2025年度全日本学生レスリング選手権最終日
男子86㎏級五十嵐2連覇。92㎏級増田が初優勝
4日間の結果は優勝2人,準優勝5人(グレコ・フリー)

明日のレスリング界を背負う若い力が全国から結集、各階級の頂点を目指す「文部科学大臣杯2025年度全日本学生レスリング選手権大会」(インカレ)が8月21日、駒沢体育館で開幕。24日まで4日間にわたる熱戦が繰り広げられた。男子は前半の2日間はグレコローマンスタイルと後半2日間はフリースタイル、22日は女子フリースタイルという日程で行われ、山梨学院からは、フリースタイルに20人、グレコローマンスタイルに4人、女子フリースタイルに3人がエントリーした。その内、前半の男子グレコローマンスタイルは、67㎏級で荻野海志が準優勝、同級平井友真が5位(8強)。82㎏級では谷崎工之介、130㎏級のソヴィット・アビレイが準優勝。女子フリースタイルでは53kg級で澤田美侑が3位に入賞した。取材した24日大会最終日は、11人が8強に男子86㎏級の五十嵐文彌が2連覇。男子92㎏級増田大将が初優勝を飾った。2連覇が期待された57kg級勝目大翔は準優勝。男子65kg級荻野海志は昨年敗れた選手に屈し準優勝となった。125㎏級のアビレイも準優勝。他に74㎏級真田颯大が3位。70kg級平井友真が5位(8強)。86㎏級中村駿文も5位に入った。
全日本学生レスリング選手権(インカレ)。明日のレスリング界を担う国内学生レスリング最高峰の大会。ここでの活躍を機に、数多くの選手が世界選手権、オリンピックと世界に羽ばたいていく。今年も全国から多くの若い力が結集。新しい選手の躍動が見られるか。
男子フリースタイルに8強に11人、うち5人が決勝進出
8月24日、大会最終日。男子フリースタイル2日目を取材した。山梨学院大レスリング部はフリースタイルの選手層が厚く数多くの名選手を輩出してきた。今回、10階級で争われるフリースタイルにエントリーした選手は20人。その内、1日目の1回戦から準々決勝までに残ったものは8人。2日目の決勝進出選手が5人と山梨学院勢が多くを占めた。
◆まず最初に王者に輝いたのは86㎏級五十嵐文彌(4年)。2023年U20世界選手権で銀メダルを取ると、2024年には全日本学生選手権(インカレ)、全日本大学選手権と学生二冠を達成するなど躍進。今大会でも準決勝でフォール勝ち、決勝でも10-0VSU(テクニカルスペリオリティ)で圧勝。2連覇を飾った。五十嵐文彌選手は「学生の大会に優勝できて素直にうれしいです」。試合内容は「何度も足を触れたりポイントも取られたのであまりいい動きではなかったですが、試合の持って行き方、気持ちの持って行き方は良かった」。今後は「目の前の大会に集中して、U23(世界選手権)もまたあるので一つひとつの大会に全力を尽くせるように怪我無くやっていきたい」と抱負を語った。
◆次に92kg増田大将(3年)が続いた。増田は昨年暮れの天皇杯全日本選手権86㎏級で優勝した五十嵐に次いで準優勝。頭角を現し今大会では2戦目にポイントを許したが決勝では試合開始早々からポイントを挙げ1分で相手を退け、うれしい初優勝となった。増田大将選手は「全国大会は初めてなのでうれしいです」。今大会を振り返って「動きも良くて、5試合中4試合をテクニカルで勝ったのは良かったのですが、点を取られたところは反省です。強くなっている実感は「自分は結構、メンタル的に弱い部分もあるので負けてもいいから自分が練習した技を出すように意識しています」と平常心を心掛ける。
準優勝に泣いた3選手。因縁のライバル対決
◆125㎏級ソヴィット・アビレイ(4年)。圧倒的強さで勝ち上がった決勝戦。相手はモンゴルからの留学生でこれまでアビレイの部が悪い。2日目の130㎏級グレコローマンスタイルでは僅差の準優勝になっている。決勝は序盤アビレイが積極的な攻撃で4対0とリード。後半、残り1分あたりからアビレイに疲れが見え始めたところを攻め込まれ4対6と逆転。アビレイの必死な攻撃もあと一歩及ばず。アビレイは天を仰いで悔しがった。
◆65㎏級荻野海志(4年)には苦い思いがある。決勝戦の相手は前回と同じ。終盤、逆転され時間がない状況で起死回生の同点技を繰り出した。ここで相手のチャレンジ申告で成功とされ1点減点で敗退した。相手を知り尽くした同士の戦いに決め手がないまま時間が刻々と過ぎていく。残り30秒激しい攻防で相手に得点が入り敗退。リベンジならず悔しい敗退となり準優勝に甘んじた。
荻野海志選手は「とても悔しいです」。「この大会だけではないのですが、自分が強くなるためにたくさん準備してきてやれることをしてきました。いつも負けている相手にまた負けてしまって、自分自身情けないというか。いつも勝つと言って負けてしまっているので次は必ず勝ちます」と自身を振るい立たせた。
◆57㎏級の勝目大翔(3年)は前回大会初優勝を飾り、今回もこの階級の優勝候補。準決勝までの3試合は、最軽量階級の試合らしくスピーディな展開。危なげなく決勝に進出した。対戦相手は、前回は勝目が前後半、主導権を握りVSUで勝利した常にライバル関係にある日体大の選手。前半、相手は勝目の動きを研究し、攻撃のカウンター狙いから返し技で0対2でリードした。後半、勝目は追いつくも、再び返しで3対5.時間が無くなった最後のプレーで勝目は勝負に出て大技逆転かと思われたが、時間外となり敗れ2連覇はならなかった。
◆その他、74㎏級真田颯大(3年)は準決勝で準優勝選手に敗れ3位となった。また、70㎏級平井友真(3年)は67㎏級グレコローマンスタイルでも5位(8強)と入賞を果たした。さらに、86㎏級フリースタイルの中村駿文(2年)も5位入賞した。
山学大は前回大会から優勝を4から2へ。準優勝者は2から3とし、世界選手権出場者、負傷者を含めれば想定内の結果となった。
大会終了後、閉会式が行われ各階級の3位までの選手が表彰された。男子86㎏級で優勝
した五十嵐文彌選手は敢闘賞に輝いた。
大会後の小幡邦彦監督
「勝負所はあったのですけど、接戦で勝負は付くと試合前から予想はしていました。負けた試合は全部先に点を取られ、後追いになっていたのでその分、プレッシャーは掛かっていたと思いますし、決勝に来る選手は簡単には勝たしてくれませんし、そういう(先手)展開にさせてもらえなかった。正直、行けたかなというのはあるのですが、その辺は今後、大学選手権(内閣大臣)に向けて修正していきたい」と話した。
山学大に異色の選手現れる!
山学大レスリング部に異色の経歴を持つ選手が全日本選手権インカレに初出場ベスト8の成績を残した。その選手とは石川県出身の中村駿文(2年)さん。2年前、一般入試で山梨学院大に入学、レスリング部の門を叩いた。理由を中村さんは「(現在)プロレスラーで活躍するボルチン・オレッグさんに憧れ、プロレスラーを目指すためボルチンさんの出身が山梨学院だったのでそこで基礎体力を身に着けたかった」と明快に話した。小幡邦彦監督は「はじめは断ったが、熱心さに負け、1ヶ月間限定のお試し期間で許可して様子を見た」という。中村さんは小学1年から高校3年まで日本武道のひとつ“なぎなた”競技に打ち込んだ。
小幡監督は「礼儀作法は身についているし、真面目、練習熱心で他の選手の手本にもなる」と1か月後に部員に認めた。その後は、めきめきと実力を付け、今回男子86㎏級に抜擢、2戦を勝ち抜きベスト8に。準決勝戦相手は五十嵐文彌選手に敗れた準優勝選手。「全く何をやっていいか分からなかった」と笑った。小幡監督は「あと2年、ベスト4に入るぐらいの選手に育てたい」と期待を懸けたが、本人は「2年後はプロレスラー」とあくまで夢を追いかける。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2025.8.24