2025年度東日本学生レスリングリーグ戦最終日
山学2年連続11度目の優勝、宿敵日体大を破る
優勝に2番手、3番手も貢献。順調に育つ選手

5月28日、大学対抗団体戦2025年度「東日本学生レスリングリーグ戦」1部リーグ順位決定戦及び1部リーグFinalステージ準決勝、決勝が東京・駒沢屋内球技場で行われ、山梨学院大が全勝優勝で2連覇を飾った。試合方式が変更になった今年度、各チームの勝負へのモチベーションと技術の向上と大学チーム全体の実力の底上げを目的により、試合の熾烈さを楽しめるように変更を実施した。山学大は予選リーグ26日1日目に神奈川大に7-0、専修大に6-1、国士館大に6-1の3戦全勝。27日2日目には育英大に6-1、中央大に6-1と5戦全てに勝利した。ここまでフルメンバーだけでなく、2番手、3番手も起用。選手層の充実により主力選手を温存。28日最終日に1部Finalステージ準決勝に進出し、前回大会3位の日大と対戦。対戦相手を重ねると実力者も多く、簡単な勝利はないが、準決勝86㎏級五十嵐文彌がテクニカルスペリオリティ(TS)で先陣を切ると、この大会も好調の61㎏級須田宝は苦しみながらも勝利。続く74㎏級の荻野大河、57㎏級勝目大翔も手堅く勝利して4勝0敗。この時点で決勝進出が決まった。65㎏級内田怜児、70㎏級冨山悠真も続き6-1で勝利。決勝はBグループを勝ち進んだ日体大と、4年連続の優勝決定戦となった。先陣の冨山は今大会4試合目、後半に地力を発揮しTSで勝利。しかし、65㎏級荻野海志は予定外の敗戦で1勝1敗。ここで冨山の勝利が生きた。ソヴィット、五十嵐、勝目、須田と計算できる選手が期待に応え、決勝は5-2で勝利。大会を通じて7勝0敗で全勝優勝。山学大時代の到来を思わせる2連覇となった。
山梨学院大は6連覇を達成した2018年を最後に、2019年は日体大、拓殖大、山学大の三つ巴の戦いに敗れて3位(日体大が優勝)、2020年、2021年のコロナ禍による中止を挟み、2022年、2023年を2年連続日体大に3-4の僅差で敗れ準優勝となり、5年間優勝から遠ざかった。そして迎えた2024年、3連覇30回目を狙う絶対王者日体大と優勝を懸けて激突した結果、長らく耐えてきた王座奪還へ6年ぶり10回目の優勝を達成した。2025年、山学大は大会の試合方式変更にも耐えうる万全の準備を携え大会に臨み、予選リーグを日体大とともに1位で通過。決勝でまたも日体大と雌雄を決することとなった。
選手層の厚いチーム同士の一騎打ち
山学大と日体大は、これまで両大学ともチームから大きな大学レスリング大会で優勝者を輩出するなど、ライバルとして競い合いを続け、この試合でも激しいぶつかり合いが期待された。試合は、抽選で配列された1番目の階級、74㎏級冨山悠真(4年)がチームの浮沈を懸けマットに上がった。冨山は立ち上がりから積極的に攻め、前半は2-0の僅差で折り返した。後半も徐々に得点を重ね、残り1分を切ったところで相手を担ぎ倒す大技でビッグポイントを叩き出し、11-0のテクニカルスペリオリティ(TS)勝利。しかし、2戦目の65㎏級荻野海志(4年)は、序盤からやや押され気味の展開で前半を0-3。後半に2得点を返すも、終盤に得点を失い3-5と敗れ、想定外の敗戦となった。1勝1敗と振り出しに戻ったが、先陣冨山の勝利の流れより3番手125㎏級ソビィット・アビレイ(4年)が昨年の同じ対戦相手に、落ち着いた戦いぶりで勝利を呼ぶ。続く86㎏級五十嵐文彌(4年)は前半、相手の動きを見取り、後半は相手に攻撃の隙さえ与えない攻勢を掛ける展開で10-0のTS勝利。ここまで4年生選手が4人並び、流れを引き寄せる活躍で3勝1敗と優位に進めた。続く57㎏級勝目大翔(3年)は後半途中まで劣勢で推移するも、ここからが勝目の真骨頂。早い身のこなしで相手をカウンターやテイクダウンで外へ出すなど逆転。7-4で勝利。この時点で山学大の優勝が決まった。続く61㎏級須田宝(3年)は、主導権を握って後半、中盤でタックルからバックを奪い、そのままフォールに持ち込んだ。最後、74㎏級荻野大志(2年)は敗れるも、山学大は5勝2敗で日体大を下し、2年連続11回目の優勝を飾った。
28日大会最終日 1部リーグFinalステージ決勝 試合結果
◆《山梨学院大VS日本体育大 5勝2敗で勝利》
フォール勝ち1、テクニカルスペリオリティ勝ち2、優勢勝ち2
テクニカルスペリオリティ負け1、優勢負け1
70㎏ | 65㎏ | 125kg | 86kg | 57kg | 61kg | 74kg | |
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山学大 | 冨山 | 荻野海 | ソヴィット | 五十嵐 | 勝目 | 須田 | 荻野大 |
〇 | ● | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ● |
最終順位
1位:山梨学院大、2位:日本体育大、3位:日大5、4位:中央大、5位:育英大、6位:早稲田大、7位:国士館大、8位:拓殖大、9位:専修大、10位:東洋大、11位:明治大、12位:神奈川大となった。
1部、2部入替戦は明治大、神奈川大が一部残留を決めた。
閉会式・表彰式 2連覇荻野主将が優勝旗を手にした
全試合終了後に閉会式が行われ、表彰式では山学大に優勝旗、表彰状、ブロンズ像が授与され、個人では荻野海志主将が最優秀選手賞、小幡邦彦監督が最優秀監督賞を獲得した。また、1部優勝校には、東京都知事杯の表彰状と優勝カップが贈られた。閉会式後には2階指定応援席で大声援を送り続けてきた部員もコートに降り、全員で記念写真に納まった。閉会後、小幡邦彦監督が選手たちの手で宙を舞った。

試合後インタビュー
小幡邦彦監督は「スコアは昨年と一緒の5勝2敗にはなりましたけど、1試合1試合は気の抜けない対決で、出た選手たちは強かったです」。勝因は「最初の冨山が決めてくれて、そこで流れがきたと思いましたが、4年生を中心によく頑張ってくれた」と選手を称えた。
1番手の冨山悠真選手(4年)は、大事な初戦勝利をチームにもたらした。「もともと自分は日体大戦に出られるような選手ではなかったのですが、高田先生、小幡監督、高橋コーチに丁寧に指導して頂いたおかげで少しずつ結果が出るようになって、今日の試合は結果で感謝を伝えようと思っていたので、勝つことができすごくうれしい」と感謝の言葉を口にした。2連覇については「先輩たちの思いも引き継ぐことができて、自分の夢でもあったので最高です」と爽やかな笑顔で話した。
荻野海志主将(4年)は、決勝では敗れてしまったが。「万全な準備はしてきたのですが、自分自身はあと1歩足りなかった」と悔しさを押し殺した。2連覇は「自分は負けてもどかしいですけど、みんなが勝ち取ってくれたのは僕の勝利ではないのでしょうか。確実に言えることは山梨学院大学の勝利です」と胸を張った。
留学生のソヴィット・アビレイ選手(4年)は優勝を「チームが強いからできました。気持ちいいです」。さらに今大会の自分自身について「いい大会でした。タックルも強く、身体も強い、ディフェンスも強かったけど少しきつかった」と最後に本音を口にした。
五十嵐文彌副主将(4年)は終始、落ち着いた取り口で勝利しチームの優勝に貢献した。2連覇に「素直にうれしいですし、チームみんなで勝ち取った勝利です。マットに上がった選手だけではなく、支えてくれたチームのみんなと保護者、指導者、関係者に感謝しています」。自身の戦いぶりは「階級下の選手ばかりだったので、いいところはあまりないかなと思うんですけどチームのおかげで勝てた」と淡々と話した。みんなを鼓舞したシーンに「団体戦になると気持ちも高ぶるので、ちょっと調子に乗ってしまった部分もあります。うれしくて」と最後は照れていた。
須田宝選手(3年)は「はじめは緊張しましたけど、自分の動きは最後までできてよかった」。準決勝の日大戦で苦戦したが「強くなっていくと研究されるので、相手もロースコアで戦ってくるとは分かっていました。落ち着いてやればいけるかなと思っていたので、反省点は残りましたが、勝ってよかった」と試合を最後まで諦めなかった。
勝目大翔選手(3年)は最軽量級で獅子奮迅の活躍をした。「自分は1年の時からレギュラーとして出ているので、勝たなきゃいけないという、自分へのプレッシャーはありました」と7試合中6試合を勝利した。予選リーグでは1回棄権したが。「57㎏級は自分一人なので温存という形の棄権で、怪我等ではないです」と体調は万全で、チームの優勝のために貢献した。
28日大会最終日 1部リーグFinalステージ準決勝 試合結果
◆《山梨学院大VS日本大学 6勝1敗で勝利》
テクニカルスペリオリティ勝ち3、優勢勝ち3
テクニカルスペリオリティ負け1
86kg | 61kg | 74kg | 57kg | 65㎏ | 70㎏ | 125kg | |
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山学大 | 五十嵐 | 須田 | 荻野大 | 勝目 | 内田 | 冨山 | 永山 |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ● |
27日大会2日目、予選リーグ4R 試合結果
◆《山梨学院大VS育英大 6勝1敗で勝利》
テクニカルスペリオリティ勝ち4、優勢勝ち2
テクニカルスペリオリティ負け1
86kg | 65㎏ | 70㎏ | 125kg | 61kg | 74kg | 57kg | |
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山学大 | 五十嵐 | 荻野海 | 冨山 | 中沢 | 高田 | 安藤 | 勝目 |
〇 | 〇 | 〇 | ● | 〇 | 〇 | 〇 |
27日大会2日目 予選リーグ5R 試合結果
◆《山梨学院大VS中央大 6勝1敗で勝利》
テクニカルスペリオリティ勝ち5、優勢勝ち1
優勢負け1
57kg | 61kg | 74kg | 70㎏ | 125kg | 65㎏ | 86kg | |
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山学大 | 勝目 | 須田 | 真田 | 荻野大 | ソヴィット | 内田 | 五十嵐 |
〇 | 〇 | ● | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
予選リーグを5戦全勝で乗り切った小幡邦彦監督は、「相手も決勝トーナメントに行っているのであまり1番手は出してこなくて、こちらもある程度温存して戦えました。これまで順調にきていますが、日大にしても日体大にしても弱くはないので、気を引き締めて2連覇できるように頑張りたい」と1部リーグFinalステージ準決勝、決勝への決意を語っていた。
文(K.F) 、カメラ(平川大雪) 2025.5.28