第60回全日本大学女子ソフトボール選手権準々決勝
山学大、タイブレイク1点差惜敗。8強に留まる
怪我から復帰した手塚。3連投で大きな存在感

愛知県安城市を舞台に8月29日に開幕した大学ソフトボール日本一を懸けて争われる「第60回全日本大学女子ソフトボール選手権」(インカレ)が8月30日2日目が行われた。 1日目に全国7地区32校が16強までに絞られ、この日は2回戦、準々決勝までが行われた。山梨学院大は、前日の1回戦に同志社と対戦、5対0で勝利し2連覇に向けて好発進した。2日目2戦目は地元愛知の日本福祉大との対戦。先攻は山学大。3回表、四球と1番須藤里咲の絶妙なセーフティバンド、2番山下実莉の内野安打で走者を埋めると、3番大坪穂乃花が左越え二塁打で2点を先制。さらに5回にも1番須藤の三塁打、2番山下の適時打で1点を加え3対0。投げては先発の手塚心彩がこの日も快投。7回を2安打完封で相手打線を抑えた。準々決勝は日本文理大(大分)と対戦。試合は3連投の山学大手塚の投球術と文理大投手の重くキレのある直球の投手戦となった。山学大にピンチが訪れたのは7回裏、先頭打者に二塁打を打たれ次打者が手堅く犠打で走者3塁。一打サヨナラの場面。山学大は四球と申告敬遠で満塁策を取り、その結果は二ゴロ本塁フォースアウトで切り抜けタイブレイクとなった。8回、山学大は1点を先取したがその裏、文理大が追いついた。9回表、山学大は得点できず、手塚は二死三塁と抑えるが最後に決め球のドロップが落ちずにボールは左前打。ここで文理大がサヨナラで勝利。1対2と山学大が目指した2連覇は阻まれ8強に留まった。
2日目2回戦、地元日本福祉大に手塚の右腕が立ち塞がる
2回戦は日本福祉大と対戦した。試合は後攻の山学大の守備が光った。先発の手塚心彩(4年)が1回戦に続きマウンドに上がった。手塚は立ち上がり100台前半の直球で攻めた。2番打者に追い込んでからの死球を与え、嫌な状況で3番打者に立ち向かうが2球目の速球を中前に抜けるゴロを二塁手岩本唯花(2年)が追いつき、遊撃手の中込楓(4年)のカバーにより二塁フォースアウト。手塚は後続を空振り三振に仕留め、流れを相手に渡さないプレーだった。攻撃は3回表一死後、9番本田紗彩(2年)の四球を1番須藤里咲(2年)の技ありセーフティバント、2番山下実莉(4年)の内野安打で満塁とし、続く3番大坪穂乃花(3年)の左越え適時二塁打で2点を奪い先制したが、ビッグイニングになる可能性があった展開に後が続かなかった。5回には、1番先頭打者須藤が左翼線に三塁打を放ち、続く2番山下が中前適時打で1点を追加するも、後続が得点機を作れずに1点止まりだった。先発の手塚は緩急をつけた速球とドロップなどの持ち球で相手打線を翻弄。2安打完封勝利で2試合無失点の好投で勝利に貢献した。
試合経過

山梨学院大先発出場メンバー
1,須藤里咲(中・2年)、2, 〇山下実莉(DP・4年)、3.大坪穂乃花(捕・3年)、4.中込楓(一・4年)、5.岩本唯花(二・2年)、6.田中愛花(一・4年)、7.周藤南美(左・4年)、8.土谷流華(右・4年)、9.本田紗彩(三・2年)、
FP手塚心彩(投・4年)
※DP(打撃専門選手)、FP(守備専門選手)、選手名の〇印主将
[バッテリー] 手塚→[捕手]大坪
手塚=投球回7 打者数25 投球数75 被安打2 奪三振6 与死球1 失点0
[打撃] 安打8《長打=三塁打:須藤、二塁打:大坪》 四球2 三振8
[交代] 田中⇒(代走)小宮祐希(3年)⇒(再出場)田中、
大坪⇒(代打)神崎菜々子(1年)⇒(代走)田中優花(1年)⇒(再出場)大坪
勝利を収めたにも指揮官は攻撃のまずさに不満
清水 正監督は厳しい顔で「勝っているけれども、攻撃につながらない。送れないし、ランナーを返せないし、もっと何点も取れていますね。これでは次はやられてしまいます」と不満をもらした。
2日目2試合目準々決勝戦。最後まで緊張感ある戦いに涙の終止符
準々決勝は日本文理大(大分)と対戦。試合は3連投の山学大手塚の最速107キロの速球、変化球のコンビネーションによる投球術と文理大投手の重くキレのある直球との投手戦となった。先攻の山学大は1回、2回に安打で出塁するも、3回以降7回まで10個の三振を奪われ完全に成す術もない状態で推移した。それに対して手塚も走者は出したものの、守備にも助けられ6回まで無失点に抑えてきた。しかし、7回裏最大のピンチを迎えた。先頭打者3番に左越え二塁打を浴びると次打者が堅実な犠打で走者を三塁に進めた。一打サヨナラの場面。ここで山学大は監督と選手全員がマウンドに集まり協議した結果、満塁策で内野ゴロを打たせることに集中した。その結果、手塚は気迫の投球で二ゴロを本塁フォースアウト、次打者を二ゴロで打ち取り、最大の難局を乗り越え延長タイブレイクに入った。
延長タイブレイク
延長タイブレイクは無死二塁から攻撃が始まるルール。8回、山学大は7番周藤南美(4年)がきっちり犠打で走者を三塁に送り、8番土谷流華(4年)が中前打で点を先行。その裏、文理大も1点を入れ振り出しに。9回、山下が走者を三塁に進めたが、後続に1本が出ず無得点に終わった。9回裏、文理大も三塁に進めたが、手塚は次打者を落ち着いて二飛に抑えるも、次打者に前進守備の三遊間を抜かれ1点を奪われた。ここでサヨナラ負けを喫し、1-2で惜敗した。打たれた瞬間、手塚はがっくり肩を落としたが笑顔で整列。気丈にふるまっていた。 山学大はリーグ戦の不調などからインカレ出場を危ぶまれたが、17回連続出場の更新と2連覇を目標に今大会を駆け抜けベスト8という勲章を手にした。
試合経過

山梨学院大先発出場メンバー
メンバーは1回戦、2回戦と変更なし
[バッテリー]手塚→[捕手]大坪
手塚=投球回9 打者数33 投球数117 被安打6 奪三振6 与四球1 失点2
[打撃] 安打4 四球2 三振8
[交代]田中⇒(代走)小宮祐希(3年)⇒(再出場)田中、
大坪⇒(代打)神崎菜々子(1年)⇒(代走)田中優花(1年)⇒(再出場)大坪
準々決勝で終えたインカレ最後の4年生選手たち
清水 正監督は「よく粘りましたが、最後は力尽きたかな。最後も決め球のドロップが落ちなくて打たれました。本当によく投げました。褒めてやりたいです」と3連投の手塚に感謝した。「今年は去年と違って、打撃の力がない分、どうしても点が取れなく苦しい展開になりました」。それでもベスト8。「まあ、良しとしましょう。よくここまで仕上がったと思う。手塚の怪我やいろんなことがありながら、最後まで大差で負けたわけでもなく選手はよくやったと思います」と労った。
山下愛莉主将は「手塚が頑張って投げてくれたのですが、それに対して打線が1点も取れなく、やるべきことができずに負けにつながった。手塚には申し訳ないですが、野手陣の攻撃が相手の投手を攻略できなかった。悔しいです」。キャプテンのインカレは最後ですが「去年1位だったので自分たちにしかできない2連覇を絶対に成し遂げる思いで1年間やってきたのでベスト8でメダルも取れずに終わってしまったことは、応援してくれた皆さんに恩返しができなかったことが悔しい」と肩を落とした。
中込 楓選手は「チームでずっと2連覇を掲げてきて、最後のチャンスのところで1本打つことができなかったことが自分の弱さです。チームとしてベスト8まで来れた中で、チームのみんなに感謝したいなと思います」。最後のインカレは「正直悔しい結果で終わってしまいました」。卒業後は「山梨のクラブチームでソフトボールを続けます」と話した。
手塚心彩投手はソフトボールの厳しい日程の中で、3日間4試合連投を続けた。「自分が出られる最後のインカレなのでもうやるしかないと思っていた。ただ全力を出すことだけを考えて投げていました」。7回裏、二死満塁。次打者にスリーツーとあとがない状況下で何を考えていたか。「打たせる。もう野手に任せる感じで、面白くない四球や死球はなしで攻め続けた結果で野手に任せようと思っていました」と最後は二ゴロに仕留め。タイブレイクに入った。大会を通じての振り返りは「正直全力を出しきったので悔いはないと言いたいですが、投手戦だったので最後の最後に負けたのは悔しい。粘れるところで粘れることは出来たと思う。最後の一球も忘れない一球になったので、これからも繋げていきたい。最後の一球を忘れずに続けていきたい」と心の強さが感じられた。
文(K.F) カメラ(平川大雪) 2025.8.30