

❖家族で応援に来ていた元山梨学院大学教授の江藤俊昭(現・大正大学教授)さんは「家族はずっと応援に来てたのですが、私は今回初めてです」。4強まで来ましたが「全体的に見てほかの試合はそこまで点差はないのに、山梨学院だけはこれだけの違いがあるのは凄くパワーがあるのだと思いました。もちろん監督の采配はあると思いますが、チームが一丸となって取り組んでいる姿勢が表れているかのかな。(野球部応援団)そこにいる皆さんのTシャッの背中に書かれている“俺たちはチャレンジャー”だという精神が皆さんにしっかり根付いているのだなと思いました」。今日の応援は「相手は守り中心の強いチームなので、両チームの力がぶつかりながらいい試合を見せて欲しいなと思っています。そして、山梨にできれば優勝旗を持って帰ってきて欲しいですね」。

❖山梨学院高相馬 弘副校長・ハイスポーツセンター長は「昨年の予選で負けた時からこの大会を目標にフィジカルのトレーニングを強化したり基本的な練習を重ねてきて、その成果として関東大会で強豪の東海大相模高を破ったことなどが評価を得られ、センバツに出場でき、ここにつながってきていると思います。地区大会以上に打撃が好調で残り2試合もいい方向に行くと期待しています」。

❖保護者会の田村裕之さんは「ここまで来られると思っていなかったので、皆頑張ってくれて、楽しませてくれた感じですね。二人の2年生ピッチャーが頑張ってくれていますが、打線もどこからでも打てて点を取れるところがいいところかなと思います」。対戦相手は「末吉選手も良い投手なのでそこを何とか全員で攻めて1点でも多く取って勝ちたい」。

❖保護者会大石佐知子さんはこれまでの試合を「あまりの強さに身内でもびっくりするぐらいで頂点目指せるかなと期待しています」。会長夫人として「こんなに強いチームに成長してくれて本当に感謝しかないです。やっていてよかったと思います」。今日の相手は手強いですが「今まで通り快進撃を続けてたくさん打って勝ってほしいです」。

❖保護者会宮川博三さんは4強について「今年のセンバツで悔しい思いをしているので甲子園の借りは甲子園で返すと頑張ってきたので、これまでの勢いで行けるところまで行ってもらいたいですね。この代はつながりを大事にしてきたので、メンバー、ベンチ、スタンド、応援のみんなが一体につながってすごくいい雰囲気でやっていますね。このままの状態でいけば良い結果につながると思います」。

❖保護者会足立一成さんは「もちろん勝ってほしいですけど悔いのないように楽しく最後までやって、ここまで来たら一気に頂点まで上り詰めてもらいたいですね」。

❖3年生レギュラーの同級生が多い佐久間小夏(3年)さんはみんなの活躍ぶりを「ベスト4までくると思っていなかったので、ここまで応援に来られてうれしいですし、その同級生の活躍を見ていると本当に頑張って欲しいという気持ちでいっぱいです。今は、勢いに乗っているのでそのまま頑張って優勝してほしい」とそれぞれが期待を込めた言葉を送った。

先制し、中盤まで山学高優位に試合を進める

試合は山学高の先攻で始まった。1回表、吹奏楽が早速“突撃のテーマ”で攻撃を盛り上げると1番鳴海柚莱(3年)が四球と相手捕手の捕逸で二塁進塁。一打得点の好機が訪れたが後続が倒れた二死後、4番横山 悠(3年)が大会タイとなる8安打連続安打で先制した。直後のその裏、先発の菰田陽生(2年)は一死後、安打と犠打で二死二塁、相手4番に144キロの直球を左前適時打され振り出しに戻された。菰田はこの回終了後、肘の違和感で降板。2回から檜垣瑠輝斗(2年)が急遽継投した。その後、県大会で三振の山を築いて安定した投球を見せる沖縄尚学高左腕エースとこれまでの3試合を制球力とテンポいい投球で菰田を継投してきた檜垣の投げ合いで4回まで拮抗状態が続いた。5回山学高の攻撃。一死後、1番鳴海、続く2番宮川真聖(3年)、3番梅村 団(3年)の3連打で無死満塁。ここで先制点を挙げている4番横山の強い三ゴロを相手が後逸。記録は失策となり大会新にはならずも、2点を追加。さらに6回には先頭打者菰田の二塁打と8番田村颯丈郎(3年)の投前犠打を三塁悪送球で1点を重ね4対1と優位に立った。

中盤、急遽の継投で力投を続けていた檜垣が沖縄尚学高の粘りに逆転される

しかしその裏、沖縄尚学高も反撃。力投を続ける檜垣から4番先頭打者が二塁打、続く5番が右前にポテン安打、次の6番は檜垣の初球を左中間を破る2点適時打で2点を入れ1点差に詰め寄った。続く打者の犠打を堅守を誇る内野の捕球ミスで二塁走者が一挙に本塁を突き1点を加え4対4の同点とされた。流れが沖縄尚学高に傾いた7回、檜垣は簡単に二死を取るが続く4番に左翼フェンス直撃の三塁打を打たれ、続く5番に右前適時打を打たれ1点を加え4対5と逆転された。山学高は6回途中から交代した沖縄尚学高2番手に9回表二死まで4三振を含む凡退を重ね攻めあぐねた。後がなくなった3番梅村は粘って遊ゴロ強襲安打、続く4番横山は初球を左前打し二死二塁一塁。一打同点の好機に、この試合当たりが出ていない5番平野天斗(3年)に期待を寄せるも、捕飛に打ち取られ試合終了。4対5の惜敗で山学高初の決勝進出はならなかった。これまでの畳みかける打線が影を潜め、この一戦ではあと一歩、打線のつながりが悪かったことも破れた要因となった。県勢の決勝進出挑戦も東海大甲府高の3回に続き、4回目となった山学高も4強の壁を越えられなかった。

試合記録

山梨学院高先発打順・守備位置

1.(右)鳴海柚莱③、2.(左)宮川真聖③、〇3.(三)梅村 団③、4,(捕)横山 悠③、5.(遊)平野天斗③、

6.(二)萬場翔太③、7.(投)菰田陽生②、8.(中)田村颯丈郎③、9.(一)岩城敦仁③ ※数字の前の〇は主将

[投手]菰田⇒檜垣②→[捕手]横山

 菰田=投球回1回 打者数5 投球数16 被安打2 奪三振0 与四球0 失点1

 檜垣=投球回7回 打者数31 投球数108 被安打8 奪三振5 与四球1 失点4

[打撃] 安打8《長打=ニ塁打:菰田》 四球2  三振9

[交代](投)菰田⇒(一)岩城⇒(投)檜垣 

試合終了後のインタビュー

❖ともに投手陣の一角として活躍したが、今回はアルプススタンドでチームメイトを鼓舞した野球部応援団長坂東慶寿投手(3年)は「まずはメンバーに準決勝まで連れて来てくれたことに感謝したいですし、自分たちはメンバーから外れてしまいましたが、これだけ長く甲子園で過ごせたということだけでもうれしいです」。

❖大友 陸投手は「最後、点は取れなかったですが梅村や横山が最後まできっちりした姿を見せてくれて3年間頑張ってきてよかった」と涙をこらえた。

❖五十嵐大夢(空手道部2年)さんは「逆転されてからも最後まで諦めない姿に感動しました。自分達の部活でも生かしていきたい」。

❖尾林歩夢(アート部2年)さんは2回目の応援。「3点差を逆転されてとても悔しいです。それでも挽回しようと戦う姿は恰好よかったです」。

❖保護者会菰田理恵さんは「3年生のためにと頑張ってきたのですが、最後に恩返しができなかったです。最後の最後に投手も降りてしまったし、本人は頑張ったと思いますが、3年生のためにとずっと言っていたので悔しい気持ちで終わってしまい可哀そうで残念です」と涙ながらに話した。「3年生に付いてここまで来たので感謝しかないです」。

❖チームのため1年間野球部保護者会を支えてきた大石光泰会長は「てっぺんを目指していましたけど、子どもたちの頑張りと試合を通して逆によくベスト4まで来たなと感謝の気持ちでいっぱいです」。代が変わりますが「(3年生は)結構まとまっていて指導者からもいい学年だと言われていたので2年生1年生はそれを見ているので、引き続き甲子園に戻ってきてさらに勝ち上がっていつかはてっぺんに立ってほしいです」と涙を滲ませた。

夏の甲子園での2勝の壁を軽々越え、山学高野球部の強さを見せつけた今大会は、残念ながら初優勝を逃したものの4強の実績を残し、春のセンバツ優勝に次いで山梨県民に勇気を与える感動を残してくれた。22日に選手たちは帰校し、23日より新チームがスタートする。

文(K.F) カメラ(平川大雪、今村佳正、小池裕太) 2025.8.21