全日本学生柔道優勝大会 男子2日間の戦い
6年ぶりにベスト8(優秀校)に返り咲く
4年生は1回戦敗退の苦しい時期を乗り越え、涙

6月29日、2025年度「男子74回、女子34回全日本学生柔道優勝大会」2日目が東京・日本武道館で行われた。この日は男子の3回戦から決勝まで31試合の熱い戦いが繰り広げられた。山梨学院大学柔道部男子は、1日目の1回戦を大阪教育大に4勝0敗。2回戦、駒澤大に5勝0敗と無敗で快勝。2日目の3回戦、岡山商科大と対戦。ここでも失点なく6勝0敗で順調に勝ち上がった。4回戦に駒を進め、実力校ひしめく東京地区の伝統校早稲田大と対戦。先鋒の北原颯大が引き分けに終わり、次鋒の武田幹太に期待を寄せたが、相手も早稲田の実力者。残り30秒、技ありを奪われ先制された。続くルターも引き分け。中堅の坂口稜が指導2を受ける厳しい展開から、残り20秒で技ありを決め、同点に追いつく貴重なポイントとなった。続く三将、副将、大将と互いに激しい熱戦を繰り広げるが決め手なく、1勝1敗の同点。代表戦に持ち込まれた。代表のルターは優位に進め、一本勝ちで山学大に勝利をもたらし、準々決勝に進出。6年ぶりのベスト8が決定した。しかし、待ち受けるのは前回大会3回戦で敗れた明治大(東京)。先鋒、次鋒がともに一本負けを喫し形勢が悪くなるも、五将、中堅が引き分けで持ちこたえた。しかし、三将の山科啓容が一本負けで明治大の勝利が決まった。続くルターと武田が引き分け、0勝3敗となり目標としていたベスト4には届かなかった。
男子は全国9地区から計63校が選抜され、日本一を争う。配列は先鋒から大将まで7つの配列で、選手の選出は自由と決められている。山梨学院大学柔道部男子はこれまで最高3位を2回、優秀校(ベスト8)に7回選出されている。直近では2019年にベスト8に入賞して以来、2022年(現4年生が1年次)、2023年と1回戦敗退。2024年は3回戦で敗退している。そして迎えた2025年。6年ぶりのベスト8(優秀校)、さらに上のベスト4を目指し、決戦の舞台に上がった。
大会1日目、2戦を無敗で勝利
◆6/28大会1日目 男子1回戦 山梨学院大VS大阪教育大 4勝0敗3分
先鋒 | 次鋒 | 五将 | 中堅 | 三将 | 副将 | 大将 | |
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山学大 | 宮前陽夕向① | 田窪育明④ | 山科啓容② | 北原颯大④ | 坂口 稜③ | 名郷颯馬① | 武田幹太④ |
〇一本勝ち | 引き分け | 引き分け | 〇一本勝ち | 引き分け | 〇一本勝ち | 〇一本勝ち |
まずは大事な初戦。関西代表の大阪教育大と対戦。山学大の先鋒は1年生の宮前陽夕向。序盤に小外刈りで技ありを奪うと中盤、相手が仕掛けた技を返し、内股で一本勝ち。続く次鋒の田窪育明(4年)、五将の山科啓容(2年)は引き分け、中堅の北原颯大(4年)は中盤に寝技の上四方固で一本勝ちを収めた。三将の坂口稜(3年)が引き分けで続き、副将の名郷颯馬(1年)が小外掛けで一本勝ち、大将の武田幹太(4年)が相手の指導3による反則負けで一本勝ち。4勝0敗で初戦勝利した。
◆6/28 男子2回戦 山梨学院大VS駒澤大 5勝0敗2分
先鋒 | 次鋒 | 五将 | 中堅 | 三将 | 副将 | 大将 | |
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山学大 | 山科啓容② | 坂巻莞爾③ | 吉川巧真② | ルター④ | 佐々木翔光① | 武田幹太④ | 坂口 稜③ |
〇一本勝ち | 〇一本勝ち | 引き分け | 〇一本勝ち | 引き分け | 〇一本勝ち | 〇一本勝ち |
2回戦は強豪が揃う東京地区の駒澤大と対戦。先鋒の山科は、中盤に大外刈りで技ありを奪い優位に立つと、残り1分で内股が決まり1本勝ち。続く次鋒の坂巻莞爾(3年)も横四方固で一本勝ち。五将の吉川巧真(2年)は引き分け。中堅のルター・エンフボルド(4年)は相手の二回りも大きい身長200cm。互いに技を出すが相手も耐え、一進一退。中盤過ぎ、相手の疲れを見逃さず大外刈りで一本勝ち。三将の佐々木翔光(1年)が引き分け、ここで山学大の勝利。副将の武田は1回戦と同様に相手の反則により1本勝ち、大将の坂口が中盤に内股を見事に決め山学大が5勝0敗で勝利。1日目の2試合を無失点で勝ち上がり、2日目に進んだ。
1日目の試合終了後コメント
西田秦悟監督は選手を前に「1回戦、2回戦は取るところで取って、しっかり仕事を果たせるような試合展開ができ、すごく良かった。最後、(武田)幹太と(坂口)稜がいい形で締めくくってくれたから、明日に繋がると思う。明日勝つためにやってきたから、今日しっかり回復させて、明日はベスト4に行けるように一戦一戦全力で戦っていく」と力を込めた。
インタビューでは「次は早稲田大と勝負なので、このまま勢いを持ち込んで戦う」。5年ぶりのベスト8に向けては「今日の調子を見たら絶対に(ベスト8まで)行けると思うので、早稲田大に勝って、明治大に挑戦しようと思います。やり返します」とリベンジを誓った。
武田幹太主将は無敗での勝利を「全て明日勝つためにやってきたので、初日に失点するわけにはいかないという気持ちがみんなをつないで、自分の仕事を果たした結果が無失点だった」。「目標はベスト4へ進むことなので、ベスト8は通過点だという気持ちで、全員で明日も戦います」と普段、寡黙な主将は闘志を露わにした。
大会2日目 準々決勝で因縁の相手、明治大と対戦
◆6/29大会2日目 男子3回戦 山梨学院大VS岡山商科大 6勝0敗1分
先鋒 | 次鋒 | 五将 | 中堅 | 三将 | 副将 | 大将 | |
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山学大 | 田窪育明④ | 山科啓容② | 北原颯大④ | 武田幹太④ | ルター④ | 坂巻莞爾③ | 坂口 稜③ |
〇有効 | 〇有効 | 〇一本勝ち | 〇一本勝ち | 〇一本勝ち | 〇一本勝ち | 引き分け |
大会2日目1試合目。1日目を快調に勝ち上がった山学大は岡山商科大(中国四国)と対戦。先鋒の田窪は帯取返で有効勝ち。次鋒の山科も大内刈りの有効で幸先良い立ち上がり。続く五将の北原は反則負け一本、中堅の武田は小気味よい小外刈りで勝利。三将のルターが豪快な大外刈り、副将の坂巻は袖釣込腰と上四方固めの合わせ技一本と勝利が続き、最後の大将の坂口は引き分け、6勝0敗で勝利。ここでベスト16に入った。
◆6/29 男子4回戦 山梨学院大VS早稲田大 1勝1敗5分 代表戦=山学大勝利
先鋒 | 次鋒 | 五将 | 中堅 | 三将 | 副将 | 大将 | 代表戦 | |
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山学大 | 北原颯大④ | 武田幹太④ | ルター④ | 坂口 稜③ | 田窪育明④ | 山科啓容② | 坂巻莞爾③ | ルター④ |
引き分け | ●有効 | 引き分け | 〇技あり | 引き分け | 引き分け | 引き分け | 〇一本勝ち |
東京地区の伝統校早稲田大と対戦。先鋒の北原颯大が引き分け。次鋒の武田とルターで先行しプレスを掛けたいが、武田の相手も早稲田大のエース。残り30秒、前の展開で左ひじを気にしていた武田の袖を取った袖釣込腰の技ありを取られ先制された。続くレターも逃げ腰の相手を攻めきれずに引き分け。しかし、中堅の坂口が指導2を受ける厳しい展開から、残り20秒で技あり(払巻込み)を決め、同点に追いつく貴重なポイントとなった。ここから続く三将、副将、大将と熱い攻防を繰り広げる展開となったが、決め手がなく1勝1敗の同点で代表戦に持ち込まれた。代表のルターは武田を破った早稲田大代表と対峙。有効、技ありと終始主導権を握り、残り1分、大外返しの大技で一本勝ち。山学大に勝利をもたらし、準々決勝に進出。6年ぶりのベスト8が確定した。
試合後、代表戦に勝利したモンゴル出身のルター・エンフボルド(4年)は「やりました。チームの思いを背負って負けるわけにはいかなかった」。決めた時の気持ちは「その前に有効と技ありを取って、気持ちに余裕はありましたが、相手が入ってきて自分の身長も体重も上だったからそれを返し一本を取れてよかった。そのまま負けていたら悲しいし、それは俺だけの負けではなくチームの負けだから、それは出来るだけ避けたいと思った」と流暢な日本語で話した。次の明治大との対戦について「2年連続で負けていて、明治大に勝つための練習をしてきたので、今回は何とかできる」と意欲を示した。
◆6/29 男子準々決勝 山梨学院大VS明治大 0勝3敗4分け
先鋒 | 次鋒 | 五将 | 中堅 | 三将 | 副将 | 大将 | |
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山学大 | 田窪育明④ | 北原颯大④ | 名郷颯馬① | 坂巻莞爾③ | 山科啓容② | ルター④ | 武田幹太④ |
●一本負け | ●一本負け | 引き分け | 引き分け | ●一本負け | 引き分け | 引き分け |
準々決勝の対戦相手明治大は、この大会の創設時から3連続優勝を初め、東海大に次ぐ歴代2位の16回の優勝を誇り、現在も東京地区の激戦区で常に上位に君臨する伝統校。山学大は一昨年1回戦敗退を喫し、昨年は3回戦で敗れてから“打倒明治”を掲げ、目標とする因縁の相手。
山学大は前半失点を抑えて後半、ルター、武田で勝負との思惑で試合に臨んだ。しかし、先鋒の田窪、次鋒の北原想大(2年)が一本負けで劣勢に立たされた。続く五将の名郷、中堅の坂巻が引き分けに持ち込み後続に託すも、三将の山科が一本負けを喫し、ここで勝負は決まった。続くルター、大将の武田は最後まで勝負を諦めずに奮闘するも引き分け、0勝3敗。今大会も明治大の厚い壁に阻まれ跳ね返された。
明治大との戦いを終えて
西田秦悟監督は会場の外に選手を集めて、「出し切れたので、4年生はありがとう。3年前に負けてからずっと苦しかったけど、その時の1年生たちが4年生になってやり返してくれたので、本当にうれしかった。ありがとう4年生。苦しかった3年前、忘れられないよ。本当にここから抜け出せるのかなと、本当に苦しかったけど、よく頑張った。4年生がよくやってくれたから今後つながるぞ。出し切ってくれた。よく頑張った。ありがとう」と留めなく流れる涙とともに、4年生選手を労い感謝を言葉にした。
井上潤哉コーチは「今持っている力は出せたと思っている。やはり3年前にシード校を外れて、初戦敗退した苦しみからなかなか組み合わせから恵まれず、やってもやっても勝てなかった日々が苦しかったし、ただチームの戦力が戻ってきた中で、何とかシード校に戻ることができたし、来年、再来年に勝負できる土台が出来てきたと思う」とこの後の飛躍を導く。
武田幹太主将は「俺が1年生の時、1回戦で(チームが)負けて団体戦には毎年出たけど、苦しくてもう勝てないのかなと思った時期もあり、今年は絶対ベスト4へ行こうと思って、キャプテンを引き受けたけどみんなに助けられてばっかりだった。山梨学院に入って柔道をやってきて本当によかったと思って、後は同じ舞台で後輩が活躍してくれることを期待しているし、本当にこのチームでやれてよかった。ありがとう」と涙ながらに語った。続いて4年生のルター・エンフボルド、田窪育明、北原颯大、主務の三木歩夢が4年間の思いと後輩に託す言葉を語った。
最後に西田孝宏総監督は「4年生はよくベスト8まで戻してくれた。今の1年、2年、3年の選手がいいので来年以降につながるものだと思っている。ご苦労さん」と選手たちを労った。
男子の入賞大学
優勝は日大、準優勝に天理大(関西)、3位が桐蔭横浜大(関東)、明治大(東京)、ベスト8の優秀校は東海大(東京)、中央大(東京)、東洋大(東京)、山梨学院大(関東)が入賞した。
この8チームが次回大会のシード校となる。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2025.6.29